

腟は本来、自浄作用によって自身を清潔に保てる粘膜です。
少しの刺激ですぐ傷ついてしまう繊細な部位というわけではなく、毎日念入りにケアを行わなければならない部位でもありません。
ところが近年は、デリケートゾーン専用の洗浄剤やケア用品が広く知られるようになり、「良かれと思ってケアを続けていたら、かえって腟のトラブルや炎症を繰り返すようになってしまった」という方や、「色々と試した結果、自分にとって何が正しいケアなのかわからなくなってしまった」という方もいるのではないでしょうか。
本来腟は、過不足のないケアで十分に健やかな状態を保てます。
逆にいえば、すでに違和感や乾燥感がある方は、ケアの量や方法が自分の体には負担になっている可能性があります。
今回は、腟の乾燥について、考えられる原因や放置するリスク、対策方法や受診の目安に加えて、「ケアし過ぎて崩れてしまった状態をどう立て直すか」という観点でも解説します。
気になる症状がある方は、ぜひ参考にしてください。
腟が乾燥する原因
加齢や生活習慣、誤ったケアなど、腟にうるおいが不足する背景には、様々な原因が考えられます。
まずは、腟が乾燥していると感じる原因をいくつかご紹介します。
①加齢による女性ホルモンの減少
40代以降の女性の場合、腟の乾燥の原因として考えられるのが「加齢による女性ホルモンの減少」です。
20~30代でピークを迎えた女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量は、40代に入ると徐々に低下し始めます。
女性ホルモンには腟のうるおいを保つ働きがあるため、分泌量が減少すると、皮膚の水分保持機能が低下して乾燥が進んでしまうのです。
年齢を重ねると肌が乾燥したり、髪がパサついたりするのと同様に、デリケートゾーンもうるおいが不足します。
特に更年期(45~55歳頃)に入ると、デリケートゾーンの変化に気付くことが多いでしょう。
②生活習慣によるホルモンの乱れ
20~30代の若い方であっても、生活習慣が乱れていると腟が乾燥することがあります。
栄養バランスの偏った食事や慢性的な睡眠不足など、不規則な生活が続くと、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少してしまいます。
腟の乾燥が進むだけでなく、生理不順や肌荒れ、不妊にもつながるので、規則正しい生活を心がけましょう。
③デリケートゾーンの過度な洗浄
デリケートゾーンにダメージを与えると、腟の乾燥につながります。
入浴の際に以下のような方法で洗浄しているという方は、特に注意が必要です。
- 熱いお湯で洗い流す
- 洗浄力の高いボディーソープを使用する
- ゴシゴシと皮膚を擦る
強い刺激を与えると、皮膚表面の皮脂膜が剥がれて乾燥しやすくなります。
また、腟の健康維持に必要な「ラクトバチルス(デーデルライン桿菌)」を洗い流してしまうので、過度な洗浄は避けましょう。
④脱毛や下着などの外的要因
脱毛や通気性の悪い下着、生理用ナプキンが原因で、腟が乾燥することもあります。
脱毛によってデリケートゾーンがダメージを受けたり、毛を失ったりすると、肌表面の水分が蒸発しやすくなり、乾燥が進みます。
特に施術直後は肌が乾燥しやすいので、VIO脱毛を受けた後は保湿を行いましょう。
通気性の悪い下着や生理用ナプキンを長時間装着していると、デリケートゾーンが蒸れて皮膚がふやけてしまいます。
ふやけた皮膚は摩擦刺激に弱いため、下着やナプキンが擦れてダメージを受け、腟の乾燥が進むというケースもあります。
通気性の良い下着を選んだり、ナプキンはこまめに交換したりして、清潔な状態を維持することが大切です。
⑤ストレスや不安などの心理的要因
デリケートゾーンへの直接的なダメージだけでなく、ストレスや不安などの心理的要因もまた、腟の乾燥につながります。
ストレスや不安を感じると交感神経が優位になり、血管が収縮して血流が低下します。
デリケートゾーンの血流が低下すると、子宮や腟から分泌される「腟分泌液(おりもの)」が減少するため、乾燥しやすくなるのです。
心理的な負担は、ホルモンバランスの乱れや生理不順、PMS・更年期症状の悪化にもつながります。
ストレスや不安を感じているという方は、メンタルケアを心がけましょう。
⑥骨盤底筋の過収縮(MPPS)による異常知覚としての「乾燥感」
「乾燥感」は、実際に乾燥していなくても感じることがあります。
原因の一つに、骨盤底筋の過収縮状態(MPPS)が挙げられます。
骨盤底筋が過剰に収縮すると、末梢組織への血流や神経が圧迫され、その結果として「乾燥感」「ひりつき」などの異常知覚を感じることがあるのです。
このタイプの「乾燥感」は、保湿剤やホルモン補充だけでは改善が見られないことが多く、骨盤底筋の弛緩を促すアプローチが必要になります。
一般的な乾燥対策で改善しない場合、専門的に診断できる医師にご相談ください。
⑦長期間の低用量ピル服用による影響
避妊や月経困難症の治療として、低用量ピル(OC/LEP)を長期間服用している方は、ホルモンバランスの変化により陰部の乾燥感・性交痛・性欲の低下を感じることがあります。
加齢ではなく服薬による影響の可能性があるため、ピルを服用中で乾燥が気になる方は、担当医にご相談ください。
種類の変更や服薬の見直しによって、症状が改善するケースもあります。
腟の乾燥が引き起こすトラブル

腟の乾燥を放置していると、かゆみや痛みなどの症状が現れやすくなります。
デリケートゾーンが気になって指で触ったり、掻きむしったりして、出血が起こることもあるでしょう。
また、掻きむしった傷口から、感染症にかかる可能性があるという点にも注意が必要です。
腟内で繁殖した雑菌が尿道や膀胱へ侵入すると、「膀胱炎」を引き起こします。
雑菌の侵入は特に性交後に起こりやすく、膀胱炎を繰り返す方も少なくありません(性交後膀胱炎)。
発症すると、排尿痛や残尿感、頻尿や血尿などの症状が現れるので、腟の乾燥を自覚したら婦人科を受診して適切な治療を受けましょう。
腟の乾燥への対策方法

腟のうるおい不足が気になる、慢性的に乾燥しているという場合は、どのような方法で対策すれば良いのでしょうか。
自宅で試せる対策方法をいくつかご紹介します。
保湿アイテムを使用する
デリケートゾーンの乾燥が気になる方は、保湿を心がけましょう。
顔と同様に、デリケートゾーンも洗顔後や入浴後には乾燥しやすいという特徴があります。
清潔な状態に整えたら、ワセリンやクリーム、オイルなどのアイテムを使用して保湿しましょう。
乾燥が気になる場合は、以下の成分が含まれるアイテムがおすすめです。
- ヒアルロン酸
- コラーゲン
- セラミド
デリケートゾーンの皮膚は薄いため、腕や足に塗布しても問題がないアイテムであっても、肌荒れが起こる可能性があります。
保湿アイテムを選ぶ際には、デリケートゾーンに使用しても問題がないか、よく確認しておくことが大切です。
生活習慣を見直す
偏った食生活や睡眠不足が続いているという方は、生活習慣を見直しましょう。
女性ホルモンのバランスを整え、サポートするような栄養を積極的に摂取することが大切です。
生活習慣の乱れが気になるという方は、以下の食品を摂取してください。
- 大豆製品(納豆、豆腐、豆乳など)
- ナッツ類(アーモンド、くるみ、カシューナッツなど)
- アボカド
- 青魚(イワシ、サバなど)
不規則な生活習慣は、ストレスやイライラを引き起こす原因にもなります。
メンタルケアのためにも、栄養バランスの整った食事や質の良い睡眠、適度な運動を心がけましょう。
デリケートゾーンは正しい方法で洗浄する

誤った方法でデリケートゾーンのケアを行うと乾燥が進むので、正しいケア方法を把握しておきましょう。
デリケートゾーンを洗浄する際には、ぬるま湯(30〜40℃程度)を使用します。
近年はデリケートゾーン専用の洗浄剤も販売されていますが、基本的に腟は、お湯だけでも清潔に保つことができます。
腟の中までは洗わず、ヒダの間の汚れを指でそっとぬぐい、ぬるま湯で洗い流しましょう。
入浴後に体を拭く際にも、ゴシゴシと擦らずに、タオルを押し当てるようにして水分を吸い取ってください。
デリケートゾーンへの刺激を減らす
デリケートゾーンの蒸れが気になるという方は、下着の選び方に注意が必要です。
腟の乾燥が気になる場合は保湿が有効ですが、蒸れると皮膚がふやけてダメージを受けやすくなります。
下着は通気性の良いコットン素材や、締めつけの少ないものを選んで、蒸れを防ぎましょう。
ナプキンやパンティライナー(おりものシート)を使用する場合は、こまめに交換することが大切です。
汚れたものを長時間使用していると蒸れの原因になるので、定期的に交換しましょう。
蒸れがひどいときには、パンティライナーは使用しないという選択も大切です。
腟の乾燥で医療機関を受診する目安
セルフケアを行っても効果が感じられないという方や、以下の症状が現れている方は、婦人科を受診しましょう。
- 外陰部に強いかゆみや痛みがある
- 出血が起こっている
- おりものに悪臭がある
- 性交時に痛みを感じる
腟の乾燥の背景には、女性ホルモンの影響や生活習慣など、様々な原因が考えられます。
自力では原因の特定や改善が難しいので、乾燥が気になるという方は、トラブルを未然に防ぐためにも医療機関の受診を検討しましょう。
腟の乾燥の主な治療方法

正しい方法でケアを行う、生活習慣を見直すといった対策を行っても、腟の乾燥を改善できないという方もいます。
特に女性ホルモンの影響でうるおいが不足している場合は、自力での改善は難しいといえるでしょう。
最後に、医療機関で受けられる代表的な治療方法をご紹介します。
潤滑剤・保湿剤・軟膏
乾燥によって性交痛がある場合は、潤滑剤や保湿剤などを使用します。
腟への摩擦を減らせるので、性交痛の緩和につながるでしょう。
外陰部のかゆみが強い場合は、抗炎症作用がある「ステロイド」入りの軟膏で症状の改善を目指します。
これらの対症療法は、一時的な症状の緩和には有効ですが、問題の根本的な解決にはなりません。
腟の乾燥の原因によっては、他の方法と併せて治療が行われるケースもあります。
女性ホルモン(エストロゲン)補充療法
加齢による女性ホルモン(エストロゲン)の減少が原因で腟が乾燥している場合は、「女性ホルモン補充療法」が有効です。
内服薬や腟錠でエストロゲンを補充するという方法で、腟が乾燥している場合は局所投与が行われますが、全身投与を行えば、ほてりや発汗、不眠や疲労感など、更年期症状の緩和を目指せます。
患者様によって適した投与方法は異なるので、医師とよく相談した上で、最適な治療方法を選択しましょう。
レーザー・高周波治療
女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって腟に乾燥や萎縮が起こっている場合は、「インティマレーザー(エルビウムYAGレーザー)」、「モナリザタッチ(CO2フラクショナルレーザー)」、「ウルトラフェミー360(高周波)」の3つのモダリティを症状に応じて使い分けます(いずれも自費診療)。
これら3つの機種はそれぞれ波長や作用機序が異なり、適応・施術回数・麻酔の要否・ダウンタイムも異なります。
代表例としてインティマレーザーは、腟・尿道粘膜の萎縮や少量の尿漏れ・じわじわ漏れ、性交痛や繰り返す膀胱炎などに有効で、1ヶ月ごとに合計3回の施術が標準です(軽症の方は1回で効果を実感する場合もあります)。
施術には基本的に麻酔は不要ですが、照射部位によっては希望時に麻酔クリームで痛みを緩和できます。
施術時間の目安は、およそ20〜30分です。
ダウンタイムについては、当日の入浴を控えていただき、1週間程度は性交渉や大衆浴場・プールの利用をお控えください。
尿道照射を行った場合、当日から長い方で1週間程度、排尿時に違和感を覚えることがありますが、日常生活への影響はほとんどありません。
各種治療の詳細な適応・施術回数・ダウンタイムは、診察時にお体の状態に合わせてご説明いたします。
腟の乾燥にお悩みの方は医療法人心鹿会へ

腟の乾燥を放置していると、かゆみや出血、性交痛や膀胱炎など、様々なトラブルにつながります。
対策方法を試しても改善できない場合は、医療機関を受診することを検討しましょう。
腟の乾燥にお悩みの方は、医療法人心鹿会へご相談ください。
当院の医師や看護師は全員女性ですので、デリケートな内容でも気兼ねなくご相談いただけます。
「性行為をすると痛みを感じる」「原因はわからないけれどデリケートゾーンがかゆい」など、まずは気になる症状をお伝えください。




