
「生理前になると、なぜか性行為の時に痛みを感じやすくなる」
そんな悩みを抱えていませんか?
普段は問題ないのに、この時期だけ違和感を覚えると不安になってしまうかもしれません。
実は、生理前の体は妊娠が成立しなかったため、子宮内膜をリセット(排出)するための準備に入っています。
プロゲステロン(黄体ホルモン)の作用で骨盤内の血流が増加し、子宮や周辺組織が充血して敏感になっている状態です。
その影響で「痛み」を感じやすくなる一方で、人によっては「性的な感度」が高まる時期でもあります。
今回は、この時期特有の体のメカニズムと、パートナーと快適に過ごすためのポイントを医学的な視点で解説します。
「生理前のホルモン状態」を正しく理解する

インターネット上では「生理前は女性ホルモンが減少するため、腟が乾燥して痛む」「PMSで性交痛が悪化する」という解説を見かけることがありますが、医学的な観点から見ると、この説明は必ずしも正確ではありません。
生理前の時期(黄体期)の体の中では、実際にはどのような変化が起きているのでしょうか。
性機能とホルモンの関係について、正しい知識を解説します。
本来、生理前は性機能にとって「プラス」の時期
生理の1週間ほど前(黄体期の中期)は、妊娠に備えるために「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の両方が高水準で分泌されている時期です。
エストロゲンは腟粘膜の厚みを維持し、うるおいを保つ働きを持っています。
プロゲステロンは骨盤内の血流を促進します。
性機能の観点から考えれば、これら2つのホルモンが十分に分泌されているこの期間は、組織の血流も良く、決して「機能が低下している時期」ではありません。
むしろ、ホルモンの働きによって腟の状態は守られているといえます。
そのため、「生理前だから一律に乾燥する・弱くなる」と考えるのは誤りです。
注意すべきは「生理が始まる直前」のタイミング
では、なぜこの時期に違和感を覚えることがあるのでしょうか。
考えられる要因の一つは、生理が始まるまさに直前(黄体期後期)に起こる、急激なホルモン変動です。
妊娠が成立しなかった場合、それまで高値で維持されていたエストロゲンとプロゲステロンは、生理に向けて急激に低下します。
このホルモンの急降下(消退)がスイッチとなり、子宮内膜が剥がれ落ちて「破綻出血(生理)」が始まります。
この「出血が始まる直前」の数日間だけは、粘膜を厚く保っていたエストロゲンの作用が一時的に失われるため、腟の粘膜が薄く変化し、外部からの刺激に対して敏感になっている可能性があります。
つまり、「生理前はずっと乾燥している」のではなく、「生理が来る直前の、ホルモンが急激に下がるタイミングだけは粘膜のコンディションが変化しやすい」と理解するのが正確です。
生理前の性行為で痛みを感じる原因
生理前の性行為で痛みを感じる原因は、一体何なのでしょうか。
身体的症状と精神的症状の2つに分けてご紹介します。
身体的症状
生理前の性行為で感じる違和感や痛みは、主に「分泌液の変化」「骨盤内のうっ血」、そして意外と見落とされがちな「腸の状態」という3つの生理現象が関係しています。
おりものの変化と潤滑不足による痛み
本来、性行為の際には、適切な性的刺激を受けることで腟壁からの漏出液や、バルトリン腺からの分泌液によって潤滑が得られ、スムーズな挿入が可能になります。
生理前(黄体期)は、プロゲステロンの影響でおりもの(頸管粘液)が粘り気の強い状態になり、腟内のうるおいの質感が普段とは異なります。
加えて、黄体期後期にはエストロゲンが低下し始めるため、性的刺激に対する腟壁からの潤滑液の分泌が普段より得にくくなる可能性があります。
普段と同じペースで挿入しようとすると、潤滑が追いつかず、摩擦によって痛みを感じやすくなります。
生理前の性行為では、パートナーと協力していつも以上に時間をかけて準備を行い、十分にうるおうまで待つことが大切です。
骨盤内のうっ血による「奥の痛み(圧迫感)」
プロゲステロンには水分を溜め込む作用があるため、顔や足と同じようにお腹の中でも「むくみ」が起きます。
子宮や卵巣周辺に血液が集まって「充血(うっ血)」し、臓器全体が腫れぼったくなっているため、性行為の刺激が奥に伝わるとズーンと響くような重い痛みを感じることがあります。
隠れ便秘による「腸からの圧迫痛」
実は、生理前の「奥の痛み」の大きな原因として、S状結腸から直腸にかけての便秘が挙げられます。
プロゲステロンには、妊娠を維持するために子宮の収縮を抑える働きがありますが、同時に腸の動き(蠕動運動)も低下させてしまいます。
そのため、生理前は便秘になりやすく、自覚がなくても直腸に便が溜まりがちになります(隠れ便秘)。
解剖学的に腟のすぐ後ろには直腸があり、すぐ近くをS状結腸が通っています。
腸の中に便やガスが溜まって張っている状態で性行為を行うと、腟の中から腸が圧迫・刺激される形となり、それが強い痛みとして感じられることもあります。
精神的症状
生理前(黄体期)のホルモン変化が心に与える影響には、大きな個人差があります。
「イライラや落ち込みが強くなる方」もいれば、骨盤内の血流増加などに伴って「むしろ性欲が高まる方」もいるでしょう。
どちらも異常ではありませんが、それぞれのパターンで痛みが起こるメカニズムが少し異なります。
パターン1:ストレスを感じている場合
PMSの影響でイライラしたり、憂鬱になったりしている場合、心身は強いストレス状態(交感神経優位)にあります。
性行為で「気持ち良い」と感じたり、十分にうるおったりするためには、リラックスした状態(副交感神経優位)が不可欠です。
しかし、心に不調を抱えたまま無理に性行為を行うと、体は無意識のうちに「防御反応」を起こしてしまいます。
ストレス下では、脳からの性的興奮の信号が十分に伝わらず、潤滑液の分泌が不足します。
また、緊張や拒否感から腟の入り口や骨盤底筋群だけではなく、体全体が無意識に普段よりも強く緊張し(収縮)し、挿入が困難になって痛みが生じます。
パターン2:性欲が高まっている場合
ストレスを感じる一方で、生理前は骨盤内の充血により感度が増し、性的な欲求が高まる方もいます。
「したい」という気持ちは十分にあるため、精神的な弊害はありませんが、この場合も「体と心のギャップ」に注意が必要です。
頭では興奮していても、この時期の体はホルモンの影響でおりものの粘度が高く(ベタベタして)、潤滑しにくい状態です。
「気持ちが盛り上がっているから大丈夫」と思って急いで挿入すると、体の潤滑準備が追いつかず、強い摩擦痛を感じてしまうことがあります。
自分の状態に合わせた選択を
大切なのは、自分の今の状態に合わせた選択をすることです。
気持ちがネガティブな状態にあり、 「今はしたくない」「気分が乗らない」と感じたら、無理をせずパートナーに伝える勇気を持ちましょう。
お互いにリラックスできないときは、「控える」という選択も二人の関係を守るために重要です。
性欲があるときにも、焦りは禁物です。
気持ちは十分でも、体(潤滑)には時間がかかります。
いつも以上に時間をかけて愛撫を行ったり、潤滑ゼリーを活用したりして、体の準備が整うのを待ってから楽しみましょう。
生理前の性行為による痛みを軽減する方法
生理前の性行為で痛みを感じる場合は、どのような方法で対処すれば良いのでしょうか。
痛みを軽減する具体的な方法と注意点をいくつかご紹介します。
潤滑剤を活用する
潤滑のための粘液分泌が不十分なため、痛みが生じている場合は潤滑剤がおすすめです。
腟の入り口が乾燥していると、性行為の際に摩擦が生じて痛みを感じることがあるので、潤滑剤でうるおいを足しましょう。
潤滑剤は、通販サイトやドラッグストアで購入できます。
香りやテクスチャーには様々な種類があるので、好みに合わせて極力、刺激がマイルドな製品を選びましょう。
下腹部を温める
下腹部の痛みや冷えが気になる場合は、よく温めることが大切です。
下腹部を温めることで血行が促進されます。
筋肉の緊張がほぐれて痛みを感じにくくなるので、性行為を行う前には、湯船に浸かって体を温めることをおすすめします。
鎮痛剤の使用は慎重に
痛みがあるときに鎮痛剤の服用を考える方もいますが、生理前だけに生じる性交痛であれば、まずはその時期の性行為を控えるという選択肢を考えましょう。
生理前の性交痛は、潤滑不足やうっ血など物理的な要因が大きいため、鎮痛剤で痛くなくなるとは考えにくいです。
原因がわからないまま薬で対処することは避け、痛みが続く場合は専門的に相談できる医師に相談してください。
痛みを感じにくい体位を探す
痛みの場所(種類)に合わせて、体位を工夫することも大切です。
生理前は体のコンディションが特殊な時期なので、普段と同じ体位にこだわらず、その時の痛みの種類に合わせて負担の少ない姿勢を探ってみましょう。
「奥」がズーンと痛む場合
骨盤内が充血して奥が敏感になっている場合は、深くまで挿入される体位(後背位など)は避け、浅めの挿入でコントロールできる体位がおすすめです。
特に「側位(横向きで後ろから抱きしめられるような姿勢)」は、構造的に深くまで挿入されにくく、お腹への圧迫も少ないため、奥の痛みを軽減するのに適しています。
また、リラックスしやすく、体への負担が最も少ない姿勢の一つです。
「入り口」がヒリヒリ痛む場合
挿入のときに滑りにくいと感じる場合、女性自身が挿入の角度やペースを調整できる「騎乗位(女性が男性の上に乗る姿勢)」が適しています。
男性主導の動きだと、どうしても摩擦の強弱がコントロールできず痛みにつながりやすいですが、女性が上に乗ることで、自分が痛くない角度や、うるおいがなじむまでのゆっくりとしたペースを自分で決めることができます。
また、あまり知られていませんが、男性の勃起状態が不十分(ペニスが柔らかくなってきた)なまま挿入を継続していることで、ヒリヒリしやすいこともあります。
男性側の硬さも変化しているので、注意してみましょう。
パートナーに伝える
性行為をしたくない、痛みが辛いというときには、その体の状態をパートナーに正直に伝えましょう。
パートナーの気持ちを優先して我慢を続けていると、性行為が辛いものとなってしまい、体だけでなく心も傷ついてしまいます。
生理前は体が変化している時期であることを共有し、理解してもらうことが必要です。
パートナーとコミュニケーションを取り、必要に応じて潤滑剤を使用したり、体位を変えたり、あるいは無理をせずに「NO」と伝えましょう。
痛みが軽減しない場合に考えられる病気
痛みの原因として、月経周期のホルモン変化の影響による症状をご紹介しましたが、病気を発症しているケースもあります。
強い痛みを感じる、頻繁に痛みを感じるという方は、病気の可能性も疑いましょう。
生理前に性行為を行うと痛みが生じる可能性のある病気をいくつかご紹介します。
子宮内膜症
子宮の内側にしか存在しないはずの内膜組織が、子宮以外の場所に定着してしまう病気が「子宮内膜症」です。
卵巣や腹膜、ダグラス窩(子宮と直腸の間)などに定着することが多く、発症すると生理痛が悪化するという特徴があります。
また、性交痛や下腹部痛、腰痛や排便痛などの症状が現れ、不妊の原因になることもあります。
基本的に自然治癒は期待できない病気なので、医療機関を受診してください。
子宮筋腫
子宮の筋肉に発生する良性の腫瘍(しこり)が「子宮筋腫」です。
子宮筋腫自体に問題はありませんが、発生した場所や大きさによっては、不正出血や貧血、不妊などの原因となります。
また、平常時は痛みを感じずとも、性行為によって痛みが生じることがあります。
経過観察となるケースもあれば、切除しなければならないケースもあるので、早めに医療機関を受診してください。
子宮頸がん・子宮体がん
子宮の入り口付近にできるがんを「子宮頸がん」、子宮の内側にできるがんを「子宮体がん」といいます。
いずれも初期には自覚症状が少ないものの、進行すると性行為を行った際に痛みを感じたり、不正出血が起こったりします。
定期検診を受けて早期発見を目指すことが望ましいですが、性交時の出血が毎回ある場合や、なかなか止まらない場合は必ず病院で相談しましょう。
その際には、性行為をしたときに不正出血があったことを正確に伝えるようにしてください。
性感染症
性器クラミジア感染症や淋菌感染症などを発症すると、腟や子宮頸部に炎症が起こり、痛みや不快感を引き起こすこともあれば、全く症状もないまま何ヶ月も経過することもあります。
いずれにせよ、基本的に自然治癒は期待できず、放置していると月経痛が悪化したり、不妊症につながることもあります。
パートナーが長期的に特定されている場合は、お互いに感染していると思った方が良いです。
自覚症状のないことも多いため、パートナーが変わっていない場合でも性行為がある場合は、1年に1回程度は感染症の有無を医療機関でチェックしておきましょう。
生理前の性行為で痛みを感じた場合の受診の目安

生理前の性行為で痛みを感じても、痛みの度合いが軽く、すぐに治まった場合は様子を見ても良いでしょう。
しかし、以下の症状が現れている場合は、婦人科を受診してください。
- 冷汗が出るほど強い痛みを感じる
- 性行為を行う度に痛みや出血を繰り返している
- おりものに異常が見られる(色・臭い・形状)
- 発熱や嘔吐、めまいなどの他の症状を伴う
冷汗が出るほどの強い痛みを感じる、生理のように出血量が多いという場合は、緊急性が高いといえます。
上記はあくまで目安ですので、病気の可能性があるという方は、医師にご相談ください。
生理前の性行為で痛みを感じる方は医療法人心鹿会へご相談ください

痛みを感じたとしても、デリケートな悩みに関しては、家族や友人、パートナーであっても相談しにくいものです。
しかし、放置していたら、実は重大な病気を発症していたというケースもあります。
生理前の性行為で痛みを感じるという方は、医療法人心鹿会へご相談ください。
当院の医師やスタッフは全員女性ですので、デリケートな問題についても気兼ねなくお話しいただけます。
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