
年齢を重ねると、肌質や髪質、筋肉量が変化するのと同様に、デリケートゾーンにも変化が現れます。
個人差がありますが、うるおいが不足して乾燥しやすくなり、かゆみやヒリヒリとした痛みが発生するというケースが少なくありません。
若い頃は問題がなかったのに、更年期に入ってからデリケートゾーンのトラブルに悩まされることが多くなったという方もいるでしょう。
今回は、更年期に発生しやすいデリケートゾーンのかゆみについて解説します。
原因やかゆみを放置するリスク、具体的な治療法や正しいケア方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
更年期にデリケートゾーンにかゆみが発生する原因

更年期に入ると、デリケートゾーンにかゆみが発生しやすくなるのはなぜなのでしょうか。
年齢によるデリケートゾーンの変化と、考えられるかゆみの原因をご紹介します。
更年期に起こるデリケートゾーン(外陰部・腟)の変化
閉経前後の約10年間にあたる更年期(45~55歳頃)に入ると、エストロゲン(女性ホルモンの一種)の分泌が減少します。
エストロゲンは腟粘膜や外陰部の血流を保つ役割を担っているため、その低下は局所の血流にも影響を及ぼします。
血流が低下した組織では、神経が過敏になったり、かゆみを引き起こす物質が産生されたりするため、かゆみや痛みが生じやすくなります。
これはホルモン変化に限らず、血流が低下した組織に共通して起こる反応です。
さらにこの状態が長く続くと、組織の萎縮へと進行していきます。
更年期には、自律神経の乱れから「ホットフラッシュ」と呼ばれる顔のほてりやのぼせ、発汗などの症状が現れる方もいます。
また、肌や髪の衰えといった見た目の変化だけでなく、イライラが抑えられない、気持ちが落ち込みやすくなるなど、精神的な症状に悩まされる方も少なくありません。
かゆみの主な原因は「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」
エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量の低下によって、腟粘膜が薄くなり、うるおいを失ってしまう状態を「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」といいます。
かつては「萎縮性腟炎」という疾患概念で説明されていました。
しかし、腟の内側は痛みやかゆみを感じる神経終末が少なく、炎症が起こっても自覚症状として現れにくい部位です。
「腟炎」という言葉だけでは、患者さんが感じている症状を十分に説明できないケースが多くありました。
実際、「デリケートゾーンのかゆみ」と表現される症状のほとんどは、腟の内部ではなく「外陰部のかゆみ」です。
こうした背景から、2014年以降は腟・外陰部・尿路を含むデリケートゾーン全体の粘膜変化に起因する症状—乾燥感・かゆみ・性交時の痛み・排尿トラブルなど—をまとめて「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」と呼ぶようになりました。
GSM(閉経関連尿路性器症候群)の代表的な症状
GSM(閉経関連尿路性器症候群)の主な症状は、以下の通りです。
- 外陰部のかゆみ、痛みなどの不快感、おりものの異常
- 再発性膀胱炎、頻尿、尿漏れなどの排尿に関するトラブル
- 性交痛や性交後に起こる出血、オーガズムの低下
ただし、これらの症状はGSMに限らず、他の疾患でも現れることがあります。
感染症や悪性疾患などの可能性をまず除外するためにも、気になる症状がある場合は、自己判断せず医師にご相談ください。
GSMの症状の現れ方は人によって異なりますが、「外陰部のかゆみやヒリヒリとした痛み」といった不快感に悩まされる方が多い傾向にあります。
また、外陰部の症状だけでなく、排尿に関するトラブルが起こりやすい点も特徴です。
GSM(閉経関連尿路性器症候群)以外のかゆみの原因
年齢的な問題であれば、かゆみの原因にはGSM(閉経関連尿路性器症候群)が考えられますが、「更年期のせいだと思っていたら、実は別の病気だった」というケースもあります。
外陰部のかゆみに悩まされているという方は、まずは正しい原因を突き止め、医療機関で適切な治療を受けましょう。
次に、更年期の外陰部や腟周辺にかゆみを引き起こす、GSM(閉経関連尿路性器症候群)以外の原因をいくつかご紹介します。
性感染症
性感染症は年齢にかかわらず感染する可能性があり、更年期世代でも思いがけず診断されるケースは少なくありません。
「自分には関係ない」と思い込まず、外陰部のかゆみがある場合は、初回の診察時に積極的に検査を受けておくことが大切です。
性感染症の多くは自覚症状に乏しく、気付かないうちに進行していることもあります。
かゆみだけでなく、次のような症状がある場合は、性感染症の可能性も含めて検査を受けましょう。
- おりものに血が混じる
- おりものの量が増える
- おりものの色が変化する(黄色・緑色 など)
- おりもののにおいが変化する(酸っぱい・生臭い など)
- 性交痛
- 下腹部痛
代表的な性感染症としては、性器クラミジア感染症、淋菌感染症、腟トリコモナス症などがあります。
性感染症を早い段階で除外しておくことは、その後の治療方針を決める上でも非常に重要です。
他の原因による症状とも重なりやすいため、自己判断はせず、婦人科で適切な検査を受けてください。
カンジダ腟炎
カンジダ腟炎を発症しても、デリケートゾーンに強いかゆみを感じることがあります。
カンジダ腟炎とは、腟内の常在菌のバランスが崩れることで発症する腟炎を指します。
性行為を介して感染する性感染症とは異なり、ストレスや疲れ、睡眠不足や体調不良など、免疫力の低下を原因として発症するという点が特徴です。
腟錠や塗り薬で治療が可能ですが、免疫力が低下すると、かゆみを繰り返すことがあります。
更年期特有の病気ではありませんが、女性に多く見られる病気ですので、ストレスの少ない規則正しい生活を心がけましょう。
MPPS(筋筋膜性骨盤疼痛症候群)
外陰部のかゆみの原因として見落とされやすいのが、骨盤底筋の過緊張です。
内閉鎖筋や肛門挙筋といった骨盤の奥にある筋肉が慢性的に緊張し続けると、その周囲の血流が低下し、皮膚や粘膜への酸素・栄養供給が滞ってしまいます。
その結果、見た目には赤みや荒れなどの変化がないにもかかわらず、慢性的なかゆみやヒリヒリ感が続くことがあります。
さらに、骨盤内にはAlcock管(陰部管)と呼ばれるトンネル状の構造があり、陰部神経がその中を通っています。
骨盤底筋の筋膜が強く収縮することでこの管が狭くなると、陰部神経が圧迫され、かゆみや痛みが外陰部だけでなく、太ももの内側や肛門周囲など離れた部位にまで広がることがあります。
このような状態は「MPPS(筋筋膜性骨盤疼痛症候群)」と呼ばれ、GSMや感染症とは異なるメカニズムによるかゆみです。
また、かゆみの原因のイメージは「汚れ」や「感染症」と思われていますが、それとは全く異なるメカニズムです。
検査で異常が見つからないのに症状が続く場合には、骨盤底筋の緊張が原因である可能性も考慮する必要があります。
デリケートゾーンのかゆみを放置するリスク

我慢できないほどのかゆみを感じると、陰部を指で掻いてしまい、症状が悪化する可能性があります。
皮膚の傷から出血が起こったり、感染症にかかったりするリスクがあるので、かゆみを感じたら決して放置しないようにしましょう。
デリケートゾーンのかゆみは自然治癒が難しく、ステロイドのような抗炎症作用を持つ薬を使用しなければ症状を緩和できません。
また、一時的に症状を緩和できたとしても、原因を突き止めて適切な治療を行わなければ、かゆみを繰り返すことになります。
「眠れない」「イライラする」など、ストレスから日常生活に支障をきたすこともあるので、デリケートゾーンのかゆみにお悩みの方は、婦人科を受診してください。
デリケートゾーンのかゆみの治療法
デリケートゾーンのかゆみは、どのような方法で治療できるのでしょうか。
かゆみの原因や患者様の症状によって異なりますが、医療機関が行っている代表的な治療法をいくつかご紹介します。
①薬物療法
乾燥を原因としてかゆみが発生している場合は、保湿剤や潤滑剤を用いた治療が行われます。
かゆみが強い場合は、ステロイド軟膏や、抗アレルギー剤・漢方薬などの内服薬を併用することもあります。
薬物療法は感染症の治療には有効ですが、GSM(閉経関連尿路性器症候群)の根本的な治療にはつながりません。
また、かゆみを一時的に緩和することは可能ですが、ステロイド軟膏のような強い抗炎症作用を持つ薬を長期的に使用すると、陰部の皮膚が薄くなったり、かゆみが悪化したりする可能性もあります。
薬を使用してもかゆみを繰り返す、悪化しているという方は、GSM治療を専門とする婦人科へご相談ください。
②女性ホルモン補充療法
デリケートゾーンのかゆみの治療には、女性ホルモン補充療法も有効です。
女性ホルモンの「エストロゲン」を補充することで、腟粘膜や外陰部の萎縮を改善し、症状を緩和します。
更年期のエストロゲン欠乏を改善したい場合は、全身投与が行われます。
ホットフラッシュや不眠など、かゆみだけでなく、更年期特有の症状の緩和も期待できるでしょう。
陰部のかゆみの改善を目的とする場合は、腟錠を用いた局所的投与が行われます。
GSM(閉経関連尿路性器症候群)の治療では、まずは局所的投与から開始されることが一般的です。
女性ホルモン補充療法は、乳がん・子宮体がんに罹患した方や、血栓症のリスクが高い方が治療を受ける場合は、診断された主治医と相談し、安全に治療ができるかを検討する必要があります。
医師とよく相談した上で、自身に合った治療法を選択してください。
③レーザー治療・高周波治療
ホルモンを用いた治療は受けられない、GSM(閉経関連尿路性器症候群)の根本的な治療を受けたいという方には、「モナリザタッチ」「インティマレーザー」などのレーザー治療や、「ウルトラフェミー360」などの高周波治療がおすすめです。
更年期のエストロゲン欠乏によって萎縮した腟粘膜や外陰部にレーザーや高周波を照射して、粘膜組織を活性化し、かゆみや性交痛などの症状の緩和を目指します。
痛みが強く我慢できないという場合には、麻酔クリームを使用します。
治療後のダウンタイムもほとんどないので、痛みが心配だという方にもおすすめです。
レーザー各種の治療期間や頻度は、1~2ヶ月置きに3回です。他にも、治療機器や体の状態によって、最適な治療間隔は異なります。
主治医と相談の上、治療スケジュールを決めていきましょう。早い方であれば、1回の施術でも効果を実感できます。
デリケートゾーンにかゆみがある場合の受診の目安
以下の項目にあてはまる方は、受診をおすすめします。
- かゆみが1週間以上続く
- かゆみが日に日に悪化している
- かゆみ以外の症状が現れている(痛み・出血・発疹 など)
- おりものの色やにおいが変化した(黄色いおりものが出る・悪臭がする など)
更年期だからといって、必ずしも原因がGSM(閉経関連尿路性器症候群)にあるとは限りません。
性感染症やカンジダ腟炎を発症していたり、稀ではありますが、外陰がんのような深刻な病気を発症していたりするケースもあります。
1週間を待たずとも、気になる症状があれば早急に婦人科を受診してください。
デリケートゾーンの正しいケア方法
かゆみや痛みといった症状を予防・改善するには、デリケートゾーンの正しいケア方法を知っておくことも大切です。
最後に、デリケートゾーンのケア(フェムケア)のポイントをご紹介します。
洗いすぎない
外陰部のかゆみケアで最も大切なのは、実は「清潔にすること」ではなく「洗いすぎないこと」です。
汚れが溜まったり、蒸れたりすると、雑菌が繁殖して炎症が起こり、かゆみや痛みなどの症状が現れることがあるといった意見は完全に間違っているわけではありませんが、企業の洗浄用の製品を購買させるための常套句でもあります。
汚れや蒸れが気になる方は、おりものシートや生理用ナプキンをこまめに変える、通気性の良い下着を身につけるなどの方法で対策しましょう。
入浴の際には、お湯と指を使って、短い時間(1分以内、できれば30秒まで)で洗いましょう。
洗浄力の強いボディソープを使用してゴシゴシ擦ると、デリケートな陰部がダメージを受けて乾燥が進み、かゆみが悪化してしまいます。
腟の内部まで洗うことは避けて、外陰部をぬるま湯(38~40度程度)で優しくすすいでください。
適度に保湿する
外陰部の乾燥が気になるという方は、保湿することが大切です。
蒸れるのも良くありませんが、顔と同様に、デリケートゾーンにも適度なうるおいが必要です。
特に乾燥しやすい入浴後には、ワセリンや外陰部専用の保湿剤を使用するのがおすすめです。
市販の天然オイルを代用する方もいますが、製品によっては刺激になったり、アレルギーを起こしたりすることがあります。
初めて使う場合は少量から試し、心配な方は医師に相談すると安心です。
また、保湿アイテムは製品ごとに使用部位が異なり、腟内への塗布が想定されていないものもあります。
事前に正しい使い方をよく確認してから使用しましょう。
潤滑ゼリーを使用する
性交時に痛みを感じるという方は、潤滑ゼリーを使用しましょう。
デリケートゾーンの乾燥が進むと、かゆみだけでなく、性交痛に悩まされることがあります。
挿入時に痛みを感じる、腟内で引っかかるような感覚があるという方は、潤滑ゼリーでうるおいを足すと良いでしょう。
ベタつきが少ないウォーターベースや、保湿力の高いシリコン系など、市販の潤滑ゼリーにも様々なタイプが存在します。
ヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分が配合された、保湿に特化した製品も存在するので、パートナーと話し合って使い勝手の良いものを選択してください。
更年期のデリケートゾーンのかゆみにお悩みの方は医療法人心鹿会へ

更年期に入ると体に様々な変化が現れますが、原因を知って正しい方法で対処すれば、つらい症状を緩和することが可能です。
デリケートゾーンのかゆみは決して放置せずに、一度医療機関を受診しましょう。
GSM(閉経関連尿路性器症候群)の症状にお悩みの方は、医療法人心鹿会へご相談ください。
当院の医師や看護師は全員女性ですので、デリケートな問題についても気兼ねなくお話しいただけます。
「原因はわからないけれど、デリケートゾーンがかゆい」「かゆみだけでなく、性交痛や排尿痛がある」など、まずはお気軽にご相談ください。
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