TREATMENT

膀胱ボツリヌス療法(膀胱ボツリヌス毒素注射)とは

対応診療科:泌尿器科

対応医院

ボツリヌス菌・ボツリヌス毒素とは

ボツリヌス菌 (Clostridium botulinumは、自然界に存在する細菌の一種で、偏性嫌気性グラム陽性桿菌に分類される菌です。

ボツリヌス菌から作られるボツリヌス毒素は、神経を麻痺させる作用をもちます。

そのため、食べるものの中にボツリヌス毒素が含まれていると、全身の神経麻痺を生じるボツリヌス症という病気を引き起こすことがあります。『1歳未満の乳児にはハチミツを与えないでください』、という注意書きを見ることがあります。これは、天然のハチミツの中にはごく微量のボツリヌス毒素が含まれていることがあるからです。成人では問題がない毒素の量でも、赤ちゃんの場合にはボツリヌス症を発症してしまう危険性があるために注意が必要です。

ボツリヌス毒素の働きは、神経と筋肉の間に働きかけて、神経が筋肉を収縮させる信号を阻害することで、麻痺を起こします。(神経筋接合部のアセチルコリン放出を抑制し、筋収縮を阻害する)

このようなことを知っていると、ボツリヌス毒素を使用した治療するなんてとても恐ろしいと考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、医療用として使用するボツリヌス毒素は、毒素の有効成分のみを抽出し、必要な部位のみに注射をすることで効果を発揮する治療です。治療をすることでボツリヌス菌に感染することは決してありません。さらに、筋肉を麻痺させることについても、正しい知識と技術を持ち合わせていれば、異常な筋肉の収縮を抑えることを目的に使用するため、安全な治療だと言えます。

ボツリヌス療法・膀胱ボツリヌス毒素注射とは

ボツリヌス毒素を薬として使用するために精製し、病気に応用したものをボツリヌス療法と呼びます。

現在、ボツリヌス療法は過活動膀胱や神経因性膀胱の治療以外にも、まぶたや表情にけいれんが起きてしまうことを治療したり、強く筋肉が収縮してしまうことで姿勢が偏ってしまうような疾患に対して使用されています。

膀胱内にボツリヌス毒素を注射することを膀胱ボツリヌス療法と呼び、ボツリヌス毒素の中でもA型が主に使用されています。

健康保険で認められた薬はボトックス(GSK社)https://jp.gsk.com/ja-jp/products/our-prescription-medicines/botox/といいます。

ボツリヌス療法の目的

膀胱ボツリヌス療法を行う目的は、尿漏れを起こしてしまうような過活動膀胱や神経因性膀胱の症状の改善です。

NINOMIYA LADIES CLINICで治療できる症状の例は

  • 過活動膀胱と診断されたが、現在の薬では効果がない
  • 過活動膀胱と診断され薬を処方されたが、副作用のために内服継続ができなかった
  • 神経因性膀胱の診断を受けており、自己導尿を行っているが尿漏れがある

などです。

ボツリヌス療法の特徴

NINOMIYA LADIES CLINICで行っている膀胱ボツリヌス療法の特徴は以下の通りです。

日帰り治療

NINOMIYA LADIES CLINICの膀胱ボツリヌス療法は日帰りで処置を行うことができます。

膀胱ボツリヌス療法の手術は完全予約制のため、初診時に膀胱ボツリヌス療法を行うことはできません。しかし、日帰りでできるため、遠方からの患者様も多くご受診いただいております。

膀胱ボツリヌス療法は保険治療です。膀胱ボツリヌス療法が適切な対応であるかどうかを担当医が判断させていただきます。希望される全ての方が施術の対象となるわけではありません。

施術は1年に1~2回

膀胱ボツリヌス療法で使用しているボツリヌス毒素の筋肉への効果は時間の経過とともに必ず消失します。

過活動膀胱のために治療を行った人は半年~1年ほどで強い尿意が再発する人も多く、1年に1~2回程度の治療が必要となります。

しかし、すべての人が必ずしも膀胱ボツリヌス療法を継続するわけではありません。前回の治療によって正常な排尿の状態を取り戻す人もいます。また、今まで内服薬では効果が弱かった人が、内服薬だけで十分に快適な排尿を行えるようになる人もいます。

膀胱ボツリヌス療法の薬効自体は消失しているにも関わらず、そのような人がいらっしゃる理由はまだ解明されていませんが、排尿機能そのものが、膀胱の筋肉以外の多くの要素に影響されていることに起因するのではないかと考えられています。

40代までの女性であれば治療が延期することはほとんどありませんが、50歳をこえたあたりから腟の回復力が低下してくるため、治療スケジュールを延期したほうが望ましい方もいます。それを踏まえて治療方針を決定していきますのでどうぞ安心して治療に臨んでください。

膀胱ボツリヌス療法 施術の流れと所要時間

NINOMIYA LADIES CLINICで膀胱ボツリヌス療法の施術を受けて帰宅されるまでの流れと、その所要時間についてご説明します。

1.受付

来院指示させていただいたお時間までに受診をお願いします。

*15分以上の遅刻の場合は、施術時間が大幅にずれることがあります。また他の患者様の治療予定の関係上、せっかくご予約いただいた施術を受けることができないこともございます。

受付窓口で受付を行ってください。受付より体温計をお渡しします。体温測定、血圧測定を済ませ、待合でお待ちください。

2.回復室へ案内

スタッフが更衣のための部屋(回復室)までご案内させていただきます。

鍵付きのロッカーがございますので、施術衣に更衣していただき、ベッドでお待ちください。回復室内にはトイレもございますので、施術前にお手洗いもお済ませください。

3.手術室に移動

患者様が更衣を終えられたタイミングを見計らって看護師が手術室にご案内させていただきます。

手術台に寝ていただきます。薬投与のための点滴をさせていただきます。アレルギーなどの問題がなければ抗生剤の点滴を開始します。何か気になる症状があればその際に看護師にお伝えください(例 体調が悪い、発熱がある など)。症状によって、施術を延期したほうがよいと判断することがございます。

再度、ベッド上で血圧の測定を行います。そのほか、心電図と酸素飽和度のモニターを装着させていただきます。

酸素投与を開始します。マスクからゆっくり酸素が流れていますので、自然な呼吸でリラックスしてお待ちください。

4.手術

準備が整ったら、手術のために体勢をとっていきます。看護師が姿勢を指示しますので、可能な範囲でご協力ください。

担当医が患部の消毒と、膀胱内の観察を行います。膀胱内に問題がないことを確認し、いよいよ点滴から麻酔が投与されます。麻酔が投与されると患者様は眠ってしまいますので、目覚めたときには手術は終了しています。

手術は、膀胱用のカメラに、膀胱ボツリヌス療法専用の針を挿入し、その針を使って膀胱粘膜や筋肉に20か所程度クスリを注射していきます。

施術時間は5-10分程度です。

出血はほぼありませんが、ときどき手術後に血尿がでることもあります。

また、麻酔の効き方には個人差がありますので、途中で目が覚めてしまうこともあります。起きてしまって、手術中の痛みが我慢できない場合は麻酔薬を追加しますのでご安心ください。

手術が終了後、患者様につけていた血圧計や心電図のためのシールを外します。車いすで回復室まで移動していただきます。

5.休養・会計・帰宅

回復室に戻った後は、しばらくベッド上でお休みください。

お休みいただく時間に特に決まりは設けておりませんが、麻酔薬の効果がなくなって意識に問題がないと判断されるまではゆっくりしていただきます。

しっかりと意識が回復した後、回復室内のトイレで検尿用のコップに排尿をしていただきます。尿の出た量や色に問題ないかを判断しますので、採取した尿は看護師に見せてください。

排尿確認後に帰宅許可となります。

着替えを済ませ、待合でお待ちください。会計スタッフよりお声をかけさせていただきますので、お会計をしていただきご帰宅となります。

次回のご予約は1週間後を目安にご自身でWeb予約をお願いします。万が一、ご予約がいっぱいで希望日に取得できない場合はお電話にてお問合せください。

これで終了です。全行程でおよそ60-90分となります。お疲れ様でした。

詳しい施術風景はこちら⇨https://ninomiya-lc.jp/blog/%E9%81%8E%E6%B4%BB%E5%8B%95%E8%86%80%E8%83%B1%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%AA%E6%B2%BB%E7%99%82%e3%80%80%E8%86%80%E8%83%B1%E5%86%85%E3%83%9C%E3%83%84%E3%83%AA%E3%83%8C%E3%82%B9%E6%AF%92/

ボツリヌス療法の効果

治療効果には個人差がありますが、以下を目標として治療を行っています。

排尿に関すること

  • 排尿回数が減る
  • 1回あたりの排尿の量が増える
  • 寝ている間にトイレで起きる回数が減る
  • オネショが改善する
  • トイレにいった後にすぐにムズムズしなくなる
  • 尿意切迫感が減る
  • 尿意切迫感に伴う尿漏れが減る

ボツリヌス療法を受けることができない方

膀胱ボツリヌス療法は、医療行為です。すべての方が希望通りに施術できるわけではありません。患者様の症状に対し、ボツリヌス療法が治療として適切であるかを担当医が判断させていただきます。

以下に膀胱ボツリヌス療法を受けることができない方を記載しますので、該当されるかたは必ずお申し出ください。

施術当日に体調のすぐれない方

膀胱ボツリヌス療法の施術は、体調の悪いときや膀胱炎の症状がある時に受けることはできません。体調がすぐれない方はスタッフまでお申し出ください。

また手術を予定しているけれど、手術予定日が回復後1週間以内などの場合は体力が不完全であることが考えられます。手術を延期の可能性もあるため、速やかにクリニックまでご連絡ください。

排尿機能が顕著に低下している方

ボツリヌス療法によって、膀胱の筋肉の収縮力は必ず低下します。そのためいくら頻尿や失禁の症状があっても、排尿機能が低下している人は、ボツリヌス療法の適応とはなりません。詳しくは診察の際にご説明させていただきます。

その他

その他にも担当医が不適切と判断した際は、施術ができないことがございます。

ボツリヌス療法後の注意事項

膀胱ボツリヌス療法後にはいくつかの注意事項があります。治療を考えられている患者様は、以下の項目をご確認の上、治療スケジュールを検討してください。

ボツリヌス療法のあとの痛みについて

一般的に、膀胱ボツリヌス療法のあとには痛みはありません。しかし施術の時に尿道付近に傷ができてしまった人や、膀胱の出口付近に薬剤投与があった場合、排尿時に痛みや不快感がでることがあります。

また、抗生剤を使用しているものの術後数日経過した後に膀胱炎を発症することがあります。その際は術後には感じなかった排尿時痛が生じることもありますのでクリニックまでご連絡いただきますようお願いいたします。

入浴について

膀胱ボツリヌス療法の当日から浴槽の入浴は問題ありません。しかし長時間の入浴は体に負担をかけることがありますので、普段よりも軽めにすませていただくことをお勧めします。

ボツリヌス療法後のセックスについて

膀胱ボツリヌス療法を受けた後のセックスについて、特に決まりはありません。

しかし、膀胱と腟は非常に近接した臓器のため、セックスによる刺激が、感染の機会になってしまうことも懸念されます。1週間後のクリニックのフォローアップまでは控えていただくほうが良いかと思います。

フォローアップで、尿への感染がなく、排尿時の機能も問題ないと診断されたあとは、特に制限はありません。

ボツリヌス療法後の温水洗浄便座の使用禁止

NINOMIYA LADIES CLINICでは、膀胱ボツリヌス療法を受ける人だけに限った説明ではありませんが、施術後の温水洗浄便座を禁止しています。

温水洗浄便座とはなんぞや、つまりウォ〇ュレットのことです。これはTOTOさんの商品名なので、一般名を温水洗浄便座というそうです。

温水洗浄便座からでてくる温水には見えない雑菌が存在しているといわれていますので、モナリザタッチなどで傷ついた粘膜・皮膚には絶対に使用しないでください。女性泌尿器科の疾患にはもともと温水洗浄便座はあまりよくないことも多いので、これを機会に、ぜひ使用をやめてみてはいかがでしょうか。

ボツリヌス療法のあと自宅でうまく排尿できないときは

膀胱ボツリヌス療法後に、トイレで排尿できることを確認して帰宅いただいていますが、場合によっては帰宅後にどうしてもオシッコがうまく出なくなってしまう人がいます。排尿できない状態が継続するときは、必ずクリニックにご連絡をお願いいたします。

自己導尿をご自身で行うことが可能な人は、導尿用の道具をお持ち帰りいただくことも可能です。不安な人は事前にご相談ください。

その他、ボツリヌス療法後に気になることがある場合

施術後に気になることがある場合は、再診時に関わらず主治医に必ずお伝えください。症状が緊急の場合は、予約を早めていただいても構いません。

また、ボツリヌス療法後の症状で受診したいのに、ご予約が取れないといった場合は、まずお電話でお問い合わせください。症状を確認し、必要あれば受診予約させていただきます。

料金のご案内

NINOMIYA LADIES CLINICの膀胱ボツリヌス療法のご料金は以下の通りです。

注射するボツリヌス毒素の量や使用する薬剤によって前後します。

3割負担の方

およそ 50,000~70,000円

1割負担の方

およそ 18,000円~25,000円

ボツリヌス療法についてよくある質問

施術前の質問

Q 受診日に突然生理になってしまいましたが、治療を受けることはできますか?

A 施術前に外陰部や腟の洗浄とふき取りを行っていますので、月経の1日目であれば問題なく施術することができます。患者様が心理的に不快感が強い場合は、延期させていただきますので予定を変更してください。

Q ボツリヌス療法ってどのくらいの年齢の人が受けていますか?

A 当院でおこなっている膀胱ボツリヌス療法は幅広い年齢層の方に受けていただいております。

最年少で20代、最高齢では80代の方に施術させていただきました。もっとも多い年齢は60代の女性です。

年齢にかかわらず、強い衝動的な尿意とそれによる尿漏れがある生活というのはとてもつらいものです。強い症状の人ほど薬も効果が弱く、自分の生活に制限を感じていらっしゃいます。

困っている今の症状が膀胱ボツリヌス療法でもっと改善する可能性がありますのでぜひ一度ご相談ください。

Q 他院で1回受けましたが効果は感じませんでした。受けても無駄ですか?

A ボツリヌスに効果を感じないに人の中に、ボツリヌス毒素に対して抗体を持っている方がいらっしゃいます。その場合は、いくら治療を繰り返してもまったく効果はありません。

しかし、抗体を持っている方はほんのわずかしかいらっしゃらないので、大半の患者様は薬が不十分だったり、体の変化をうまくとらえられていない可能性が高いです。他院の膀胱ボツリヌス療法で治療効果がなかった方でも一度NINOMIYA LADIES CLINICでご相談ください。

施術中の質問

Q ボツリヌスの注射の痛みはどのくらいですか?

A 当院では施術前に静脈投与で全身麻酔を行いますので、ほとんどの患者様は施術中の記憶はありませんので、痛みについてのご心配は不要かと思います。

中には麻酔が効きにくく、途中で覚醒してしまうこともありますが、痛みが我慢できなかったという患者様はまだいらっしゃいません。その他の鎮痛方法もありますので、不安な方は術前に主治医とご相談ください。

施術後の質問

Q ボツリヌス注射の後、排尿がしにくい場合はどうすればよいですか?

A まず初めに、ボツリヌス毒素の効果は必ずなくなります。時間の経過ともに症状は改善しますので、ご安心ください。

その上で、ボツリヌス療法の後から明らかに排尿がしにくい感じがでることについては、診察をしたうえで治療方針を決定します。場合によっては、自己導尿のような治療をすることもありますが、きちんとできるように指導させていただきますのでご安心ください。

詳しくは主治医とご相談ください。

施術可能な医院