性交痛 A型ボツリヌス毒素治療
対応診療科:女性性機能
A型ボツリヌス毒素とは
A型ボツリヌス毒素注射は、ボツリヌス菌の成分を無毒化した注射剤です。ボツリヌス菌の成分には、神経と筋肉の接合部位に働きかけ、筋収縮をできなくさせるという働きがあります。A型ボツリヌス毒素注射はそれを応用した治療です。
治療に適した人とは
A型ボツリヌス毒素注射に適している性交痛の女性には2つのタイプがあります。
ひとつめのタイプは、腟前庭部の神経が強く反応しやすい人です。腟前庭部痛は、性交痛の中でも非常に多くの女性がトラブルとなっている部位です。当院では前庭部痛の方に対する治療として、ホルモン治療、レーザーをまず行いますが、それらの治療では治療が難しい方に対し、A型ボツリヌス毒素注射を選択することがあります。
ふたつめのタイプは、骨盤底筋が強く収縮してしまい、腟のリラックスが得られない人です。骨盤底筋の収縮は、自分でコントロールしにくい部位であり、痛みや恐怖心から知らないうちに骨盤底筋を強く収縮させてしまっている人がいます。このような場合は、骨盤底筋トレーニング(骨盤底筋リハビリテーションとも呼ばれます)を行い、筋肉を自分でリラックスするように練習を行いますが、その治療ではうまくいかないときにはA型ボツリヌス毒素注射が選択されます。
A型ボツリヌス毒素注射のほかに使用する薬について
性交痛のA型ボツリヌス毒素注射治療のとき、A型ボツリヌス毒素のほかにも薬を使用します。
必ず加えるものが局所麻酔の薬(リドカイン、キシロカイン、マーカインなど)です。
麻酔の薬を使用する理由は2つあります。一つ目の理由は、注射部位への痛みを抑えるためです。麻酔薬を併用することで、注射時の痛みが抑えられ、患者さんがリラックスして施術を受けることができます。二つ目の理由は、A型ボツリヌス毒素注射をしたい部位がきちんと行われているか、または不要な部分や重複している部分に注射していないかを確認するためです。麻酔薬を併用することによって、より安全に施術を行うことができています。
麻酔薬以外にも薬を使用します。
例えば、炎症を抑える薬剤などです。患者さんの症状によって適切な薬が選択されます。
治療効果について
麻酔の薬の作用によって、施術を行ってすぐに効果は期待できます。しかし、麻酔の薬の効果は非常に短時間(数時間~半日程度)です。
A型ボツリヌス毒素注射の治療効果は3~7日後から現れます。
さらにA型ボツリヌス毒素注射の効果は3-6か月間持続します。そのため、重症な人は3-6か月に1回程度の間隔で施術を行うことが効果的です。しかし、何度か治療を行っていただくことで、今まで強く反応していた筋肉の反応をどんどん抑えることができるようになるため、施術間隔は長くなっていくことが期待されます。
施術の流れ
- 問診表記入(初診時)
- 医師によるカウンセリング
- 患部の診察
- 施術(15分;部位により前後します)
- 施術後の止血確認
施術による副作用
- 刺入部に出血が生じるため1~数日間オリモノに出血が混ざることがあります。
- 出血をしやすくする体質や薬剤を使用している方は、施術後の出血が増加する可能性があります。担当医が施術に適していないと判断する場合は、施術をお断りすることがあります。
- 施術した部位の筋肉が緩んでいるため、歩行などで普段より疲れやすく感じることがあります。
- 短期間に繰り返してボトックスの治療を行うことでボトックスへの抗体ができることがあります。
1回目の治療で全く効果がなかった人については、治療を繰り返すことはお勧めしません。