女性にとって規則的に生理が来るということは、健康に関する一つのバロメーターです。
予定通りに生理が来ないと、何か自分の体に特別なことが起こっているのではないかと不安に駆られるかもしれません。
生理が来ない理由として第一に考えられるのは妊娠ですが、それ以外の理由で遅れるケースも多々あります。
今回は、生理が来ない理由や様々な原因について解説します。
妊娠以外でも生理が来ないことは珍しくない
生理が来ない理由として最も知られているものが、妊娠です。
妊娠の可能性や心当たりがないにも関わらず、生理が来ないと不安になるかもしれません。
生理は妊娠以外の様々な要因から、定期的に来なくなってしまうこともあります。
生理が来ないという点以外に不調を感じていなかったとしても、見えない部分で何らかのトラブルが発生している可能性があります。
単に生理が遅れているだけだろうと軽く考えず、なぜ来ないのかといった理由を知ることが大切です。
生理の仕組みと生理周期
女性の体の中では、おおよそ25~35日に一度の頻度で卵子が卵巣から排出され、排卵が起こります。
排卵が起こると脳からの命令を受け取り、卵巣からエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、着床できるよう子宮内膜に厚みが生じます。
その後、受精卵が着床しなかった場合は、厚くなった子宮内膜が剥がれて排出されることになります。この排出こそが、「生理」です。
女性の体の中ではこのサイクルが繰り返されることになるため、大体1ヶ月に1度のペースで生理が起こります。
生理が来ない理由とは?
女性にとって生理は身近なものであり、些細なことがきっかけで来なくなってしまうことも珍しくありません。
しかし、生理が来なくなる原因は様々で、深刻な病気のサインである可能性もあります。
原因がはっきりしない場合は、安易に自己判断せずに婦人科を受診しましょう。
ここでは、知っておきたい生理が来なくなる理由をいくつかご紹介します。
生理が来ない理由①:生理不順(月経不順)
生理が来ない理由として妊娠以外に考えられるのが、生理不順・月経不順です。
生理不順はその名の通り、生理の周期が乱れてしまうことを指します。
その主な原因として考えられるのが、ホルモンの分泌バランスの崩れです。
1週間程度であれば、生理の周期が乱れるのも誤差の範囲内と考えて良いでしょう。
それよりも大幅に生理が来るのが遅かったり、あるいは全く来る気配がなかったりする場合には、生理不順を疑ってください。
生理不順・月経不順を起こす原因は、主に4つあります。
過度な食事制限やダイエット
近年、若者を中心に増えているのが、過度な食事制限やダイエットによる生理不順です。
体が栄養不足に陥ったことから、生理が来ない可能性があります。
栄養は重要度の高い臓器から回される傾向があり、摂取する栄養が不足していると、卵巣にまでエネルギーが回らなくなります。
生理不順になっているにも関わらず、さらに過度な食事制限やダイエットを続けてしまうと、脳が妊娠をするべきコンディションではないと判断して体が低燃費モードに入り、生理が来なくなるでしょう。
ストレス
精神的なストレスがかかると、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン、通称「ストレスホルモン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。
ストレスホルモンは、食欲抑制や睡眠欲抑制、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌を抑制する働きがあります。
具体的には、その中のエストロゲンとプロゲステロンの分泌が抑制され、生理が来なくなってしまうのです。
仕事や家庭のトラブルといったネガティブな問題だけでなく、ポジティブに思える新生活のスタートといった生活の変化も、知らないうちにストレスになっているケースもあります。
睡眠不足
睡眠不足も生理が来ない理由の一つです。
一般的に女性ホルモンと呼ばれているエストロゲンとプロゲステロンは、卵巣から分泌されています。
その分泌量のコントロールは、脳の下垂体や視床下部が行っています。
つまり卵巣と脳が上手く連携していないと、ホルモンのバランスが乱れてしまうことになるのです。
睡眠不足になったり睡眠のリズムが乱れてしまったりすると、脳は十分な休息ができない状態に陥り、ホルモンの分泌量のコントロールが上手くいかなくなり、生理が来ない原因になるのです。
過度な運動による疲労
運動することは、体に良いと感じている方も多いでしょう。
確かに、適度な運動は健康維持に欠かせませんが、激し過ぎる運動は体への負担になってしまいます。
過度な運動をすることによりエネルギーを激しく消費すると、体は栄養不足に陥るでしょう。
自分ではそれなりに食べていると思っていても、食事制限をしているのと変わらない状態になってしまうのです。
卵巣への栄養が後回しになってしまい、生理不順の原因になります。
生理が来ない理由②:無月経
妊娠の可能性がないにも関わらず、3ヶ月以上生理が来ていない状態のことを「無月経」といいます。
無月経には、主に2種類あるので確認しておきましょう。
原発性無月経
「原発性無月経」とは、そもそも生理が始まらない状態を指します。
18歳以上の年齢になっても生理が来ないケースでは、原発性無月経に分類されます。
また、15歳を超えても初潮が来ないケースでも、それに準じた症状と判断されることもあるのです。
原発性無月経の原因は、人によって異なります。
生殖器に先天的な異常がみられて生理が起こらない場合や、遺伝性疾患が起きている可能性があります。
継発性無月経
「継発性無月経」はこれまでは問題なく生理が来ていたのに、突然3ヶ月以上来なくなったケースが分類されます。
継発性無月経は珍しい症状ではなく、ストレスや過度なダイエット運動などによりホルモンバランスが乱れ、生理不順が常態化していることが理由として考えられるでしょう。
その他にも、何らかの病によって生理が来なくなることもあります。
継発性無月経は生理が来ない以外では体に不調がないケースも多々あり、気にせずそのまま過ごしてしまう方も多いようです。
生理がない状態が長期化すると治療が難しくなることもあるので、病院での受診をおすすめします。
生理が来ない理由③:早期閉経
卵巣の活動が次第に消失していき、起こらなくなることを「閉経」といいます。
閉経の時期は個人によって異なりますが、平均的な年齢としては50歳ほどです。
その一方、早い人は40歳未満でも閉経が起こることがあります。
40歳未満で閉経してしまうこともあり、その症状のことを早期閉経と呼びます。
このケースでは「早期卵巣不全」といって、卵巣の機能不全が原因となり、人よりも早く閉経する傾向にあるのです。
早期閉経によって希望していても妊娠できなかったり、人によっては更年期障害のような症状が起こったりします。
生理が来ない理由④:低容量ピル
避妊や生理痛の緩和など、どちらかというと生理周期を整えるイメージのある低用量ピルですが、その影響によって生理が来ないこともあります。
低用量ピルを服用していると、排卵や子宮内膜の厚みが蓄積されなくなる可能性があります。
そのため生理が来なくなったり、月1回以下になったりするケースも珍しくありません。
低用量ピルを服用していることが理由であれば、それらの生理不順が起こってもあまり気にする必要はないようです。
しかし、低用量ピルを服用していても妊娠する可能性もあります。
その他にも様々な要因から生理が来なくなっている可能性があるため、自己判断せず医師の診察を受けるようにしてください。
生理が来ない理由⑤:甲状腺の病気
甲状腺に何らかの異常が生じている際も、生理が来ないことがあります。
甲状腺は、ホルモンの合成・分泌に関わっています。
橋本病と呼ばれる「甲状腺機能低下症」、ハセドウ病と呼ばれる「甲状腺機能亢進症」があると、ホルモン分泌量が大幅に乱れます。
ホルモンバランスが崩れてしまうことで、生理不順になるケースもあるのです。
ここでポイントとなるのが、ホルモンの分泌量が大幅に乱れるといった点です。
甲状腺の病気があったとしても、それが治療を要するほどの症状ではない場合、問題なく生理が来るケースも多々あります。
生理が来ない理由⑥:子宮や卵巣、脳の病気
ここまで生理が来ない理由についていくつかお話ししてきましたが、ほとんど心当たりがないという方もいるかもしれません。
そのような方の場合は「子宮内膜症」や「卵巣機能不全」など、子宮や卵巣そのものに何らかの不調が生じている可能性があります。
その他にも、ホルモンの分泌量をコントロールしている下垂体腺腫のような部分に異常が生じているかもしれません。
これらの不調は痛みや違和感を抱くケースもある一方で、ほとんど自覚症状がないまま病気が進行しているケースもあります。
できるだけ早く医師の診察を受けるようにしてください。
生理が来ない理由⑦:妊娠
性交渉をした後に生理が来ない理由としては、妊娠の可能性も考えられます。
性交時にコンドームを使用していたり、低用量ピルを服用していたりと、普段から避妊に気を付けている方は妊娠の可能性を疑わないものです。
しかし、避妊をしていても、妊娠を確実に防げるわけではありません。
妊娠の可能性があるという方は、まずは妊娠検査薬を使用してみましょう。
妊娠初期症状と生理前症状の違い
妊娠初期症状は生理前症状と非常に似ているため、完全に見分けることは難しいですが、普段から基礎体温を記録していれば体温で妊娠に気付けることがあります。
生理予定日を過ぎても高温期(0.3~0.5度程度体温が高い状態)が続いている場合は、妊娠の可能性が高いといえるでしょう。
生理周期が安定している場合は、生理予定日から1週間以上経っても生理が来なければ妊娠を疑います。
妊娠初期症状と生理前症状の見分けがつかないという方は、妊娠検査薬を使用して判断しましょう。
妊娠検査薬は、使用するタイミングが早過ぎると、妊娠が成立していても陰性になることがあります。
生理予定日から1週間以上経ってから検査を行い、陽性反応が出た場合は、婦人科や産婦人科で診察を受けてください。
生理が来ないときの対処法
毎月来るはずの生理が来ないと、焦ったり不安になったりする方は少なくありません。生理が来ないときには、どのように対処すれば良いのでしょうか。
栄養バランスを整える
ダイエットや食事制限に心当たりのある方は、栄養を補給することが大切です。
バランスの良い食事を心がけて、今の体に過不足がないようにまんべんなく栄養を摂取していきましょう。
体を動かすこと自体は良いことですが、過度な運動をしているとエネルギー不足で体に負担がかかり、生理不順に繋がります。
体を労わる意識を持って、栄養バランスを見直してください。
ストレス解消
仕事が忙しかったり何らかの悩みを抱えていたりと、ストレスが原因で生理が来なくなっているのであれば、もやもやとした気持ちを解消するように努めましょう。
ストレスのサインは人それぞれですが、生理が来ない以外にも「妙にイライラする」、「頭痛がある」、「悲しくなる」、「夜ぐっすりと眠れない」といったサインが出たのであれば、自分を労わるタイミングです。
自分の好きなことをする時間を確保したり外に出て日光浴をする時間を作ったりすることで、ストレスが軽減していくでしょう。
じっとしているだけでなく、適度な運動もストレス解消に繋がります。
睡眠時間の確保
睡眠時間をしっかり確保できてなかったり、眠りの質が悪かったりする場合には、生活の見直しをしていきましょう。
適切な睡眠時間は個人によっても様々ですが、おおよそ7~8時間程度が必要だといわれています。
この時間寝ていれば良いというわけではなく、睡眠の質が下がっていると、睡眠不足になってしまうかもしれません。
睡眠の質を上げるためには、21時以降の運動も控えてください。
就寝前には、スマートフォンやテレビなどのブルーライトを避けると良いでしょう。
激しい運動を控える
生理が来なくなる原因の一つでもある激しい運動も、なるべく避けるようにしてください。
特に高い目標を掲げてダイエットをしている方や、健康目的とはいえ高頻度でジムに通っている方は要注意です。
この他にも何らかのスポーツに熱中している方も、運動量の見直しをした方が良いかもしれません。
具体的には、ジムに通う頻度を下げたり、1回あたりの運動量を抑えるようにしたりするのが効果的です。
食事内容も見直し、体がエネルギー不足に陥っていないかも確認してみましょう。
漢方を利用する
生理不順の状態を解消したいのであれば、漢方の力を借りてみるのも良いでしょう。
生理不順の解消に使われる代表的な漢方には、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」や「四物湯(しもつとう)」、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が挙げられます。
桂枝茯苓丸は、イライラやのぼせを抑え、四物湯は血行を整える効果が見込めます。
最後の当帰芍薬散は、体の冷えや貧血などに効果が見込めるでしょう。
これらの漢方は、一般的なドラッグストアでも購入できますが、医師の診断を受けた上で個人に合ったものを処方してもらうのがおすすめです。
まとめ
- 食事や運動、睡眠など、生活習慣を整えることが大切
- 体の不調だけでなく、ストレスによる心の不調にも注意
- 生理不順の改善には漢方も有効
生理が来ないとき、どのタイミングで婦人科を受診すると良いの?
生理が来ないと不安になりますが、1週間程度ならば誤差の範囲内です。
人によっては、もっと生理時期がずれるケースもあります。
少しでも妊娠している可能性が疑われるのであれば、生理予定日から1週間程度経ったタイミングで妊娠検査薬を使ってみると良いでしょう。
妊娠検査薬が陰性であった場合は、2~3ヶ月経っても生理が来ないタイミングで婦人科に行くのがおすすめです。
それよりも前のタイミングであっても、下腹部や腹部に痛みがあるケースでは、子宮や卵巣の異常が考えられます。
痛みが生じたその時点で、受診を考えた方が良いでしょう。
婦人科ではどんな診察・治療が受けられる?
生理不順で婦人科を受診した場合、どのような診察や治療が受けられるのでしょうか。
基礎体温検査
「基礎体温」とは、食事や運動といった、人間の体温に影響を与える条件を避けて測った体温のことをいいます。
基礎体温を測ることは、排卵の有無を知る一つの方法になります。
基礎体温を毎日測定していく中で、低い時期と高い時期に分かれた場合、子宮も卵巣も正常に働いているという目安になるのです。
基礎体温は、朝起きてすぐに測ることが推奨されており、病院で測れるものではありません。
そのため、普段から基礎体温をチェックしてメモ帳やスマホ専用アプリなどに記録しておくと、スムーズに受診しやすくなります。
採血、血液検査(ホルモンの検査)
生理が来ないときには、まず採血を伴う検査が実施されるケースが多々あります。
血液検査を受けることによって、卵巣から分泌される女性ホルモンや乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンといった、体内のホルモン量を調べることが可能です。
血液検査を受けることにより、卵巣や脳などに病気がないかを知ることができます。
血液検査の結果を受け、患者様と医師が相談した上で今後の治療の方針を決めていきます。
経腟超音波検査・内診
経腟超音波検査とは、超音波(エコー)を用いて子宮や卵巣の状態を目視で確認する検査です。
超音波には、お腹の上から器具を当てて調べるタイプと、プローブという器具を挿入して調べるタイプの2種があります。
内診では、医師による触診や専用機材で腟管などを調べる検査を行います。
この婦人科での内診に不安を抱いてしまう女性も珍しくありません。
二宮レディースクリニックでは、少しでも患者様がリラックスできる雰囲気の中で行い、不安や恐怖心を取り除く配慮をしています。
投薬治療(ホルモンのお薬、漢方など)
投薬治療は、主にホルモンの薬を服用して、その後に生理が正常に来るか確かめる方法です。
プロラクチンの分泌に原因がある場合は、プロラクチンを抑える薬で対処するといった、個人に合わせた方法で治療を行っていくことになります。
場合によっては、低用量ピルや別のホルモン剤が処方されることもあります。
漢方薬を服用することで、少しずつ体調を整えて行く方法が採用されるケースもあるでしょう。
まとめ
- 毎日「基礎体温」を記録しておくとスムーズに受診できる
- 生理不順の検査は、採血やエコーなど体への負担が少ない方法が多い
- 生理不順の治療は、低用量ピルやホルモン剤を用いた投薬治療が中心
まとめ
生理が来ない理由は、妊娠以外にも様々な要因が考えられます。
生理が来ない違和感があるだけで体調は良いと思っていても、実は何らかの病が潜んでいる可能性もあるでしょう。
生理が来なくなって2~3ヶ月経ったのであれば、婦人科の診察を受けることをおすすめします。
婦人科の診察は、女性にとって少々ハードルが高いと感じてしまうかもしれません。
医療法人心鹿会では、婦人科系の不安を抱えている女性にも、少しでも安心して受診していただけるような環境づくりをしています。
生理が来ずに不安を抱えている方は、ぜひ下記クリニックへご相談ください。