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スタッフブログ

2020.07.25

心斎橋院

自分の身体と上手に付き合うコツ②~主観的な病気について~

みなさん、こんにちは。

女性医療クリニックLUNA心斎橋 院長 二宮典子です。

前回は、『主観的な病気』って患者さんが病院受診するときに訴えるとっても一般的なことなのですが、診断・治療が難しいのです、という話をさせていただきました。では、早速です前回の続き

『主観的な病気』の難しさの本質『言葉の壁』についてお話しします。

言葉の壁って

①身体の感覚のあいまいさ

みなさんは、自分の身体の感覚を信じていますか?

当たり前だのクラッカーと思っている人、要注意ですよ。

以前から何回かお話ししているので、賢いあなたはお気づきだと思いますが、基本的に人間の体の感覚というのはとっても適当です

はっきり言って、ほぼ嘘といってもいいくらい。

特に私たちの分野です。私たちの分野とは女性泌尿器科です。そうです、排尿・性機能・外陰部の症状です。患者さんの表現はとても曖昧。不確定のデパートです。少し診療範囲を広げると、肛門や直腸の感覚・下腹部もそうではないでしょうか。

例えば、ウンチが出そうなのにでない、子宮が痛い、膀胱に尿が溜まっているのが不快、これらは全ての訴えは、患者さんの体の感覚から発せられる言葉ですが、それを事実と証明できるものは何一つありません。

診察をすると、こういった症状に関するものが、まったく違った場所に原因があったということはザラにあります。ウンチの感覚は緊張した骨盤底筋だったり、子宮と思っていたものは便秘がちの腸だったり、膀胱にたまった尿と思っていたものは外尿道の乾燥と炎症だったり…。数えればきりがありません。

そういった体感の曖昧さに気づいて診察が出来るなら良いのですが、実際は医者が患者さんの主訴を鵜呑みにしてしまうことが多く、言われた場所だけを検査するようになると、診断が非常に難しいものになることがあります。

②病名という言葉の鎖

身体の感覚を言葉にすることは難しいのですが、一方で、人は何かに所属したいと言う欲求があり、痛みなどの症状に悩まされている場合、何かしらの原因や病名が欲しいと感じます。

そのため事実とは異なっても、難しい病名をつけてもらうと、驚きや悲しみを感じる一方、所属できたことに安心してしまうことがあります。私はこれを一種の承認欲求だと思っています。

病名を誤診しても悪さをしないならよいのですが、自分は大変な病気だと思い込むことで、結果、最初に困っていた主訴がないがしろになったり、病名にこだわることで病名のついている臓器だけに焦点を当ててしまうことがよくあります。そうすると、治療が効かず、さらに悩ましい結果となることがあるのです。

こういったことは難治性疾患といわれる病気によく見られるような気がします。女性泌尿器科医が関わる病気では、例えば『難治性過活動膀胱』『間質性膀胱炎』『慢性骨盤痛症候群』『線維筋痛症』です。

言葉の壁を取り去る方法は

①医者編

私は哲学者でもないし、心理学者でもありませんので、これらのことが学問的にどうなのかにはあまり興味はありません。でも臨床医として感じることは、この言葉の魔力をいかにうまくコントロールして言葉の壁を取り去ることができるかが、よい医者の条件だと思うのです。

医者が言葉の壁を越えるのは、体系的な診察しかありません。患者さんの訴えは、気のせいではなく、何か原因があるけれど、その原因が自分に見えていないだけである、という信念のもとに、しっかりと全員に同じプロセスで質問や検査を遂行することです。

早道などはありません。皮膚から神経に至るまで、順番に。見逃しがないようにひとつずつ自分のパターンをこなしながら、患者さんの主訴をそこに落とし込んでいくという作業です。

②患者編

言葉の壁を超えるメリットは、もちろん患者さんにもあります。一番は、自分が感じた身体の感覚を無理にかっこいい言葉に置き換えようとしないことです。

病院で医者や看護師などに話をするときは、どんな人も多少の緊張があります。自分よりも専門性の高い人に話をするからです。

でも、そこでなぜか、自分の知っている最大限の医学的な単語を使用したがります。でも病名や臓器名は、それを発した瞬間から患者さんの身体の感覚からは離れたものになってしまいます。

そうではなくて、もっと『自分だけの』『生きた表現』を使って話をするようにしたほうがよいです。

ちなみに、私も専門性の高い優秀な人と話をするときは、バカと思われたくないという気持ちが無意識で働き、普段は使わないような言葉を、知りもしないのにしゃべってしまうことがあります。そんなもんです。

まとめ

ということで、今回お話しした内容は、一見とっつきにくい話に思えたと思いますが、一度それを体験すると、みんな納得、目からウロコになるようなものです。体験したい人で、オシモの症状に悩んでいる人は、是非女性医療クリニックLUNA心斎橋に受診してみてください。(宣伝もしっかり!)

医者の問診技術に関する技術は、20年くらい前?から『医療面接試験』OSCEオスキ―としてようやくカリキュラムにはいるようになりました。でも私からしたらそんなの糞です。(汚くてごめんなさい)

患者さんの話は大事。言っていることはちゃんと聞く。でもその基本スタイルのままでは問診技術は進歩しないし、時間はかかるし、誤診は増えまくりです(笑)

各診療科にあった医療問診・診察の技術がもっと進歩しても良いころなのではないかと思います。

では、最後までお読みいただきありがとうございました。次回からは、いつも通り、疾患などに関する話をしていこうと思います。

この記事の監修者
二宮 典子

医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し、院長就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。