みなさん おはようございます。
ここ何回か、過活動膀胱および神経因性膀胱についてのボツリヌス毒素についてご紹介していましたが、
そもそもボツリヌス毒素ってなんやねん?
って思っていらっしゃった人もいるようなので、今回はそのあたりをご説明していきますね。
ボツリヌス療法とは
ボツリヌス菌と毒素について
ボツリヌスというのは、菌の名前なんです。ボツリヌス菌というものがいます。(ざっくり)
ボツリヌス菌は普通に自然界にいますが、膀胱炎とか肺炎とかのおなじみの感染症でお目にかかるようなものではありません。
この菌、ボツリヌス菌というのは、毒素を作っています。ボツリヌス毒素というものです。
ボツリヌス毒素の中でもA型と呼ばれる毒素は、作用すると神経をマヒさせて筋肉を動かなくなるさせる、というスーパーとんでもない毒素です。でも微量であれば大人が口にしても分解するので死にはしません。
でも乳幼児には危険です。なので、ハチミツを赤ちゃんに食べさせたらダメというのは有名な話だと思いますが、これはこのボツリヌス毒素によるためです。
毒素の応用
さて、こんな作用、発見したのもすごいですが、これを医療に応用しようとしたもんだから、それもすごい!
筋肉をマヒさせるなんて、とんでもない毒を、いったい何につかえるかということになるのですが、そこは、「カシコ(注;大阪弁で賢い人という意味)」がちゃんとしてくれております。
ボツリヌス菌をそのまま使用すると危険極まりないので、カシコはボツリヌス毒素だけを薬で使用することにしました。しかも神経に作用する部分だけです。すごい!
神経に作用して筋肉が動かなくなるなんて、怖いって思うかもしれませんが、病気のなかには、神経がガンガンアクセル全開で、筋肉の収縮をし続けているのをコントロールできない困った病気もあるので
そういった病気に応用することになりました。ちゃんちゃん。
ボツリヌス毒素が使用される病気
現在、世界90以上の国がボツリヌス毒素を薬として使用しています。
また適応の病気は、まぶたや顔が勝手に痙攣(けいれん)してしまう病気や、首・手足が緊張しすぎるような病気に使用されています。
美容では、眉間のシワや小顔(エラを小さく)することに応用されています。
2019年12月から日本でも満を持し、過活動膀胱と神経因性膀胱の患者さんの難治性失禁の症状に対しての使用が保険適応になりました。
ボツリヌス療法、膀胱への作用
ボツリヌス毒素は先述の通り、神経に働きかけて筋肉の収縮を抑えます。
毒素は、注射で効果を発現したいところに直接打ち込む必要があるので、膀胱に対して行う場合は専用のカメラや針が必要となります。また、注射は膀胱の中でも注射が行いやすく安全な場所の中で20か所前後に行います。
注射が痛いかって?
痛いです。麻酔がないと痛みはあります。
ボツリヌス毒素そのものに刺激性があるので、細い針ではありますが、注射そのものの痛みに加え、毒素が注入される刺激の痛みもあります。
膀胱の膀胱ボツリヌス毒素注射の痛みの管理については、施設によって方法が違いますので、担当医に確認を行うと良いと思います。
ちなみに、その他の治療の場合で膀胱ではない場所に注射をうけた患者さんも痛みを訴えます。しかし、大抵の人については耐えられないようなつらいものではありません。
ビビらせることをたくさん書きましたが、慣れている先生であれば注射は10分くらいで終了しますので、処置そのものの身体の身体の負担は少ないと言えます。
ボツリヌス毒素の効果期間
この毒素、一生涯効果を保証してくれるものではなく、だいたい3か月くらいの期間でピークアウトします。この場合のピークアウトとは、徐々に効かなくなってくる、という意味です。
人に投与する段階で、菌ではなく毒素の作用成分だけになっているので、人間の体内で分解が進み、効果が失われていくためです。
せっかく痛い思いで注射をしたのに、と思われる人もいるかもしれませんが、私は逆に効果に限界があることに安全を感じます。
もし、注射が生涯ずっと効果が続いてしまうと、あまり望ましくない効果であった場合それが副作用として生涯のこることになりますし、また筋肉の衰えが年齢的に進んだ場合に薬の作用が逆に強すぎて、不利益が勝ってしまう可能性もあります。
なので、私は3か月のピークアウト、だいたい実感として半年から1年くらいの効果というのがちょうどいいかな、と思っています。
まとめ
いかがでしたか?
ボツリヌス毒素を理解いただけましたでしょうか?
毒素という名前で、怖いイメージが付きがちですが、決してそんなおぞましいものではありません。ちゃんと安全面も担保されているれっきとした薬です。
LUNA心斎橋では過活動膀胱の失禁に対するボツリヌス毒素注射が日帰りで可能です。
他院さまの治療では不十分なかたや、薬の副作用のため内服が継続困難な方など様々な患者さんからのご相談をいただいております。
ご興味がございましたら是非ご連絡くださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し、院長就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。