2025.10.20
「第44回産婦人科漢方研究会学術集会」にて二宮医師が発表を行いました。
2025年9月7日に開催された「第44回産婦人科漢方研究会学術集会」にて二宮医師が発表を行いました。
発表テーマ:
思春期の「朝起きられない」「PMS」に対する漢方的アプローチ
発表内容:
【症例】
14歳、女性。起床困難を主訴に母親と共に受診した。月経関連症状については月経不順とPMSを認めた。
朝の起床困難は月経期以外にも認められるが、特に月経前に症状が顕著となるようであった。月経不順は月経周期が3週〜2ヶ月と不順で、月経期間が1週間以上継続することにも困っていた。さらに、月経前にいつもよりイライラしていることを同居家族が気づいていた。
既往歴に特記すべきことはなく、舌診で白苔と湿潤を認め水毒が顕著。体質的には気虚・血虚を併せ持ち、自律神経失調を背景に持つと判断した。
治療は、平常時に苓桂朮甘湯と六君子湯を併用内服とし、水毒と気虚への対応を行った。月経期には血虚および瘀血傾向に対し当帰芍薬散を追加。運動習慣は十分にあったため、間食について栄養指導を行った。服薬開始から数カ月で、倦怠感や起床困難、腹痛・頭痛が徐々に軽減し、生活リズムと気分状態が安定。月経周期も徐々に整い、本人・家族ともに著しいQOLの改善を実感した。
【考察】
本症例は、PMS様の身体症状と起床困難、月経不順といった非特異的な訴えが主であった。漢方的には、思春期における「脾虚による水湿停滞」と「血虚体質」を基盤と捉えた。苓桂朮甘湯により脾陽を温めて水毒をさばき、六君子湯で気を補い中焦を立て直すことで心身の活性化を図った。さらに、当帰芍薬散により月経周期の正常化と血流改善を促した。
思春期の不定愁訴に対し、症状にとらわれず体質からのアプローチを行うことで、心身両面のバランスが整い良好な治療反応を得た。

医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し、院長就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。