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2020.08.25

心斎橋院

女性の天敵 更年期~セミナー報告第7弾~

みなさん、こんにちは。女性医療クリニックLUNA心斎橋 院長の二宮典子です。

8月1日の土曜日にサンケイリビングさん主催で「女性ホルモン」についてのウェブセミナーをさせていただきました。前回までのブログで、女子たちがどういったことに困っているのか、それぞれのお悩みに対する説明をさせていただきました。

前回までの復習

ゆらぎ世代の女子の悩みは

  • 1位 疲労
  • 2位 美容
  • 3位 月経関連
  • 4位 更年期
  • 5位 ダイエット

過去のブログで、疲労と美容、月経関連のトラブルについてすこしコメントやまとめをさせていただきました。ということで本日は第4位の更年期トラブルを、いつも通り、ざっくりざくざくまとめてみたいと思います。

更年期って結局なんなの?

女性といえば更年期!ちょっとイライラしたら

あーー、更年期だもんね

なんて言われちゃいますよね

更年期の医学的説明は、女性が閉経になる頃(およそ45歳から55歳)に卵巣機能が低下し、女性ホルモンの急激な分泌低下が起こる時期であり、そのホルモンの大きな変容のために、全身に不快な諸症状が生じること、とされているわけです。

理屈はわかった。でも結局のところ、更年期ってどう困るのよ??

って思いませんか?少なくとも私は、開業するまで、更年期ってどう困るのかよくわからないままでした。なんだか50歳くらいの女子はとってもやっかいな時期なんだ、くらいにしか考えていませんでした。でも、更年期ドンピシャの女性をたくさん診察していると、

更年期って、やっかいで大変だね

とか、そんな生優しいものではないことがわかったのです!少なくとも、効果があるといわれる治療を行っても、女子全員がすっきり元気、なんてそんなことはなかったわけです。

出し惜しみしても仕方ありません。簡単に説明します。私が思う更年期症状とは、ホルモンが暴走しまくるせいで、自分が自分ではなくなる状態です。

そんな大袈裟な!

と思いましたね。では早速どういうことか、具体的に説明していきます。

更年期症状のメカニズム

ということで、早速いきましょう。

以前から時々でてきますが、私たちの体を制御しているのは『自律神経』です。普段は自覚されることのない、影のフィクサーです。

この自律神経の制御に大きく関わってくるのが、ホルモンだったりします。神経とホルモンはそれぞれ刺激と抑制をしあうことで、体が大きな環境の変化に対応したり、逆に大きくない変化には暴走しないように制御したりするというわけです。なので、ホルモンの乱れは自律神経の乱れを生みます。自律神経が乱れること、それはつまり、自分の体の反応が自分で理解できなくなることなんです。

ということで更年期症状に悩む人の中でも自律神経症状が激しい人というのは、まるで『自分が自分ではない』ということを体感することになります。決して大袈裟ではありません。

さて、ホルモンの中でも、女性ホルモンは、卵巣・子宮・乳腺に働きかけ、妊娠・出産に関するホルモンと思われていますよね。しかし!おっとどっこい!実は生殖器以外の全身にも大きく関わっています。女性ホルモンは生殖に耐えうるだけのピチピチムチムチの若々しい逞しい体と、何人も子育てするのに耐えうる強い精神力を維持させることにも大きく貢献しています。

しかし、時の流れは残酷です。全ての人は老い、死んでゆくもの。ピチピチ女子もカスカス老婆になっていきます。その通過点として更年期があるわけです。

卵巣工場の廃業の話

(この部分は、生産ラインを抱えた中小企業のお話としてお楽しみください。)

卵巣工場が人気商品である女性ホルモンの製造を、急にしなくなりました。理由の一つは卵巣工場の作業員である卵子ちゃんが生理のたびにどんどんお嫁に行き、残りの人数が少なくなり、従業員が高齢化したことです。

卵巣工場に女性ホルモン生産を発注していた脳の下垂体細胞管理部はびっくりです。でも、このまま黙っていません。人気商品の女性ホルモンが急になくなったら、他の臓器から苦情が殺到してしまします。そこで、管理部は、今までの工場への発注は数件のメール(FSH)で伝達していましたが、急に大量のメールで、卵巣工場に女性ホルモンを生産するように指示するようになります。

卵巣の工場長はびっくりして、卵子作業員に働かせますが、メールの指示がいつもよりも多いので、それに見合ったように普段よりも多い女性ホルモンを作ってしまいます。それに気を良くした下垂体管理部は、メールを中止します。

メールが届かなくなった卵巣工場は、卵子従業員がヨボヨボなので、いつもよりも長く休憩をさせます。そこで、また管理部から女性ホルモンの受注がはいるのですが、疲れた卵子従業員はなかなか働きません。

すると、管理部はまたキーーーーーっと怒り出し、大量のメール攻撃をします。すると工場長がびっくりして、卵子作業人たちは少ない人数で疲労困憊になるまで働かされます

ところで、下垂体管理部って実は卵巣工場に指示を与えること以外にもたくさん仕事をしています。しかし、人気商品の女性ホルモンがうまく生産ラインにのらないので、その発注メールで手がいっぱいになって、他のホルモンへの細かい指令がおろそかになったりします。

こんなことが数年続くことで、女性ホルモンとそれに関わる他のホルモンが非常に不安定になり、自律神経が乱れまくることで起こる症状が更年期症状です

最終的に、卵巣工場は従業員の高齢化と後継不足で廃業になるのですが、その頃には、管理部はメールは自動発送に変えており、体全体もそのことに慣れて、あまり問題なく過ごせるようになっているのです。

いかがでしたか?更年期のときの卵巣工場の働きはわかっていただけたでしょうか?

しかし、老化というのは自然の摂理です。女性ホルモンがなくなってもそれに最終的には適応していくわけです。なので、更年期の数年を過ぎても調子が悪い状態が続いていて、それをずっと更年期のせいだと思っている人がときどきいらっしゃいますが、それはもはや更年期症状ではありません。自律神経失調症です。

代表的な更年期症状、または更年期以降に問題になる疾患

女性ホルモンやその周辺のホルモンがドタバタすることで、様々な症状が出現します。その症状は主に2つに分けられると思います。随時的な自律神経やホルモンの乱れと、ホルモン分泌低下による細胞老化による変化です。

自律神経やホルモンの乱れ

  • ・ホットフラッシュ
  • ・冷えのぼせ
  • ・肩こり
  • ・不眠
  • ・月経のトラブル
  • ・イライラ

ホルモン分泌低下による老化

  • ・皮膚のたるみ
  • ・声の低音化
  • ・排尿症状
  • ・腟症状
  • ・骨粗しょう症
  • ・代謝性疾患(糖尿病・高脂血症・高血圧など)

これらの症状のうち全てが解決できるわけではありませんが、更年期を迎える時にはこういったことが起こりやすいと知っておくと良いでしょう。

更年期症状への対策

最後に、更年期症状への対策として主なものをご紹介します。

ホルモン補充

すべての元凶は卵巣が女性ホルモンをスムースに出せないことでしたよね。脳の下垂体細胞管理部が、むちゃくちゃに怒らない程度に、体外から商品を取り寄せてしまおうという考え方がホルモン補充です。

ホルモン補充は、医療保険で治療ができます(主に40台から50台の女性)。貼り薬・塗り薬・飲み薬などが主流です。昔は注射もされていたようです。

ホルモン補充の注意は、補充の目標は決して若年女性のホルモンの数値ではないということです。いずれみんな女性ホルモンはなくなるものなのです。そして、女性ホルモンをガンガン補充しても、改善しないものは改善しませんとっとと諦めて他の方法を取り入れましょう。

ホルモン補充をしすぎて高い数値が続くと、子宮癌や乳癌になる人が頻発すると思われます。そんなに高くなければ心配はいりません。

とはいっても、定期的な検査が必要なことはいうまでもないです。特に家族歴(血のつながった女性の親族に子宮癌や乳癌の人がいるということ)がある人はしっかりと検査をするようにしてください。

漢方薬

漢方はホルモンを増やすことはありませんが、乱れに乱れまくった自律神経を安定させるのを助けていると思われます。

思われます、と書いたのは、自律神経が漢方で調整できるという直接的な働きはありませんし、薬の特性上、全ての人に同じ薬で同じような効果をもたらすことができないからです。

とはいえ、更年期女子に私がよく処方して、わりとよく効くと思う漢方をいくつかご紹介します。

温清飲(うんせいいん)

更年期といったらこれ、というくらいよく効きます。体の中を潤し、表面を冷やすと考えられています。なので、ホットフラッシュや不眠、更年期女性の肌荒れなんかにも処方することが多いです。

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

更年期ではなくても、処方することが多い処方です。更年期で不眠になってしまったり、更年期の症状を悪化させてしまうストレスを和らげてくれるのを期待して処方します。陳皮半夏をいれるのは、更年期の女性はわりと繊細で胃腸障害を隠し持っている人が多いことと、知らず知らず、コーヒーなどの刺激の強い飲み物を多飲する傾向の人が多いからです。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

イライラしたらコレ、といわれるほどとっても有名な漢方ですが、更年期のイライラにもよく効きます。50台よりも30〜40代の女子に効果を感じていますが、自分でもよくわからない不安定な神経状態のときは使ってみる価値があると思います。

その他にもその人に合わせた漢方で組み合わせは何百通りとあります。

その他の治療

プラセンタ注射

女性ホルモン補充・漢方以外の病院で行う治療は、プラセンタの注射です。現在日本で使用されている医療用のプラセンタは、人間の胎盤から抽出して製品になっています。

さすがに、1回投与しただけで症状が完璧に治る人はいませんので、過度な期待は禁物ですが、定期的に通院できる人には良いと思います。注射をしている人は、週1回くらいのペースの人で続けている人が多いです。

プラセンタは、ホルモンではありませんので子宮癌や乳癌のリスクは上昇しません。しかし、人間の胎盤由来なので、今わかっていないような未知のウィルスに感染するリスクがゼロではないことと、献血ができなくなることは知っておく必要があります。

サプリメント

今回のセミナーでもご紹介したエクオールなどが代表的ですね。サプリメントも、プラセンタ注射同様、直接ホルモンを補充したりはしませんが、更年期の症状の原因である自律神経の乱れを改善する役割を持つものが多く、自分にあったサプリメントを定期的に摂取することは良いことだと思います。

まずは3ヶ月くらい続けてみて効果が感じられるか試してみると良いと思います。

生活習慣

実はコレが一番大切かも(笑)

生活習慣の中でオススメは運動です。筋肉をしっかり動かし、汗をかくことで、乱れた自律神経を整えたり、発汗を正常化させたり、情緒不安になってしまうことを抑えたり、程よく疲労することで安眠につながったり。

というか、むしろ定期的な運動習慣がないのに、病院で薬だけもらって治したいとか言っちゃう人、私嫌いです。笑。ちゃんと自分で自分の体を管理すること

その他にも、ストレスをためないとか、規則正しく毎日を過ごすとか、食事も気を付けるとか、ごくごく当たり前のみんなが知っている健康方法というのが、実は更年期症状の緩和にも大切なのです。

当たり前だけど、ちゃんとしようと思うと、とっても難しい。でも全ては自分自身の健康のためです。ぜひ生活習慣の見直しと改善をやってみてください。

更年期まとめ

いかがでしたか?

更年期に対する考え方や治療も日々変化してきています。もしかしたら10年後は今とは違った治療方法が主流になっているかもしれませんね。

自分でも努力をしながら、でも快適に過ごせるように上手にかかりつけの婦人科の先生と相談をしていきましょう!

みなさんが生き生きと輝いて毎日を過ごせるお手伝いをこれからもしていきたいと思っています。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修者
二宮 典子

医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し、院長就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。