みなさんこんにちは。
二宮レディースクリニック院長の二宮典子です。
本日も先日に引き続き、膀胱ボツリヌス毒素注射についてです。
治療についての詳細はこちら⇨
新型コロナウィルス感染拡大のため外出規制がかかったときに、スーパーマーケットからトイレットペーパーがなくなりましたよね。
頻尿や失禁の人はとっても困ったようです。
この手術を受けていただいた患者さんからは、
急いでトイレに行かなくても漏れなくなったし、1日のトイレに行く回数が減ったので、トイレットペーパーの使う量が減った。緊急事態の前にやっておいてよかったという感想をいただきました。
そんな風に言っていただけると、こちらもとても嬉しいです。
トイレはどんな人でも1日に何度かお世話になることですから、それが快適になることはとても大切ですよね。
本日のお話は、手術ってどんな感じでしているか、手術風景をご覧いただこうと思います。今から手術を受けるか悩んでいる方にも参考になると思います。
既にLUNA心斎橋で手術を受けた患者さんも、『あぁ、こんな風だったんだ』と思ってくださるといいかなと思います。
①膀胱鏡挿入まで
まず、どんな手術も最初は消毒からです。
手術野(今回は陰部なので尿道周辺)に消毒を行います。
その後、清潔野を確保するために覆布(おいふ)をかけます。LUNA心斎橋では使い捨ての清潔な穴あき覆布というものを使用しています。
病院によって、清潔覆布の種類が違うこともあります。
術野が完成したら、清潔操作で尿道にカテーテルを挿入し、膀胱の中に残っている尿を出します。手術室に入っていただく前にトイレを済ませていただきますので、あまり残っていない患者さんが多いですが、病気の種類によってはしっかりと出せていないこともあるので必ず行います。
病院によっては、この操作のあとに局所麻酔の薬液を注入します(一般的には2~4%のキシロカインを20ml程度注入することが多いです。
次に膀胱鏡、A型ボツリヌス毒素、膀胱鏡用の穿刺針を準備します。
②膀胱鏡挿入
いよいよ膀胱鏡の挿入です。
麻酔を膀胱内に注入した病院では、膀胱鏡挿入の前にいれておいた薬液を再度カテーテルを使用して排出してから膀胱鏡を挿入します。
膀胱鏡を挿入したら、生理食塩水で膀胱内を満たしていきます。およそ100-200mlくらいまで注水します。
入れる量の目安は、膀胱の粘膜の壁がしっかりと進展して、ダルダルしていない状態を目安にしています。あまり、ピンと張りつめていると、針を穿刺したときに膀胱の外まででてしまうことがあるので、生理食塩水の入れすぎには注意です。
丁度良いくらいに広がったら、膀胱の中全体を観察します。
膀胱の観察は、三角部、後壁、左右の側壁、頂部、前壁、内尿道口周辺、それに両側の尿管口を順番に確認します。
観察は非常に重要です。もしこの観察で、膀胱の中に異物があったり、腫瘍があったり、尿管口から血尿が確認された場合は、ボツリヌス毒素注射の手術を行わないことがあります。
問題なければ、いったん膀胱鏡を抜きます。
③薬液注射
いよいよ薬液の注射です。
膀胱鏡に膀胱鏡用の穿刺針を挿入します。
(使用する針がボーニーの場合、ここで針のキャップをとります。インジェタックの場合は針が思うように操作できるか出して確認し、再度ひっこめておきます。)
針が、身体の外で、膀胱鏡をスムースに動くか少し前後に動かして確認をします。下の写真はインジェタックの針です。
問題なければ膀胱鏡から針がぎりぎり見えないくらいまでひっこめた状態で、膀胱鏡を患者さんへ挿入します。
広い視野で膀胱鏡から針をゆっくり出して、針先の位置を確認します。画面の4分の1くらいの位置で針が見えるとやりやすいです。
針にボツリヌス毒素の薬液のはいったシリンジを接続し、しっかりとロックを回します。介助者にシリンジをゆっくり押してもらって、針の内部にある空気を抜きます。
画面上にある黒い棒が針の先端です。周りに気泡がでていますね。
気泡がでなくなったら準備完了です!
あとは、後壁の下のほうから順番にテンポよく膀胱粘膜に針を刺して、0.5mlずつ薬液を注入するだけです。20回ほど穿刺します。
下の方から注射する理由としては、もし、出血が起こっても、下の方であれば視野が確保できるので(出血によって画面が見えなくなることが少ない)ので、下から上に順番に注射していきます。
注射が始まれば、だいたい5-10分くらいですべて打ち終わります。
最後まで注射が終われば、膀胱鏡をまっすぐにして、そっと膀胱から抜き去ります。ボーニーの針を使用している時は、はさみで針先だけカットして残りの部分を抜き出します。
処置後は、薬液が付いた器具をハイターにつけて、終了です。
④まとめ
膀胱内のA型ボツリヌス毒素の注射について、実際にどのように行うのかをご紹介しました。
やっている時間は長くはありませんが、しっかりと安全を確認しながら行う必要があります。
軟性膀胱鏡の手技に慣れている先生であれば、上手にやってくれると思いますので、興味のあるかたは、ぜひ担当の泌尿器科の先生に一度聞いてみてくださいね。
二宮レディースクリニックでは、尿失禁のある過活動膀胱に対するA型ボツリヌス毒素注射の施術を日帰りで行うことができます。
3割負担の患者さんでおよそ5万円の自己負担になります。
手術適応には主治医の診察と診断が必須となります。頻尿・尿漏れでお悩みの方は、ひとりで悩まずに、ぜひお気軽にご相談くださいね。
医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し、院長就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。