おりものは女性にとって身近なものですが、急に量が多くなると不安を感じます。
おりものの量が多くなったからといって必ずしも病気だとは限りませんが、痛みやかゆみ、発熱といった症状が出ている場合は注意が必要です。
ここでは、おりものの量が多い場合に考えられる原因やクリニックを受診する目安について解説します。
「おりもの」とは?
そもそも「おりもの」とは、何なのでしょうか。まずは、おりものの正体や役割といった基礎知識をご紹介します。
おりものの正体
おりものとは、腟や子宮から排出された分泌物が混ざり合ったもののことで、その名の通り、女性の体から「下りる物」を指します。
量や状態に個人差はあるものの、女性なら誰にでも出るものであり、おりものが出ること自体に問題はありません。
健康なおりものは白っぽく半透明で、乾くと黄色か褐色になります。
においはほとんどありませんが、やや甘酸っぱいおいがすることもあるでしょう。
おりものは「女性の健康のバロメーター」とも呼ばれていて、体の変化や体調を判断することが可能です。
普段から色やにおい、形状に注目して、変化がないかチェックしておくと良いでしょう。
おりものの役割
おりものの役割は、主に以下の3つです。
・自浄作用
・スムーズな性交(セックス)
・受精のサポート
正常なおりものは腟内を酸性に保ち、適度に潤すことで大腸菌やカンジダ真菌などの雑菌の繁殖を抑えています。
おりものは、感染症にかからないよう「自浄作用で体を守る役割」を持っているのです。
また、おりものは妊娠するために必要な「性交」や「受精をサポートする役割」も持ちます。
妊娠するためには性交をする必要がありますが、乾いた状態の腟ではスムーズに男性器の挿入ができないばかりか、女性器を傷つけてしまいかねません。
おりものによって腟がほどよく湿潤していることで、性的な刺激が不快ではなくなります。
また、性行為中には、おりものの分泌量が増えることで射精するまでのピストン運動をスムーズにする役割を担っています。
射精後は、腟内に入って来た精子が子宮へと進みやすいように受精をサポートして、妊娠しやすくしてくれるのです。
おりものの量が多くなる原因
普段何気なく目にしているおりものですが、急に量が増えると不安になってしまいます。おりものの量が多くなった場合に考えられる原因を4つご紹介します。
①生理周期
おりものは、生理周期に合わせて変化します。量の増減はもちろん、色やにおいといった状態も変化するのです。
生理周期は「卵胞期」、「排卵期」、「黄体期」、「生理期」の4つの段階に分かれます。
・卵胞期
卵胞期のおりものは、サラサラとしていて量も少ないのが特徴です。生理の直後であれば、血が混ざって茶色に見えることもあるでしょう。卵胞期の前半はおりものの量は少なめですが、後半にかけて増えていく傾向にあります。
・排卵期
月経開始から14日程度経つ頃には、排卵が起こります。この頃が一月の中で最もおりものの量が多い時期にあたり、卵の白身のように透明でとろみがあるのが特徴です。精子が子宮へスムーズに進めるようサポートします。
・黄体期
排卵期が終わり黄体期に入ると、おりものの量は減少します。粘り気がありベタベタとしていて、白く濁っているのが特徴です。下着やおりものシート(パンティライナー)に付着してしばらく経つと、おりものが酸化してクリーム色や黄色に見えることもあります。
・生理期
生理前になると、再びおりものの量が増え始めます。粘り気があり白く濁っているのが特徴で、においを強く感じることもあるでしょう。生理が始まる直前には、経血が混ざっておりものがピンク色や茶色に見えることがあります。
②年齢
おりものは、生理周期だけでなく年齢によっても変化します。
おりものの量は「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌量と比例しているため、年代によって変わるエストロゲンの分泌量にも注目する必要があります。
・10代
おりものの量は初潮を迎えると増える傾向にありますが、エストロゲンの分泌がまだ安定しないため、おりものの量も不安定に増減します。
・20~30代
20代後半~30代前半はエストロゲンの分泌量が最も多く、おりものの量も増加します。特に30代を迎える頃がピークであり、30代後半にかけて減っていく傾向にあります。
・40代
40代に入るとエストロゲンの分泌量が減少するため、おりものの量も減少します。生理が安定しなくなるといった体の変化が現れることもあります。
・更年期・閉経後
更年期(閉経の前後5年程度)に入るとエストロゲンの分泌量が急激に減少するため、おりものの量も一気に少なくなります。閉経後2~3年程度経つと、ほとんど出なくなります。
③妊娠
妊娠をすると、お腹の赤ちゃんを細菌から守るためにおりものの量が多くなります。
通常は、排卵期を過ぎるとエストロゲンの分泌量が減少しておりものの量も減る傾向にあります。
しかし、妊娠中はエストロゲンの分泌量は減少しないため、黄体期に入ってもおりものの量が減らない方も少なくありません。
排卵期以降もおりものの量が変わらず、さらに生理予定日を過ぎても生理が始まらない場合は、妊娠している可能性があります。
生理予定日の一週間後に、妊娠検査薬を使用してチェックしてみましょう。
④病気
生理周期や年齢、妊娠など、おりものの量が増えても問題ないケースがある一方で、病気のように深刻な問題が発生しているケースもあります。
量が増加したというだけでなく、おりものの色やにおい、形状が変わったと感じた場合は、何らかの病気を発症している可能性があるため注意が必要です。
痛みやかゆみ、発熱といった症状が現れている場合は、早急にクリニックを受診してください。
まとめ
- 生理周期や年齢によって、おりものの量が増えることがある。
- 妊娠中は、生理周期に関係なくおりものの量が増えることがある。
- おりものの量が増えるだけでなく、色やにおい、形状が変わった場合は、病気の可能性がある。
おりものの正常な量はどのくらい?
正常だと思っていても、実は人よりもおりものの量が多いということもあります。
おりものの量がどの程度であれば、正常な範囲内だといえるのでしょうか。
健康状態であれば、おりものが全く出ないということはありません。どのタイミングであっても、多少なりともおりものは出るものです。
おりものの量が気になる場合は、まずはおりものシート(パンティライナー)を使用してチェックしてみましょう。
おりものシートをあてれば問題なく一日を過ごせる場合は、正常な範囲内だといえます。
おりものシートでは間に合わず、生理用ナプキンを使用しなければ間に合わない。一日に何度もおりものシートを交換しなければ間に合わない場合は、量が多いということになりますます。
体に何らかの異常が起こっている可能性があるので、クリニックに相談しましょう。
おりものの量が多いのは危険?注意したい体の変化
おりものの量が人よりも多いと気付いても、危険なのか否かの判断は難しいものです。体に以下の変化がみられた場合は、早急にクリニックを受診してください。
生理周期に関係なく大量のおりものが出る
生理周期によって一時的におりものの量が増えているのであれば、問題ありません。
しかし、黄体期のようにおりものの量が少ない時期に大量に出るという場合には、注意が必要です。
おりものは、「細菌の侵入を防いで感染症から体を守る」という大切な役割を持ちます。
おりものの自浄作用に異常があるということは、すでに体に何らかの問題が起こっているというサインです。
病気を発症している可能性もあるので、クリニックを受診してください。
年齢に関係なく大量のおりものが出る
8~9歳頃からエストロゲンの分泌が始まり、卵巣や子宮が発達します。
この頃から白色や黄色のおりものが出るようになり、やがて初潮を迎えるのです。
個人差はありますが、初潮前におりものが多くなった場合には、体に何かしらの問題が起こっている可能性があります。
また、エストロゲンの分泌量が減少する更年期・閉経後におりものの量が増えた場合にも、体に何かしらのトラブルが起こっていると考えられます。
初潮前や更年期・閉経後におりものが大量に出る場合は、クリニックで医師に相談しましょう。
おりものの色やにおいも変化した
おりものの量が多いだけでなく、おりものの色やにおいが普段とは異なる場合は、病気を発症している可能性があります。
健康的なおりものは白色や透明であり、下着やおりものシートに付着して乾燥すると、黄色に見えることがあります。
生理前後には、経血が混ざってピンク色や茶色に見えることもありますが、生理のタイミング以外で同様のおりものが見られる場合は注意が必要です。
ピンク色や茶色のおりものが長く続くと、病気だけでなく流産の可能性もあります。
また、黄緑色のように明らかに普段と違う色のおりものが出た場合は、病気の可能性が高いといえます。早急にクリニックに相談してください。
おりもののにおいには個人差がありますが、無臭や甘酸っぱいにおいであれば問題ありません。
しかし、魚が腐ったような生臭いにおいや不快な悪臭がする場合は、病気を疑いましょう。
痛み・かゆみ・発熱がある
おりものの量が多い上に体調にも変化が現れた場合は、病気を発症している可能性があります。
下腹部が痛む、外陰部に痛みやかゆみがある、発熱や倦怠感があるという方は、我慢できるからと見過ごさずに病気を疑いましょう。
性交時や排尿時といった、一時的な痛みにも注意が必要です。
重大な病気を発症していたとしても、自覚症状がないこともあります。
体の少しの変化も見逃さずに、気になる症状についてはクリニックで医師に相談してください。
まとめ
- 生理周期や年齢に関係なく大量のおりものが出る場合は、体に問題が起こっている可能性がある。
- おりものの量が増えるだけでなく色やにおいにも変化があった場合は、病気の可能性がある。
- おりものの量が増えるだけでなく痛みやかゆみ、発熱を伴う場合は、病気の可能性がある。
おりものの量が多くなる病気
病気が原因でおりものの量が増えることもあります。考えられる病気と、それぞれの特徴をご紹介します。
性器クラミジア感染症
排卵期ではないのに、サラサラとした水っぽいおりものが大量に出る。おりものの色が黄色や黄緑色がかっているという場合は、「性器クラミジア感染症」の疑いがあります。
クラミジア・トラコマチスという病原体が原因で起こる性器クラミジア感染症は、日本で最も多い性感染症です。
無症状、または症状が軽度で感染に気付きにくいですが、排尿時や性交時に痛みを感じることがあります。
放置してしまうと発熱や腹膜炎を起こし、異所性妊娠(子宮外妊娠)や不妊の原因にもなるため、早急に治療が必要です。
性器クラミジア感染症と診断された場合、すでにパートナーにうつっている可能性があるので、パートナーも同時に検査を受けることをおすすめします。
尖圭コンジローマ
おりものの量が多くなり、さらに性器周辺に突起物(イボ)ができている場合は、「尖圭(せんけい)コンジローマ」の疑いがあります。
尖圭コンジローマは主に性行為が原因で発症する病気で、ヒトパピローマウイルスに感染することでイボができます。
尖圭コンジローマの潜伏期間は3週間〜6ヶ月程度と長く、痛みやかゆみといった症状が出ないケースも多いため、イボが大きくならなければ気付けない方も少なくありません。
イボの形は「鶏冠(とさか)状」や「カリフラワー状」で、硬くザラザラしているのが特徴です。
無症状であるケースが多いものの、イボが急激に成長した場合は、痛みやかゆみ、出血が起こることがあります。
腟トリコモナス症
おりものの量が多くなり、さらに生臭いような不快な悪臭を伴う場合は「腟トリコモナス症」の疑いがあります。
腟トリコモナス症を発症すると、においの他にも、おりものが泡状になったりクリーム色や黄色、黄緑色になったりします。また、強いかゆみが起こることもあるでしょう。
腟トリコモナス症は、トリコモナス原虫によって発症する感染症です。
トリコモナス原虫が腟内に入り込むことで、腟の発赤や陰部のかゆみ、圧痛や性交痛を引き起こすのです。
性交によって感染するケースが多いですが、タオルの共有や浴槽・便座を介して感染することもあります。
腟カンジダ症
量が増えただけでなく、おりものの状態も変わったという場合は「腟カンジダ症」の疑いがあります。
以下のようなおりものが出る場合は、特に注意が必要です。
・ヨーグルト状
・クリーム状
・カッテージチーズ状
・酒粕状
上記のようなおりものの変化の他にも、腟カンジダ症の場合は、腟やデリケートゾーンにかゆみや灼熱感、ズキズキとした痛みが現れることもあります。
腟カンジダ症は、女性の腟内に常在しているカンジダ菌が、免疫機能の低下や通気性の良くない下着の着用など、何らかのきっかけで増殖した場合に発症する病気です。
腟カンジダ症に感染した場合は、婦人科や産婦人科を受診しましょう。
感染の恐れがあるため、完治するまではパートナーとの性行為は控えてください。
悪性疾患、その他の疾患
おりもの量が、命に係わる病気のために増えることもあります。
子宮癌のために子宮の炎症が生じている場合、悪臭を伴うおりものが増えたり、出血がまじったおりものが続いたりする場合があります。
さらに、子宮の近くにある膀胱癌や大腸癌が子宮や腟のほうに進行している場合も同様に、変化の強いおりものが増えることがあります。
その他、非常にまれですが、手術や事故などの後に腟と別の臓器が交わってしまうことがあり、その場合は腟から尿や腹水、腸液(便)などがでてくることがあります。
おりものの性状があまりにも普段と異なるときには、命に係わる病気の可能性もあるため、恥ずかしがらずに医療機関を受診しましょう。
おりものの量が気になる方は二宮レディースクリニックへご相談ください
生理周期や年齢、妊娠など、おりものが多くなる原因は様々ですが、病気のように危険が潜んでいることもあります。
痛みやかゆみ、発熱などの体の変化がみられた場合は、早急にクリニックを受診しましょう。
おりものに関するお悩みは、二宮レディースクリニックへご相談ください。
原因を突き止めた上で、患者様に最適な治療をご提案します。