生理痛の度合いには個人差がありますが、腹痛や頭痛など、誰もが一度は辛い経験をしたことがあるのではないでしょうか。
以前は大したことがなかったのに、生理痛がひどくなったという方もいるかもしれません。
今回は、生理痛が起こる原因や痛みを和らげる方法、病気の見分け方について解説します。
クリニックで行われている主な治療方法もご紹介しますので、辛い生理痛に悩まされているという方はぜひ参考にしてください。
生理痛の原因は「月経困難症」?
生理痛の原因が必ずしも病気だというわけではありませんが、日常生活に支障をきたすほどのひどい症状が出ている場合を「月経困難症」といいます。
月経困難症は、主に2つのタイプに分かれます。それぞれの特徴をご紹介しましょう。
機能性月経困難症
「機能性月経困難症」は、体に問題となる原因疾患がない場合でも症状が現れます。原因疾患がないことから「原発性月経困難症」とも呼ばれています。
初潮(初経)を迎えた2~3年後から起こることも特徴です。
発症は思春期の女性に多く、月経困難症を訴える方の4割以上が機能性月経困難症に分類されます。
生理時には、経血を子宮外に排出するために、子宮を収縮させる「プロスタグランジン」という物質が分泌されます。
このプロスタグランジンが過剰に分泌されることで子宮が収縮し過ぎてしまい、機能性月経困難症が起こるのです。
機能性月経困難症が思春期の女性に多くみられるのは、子宮頸管(けいかん)が狭く硬いために経血がスムーズに排出できないことも原因だといわれています。
器質性月経困難症
「器質性月経困難症」は、体に問題となる原因疾患がある場合に症状が現れます。原因疾患に続いて起こることから「続発性月経困難症」とも呼ばれています。
初潮(初経)後、5年以上が経過してから発症することが多いです。
原因となる疾患には、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症(せんきんしょう)があり、生理中以外にも症状が現れることがあります。
原因疾患を治療すると症状が改善するというのも特徴の一つです。
月経困難症以外で考えられる生理痛の原因
生理痛は、病気以外の原因によっても引き起こされます。月経困難症以外で考えられる生理痛の原因をいくつかご紹介します。
冷えによる血行不良
生理が始まると、体温が下がります。プロスタグランジンの働きによって血管が収縮するため、血流が滞りやすく、体が冷えやすい状態になります。
体が冷えるとさらに血行が悪くなり、腹痛や腰痛、頭痛などを引き起こすのです。
生理痛を悪化させないためにも、内外から体を冷やし過ぎないようにしましょう。
特に下腹部や腰回りを冷やさないようにすることが大切です。
心身のストレス
生理痛とストレスは、一見無関係のようにも思えますが、実は生理痛を引き起こす原因にはストレスも挙げられます。
ストレスは、ホルモンや自律神経のバランスを乱れさせます。
ストレスが過度にかかると自律神経の中の交感神経が強く働くことで、手足などの血管が収縮するため、体が冷えているように感じやすくなるという点も特徴です。
生理期間中はもちろん、普段から寝不足や過度なストレスの負荷は避けるようにしましょう。
仕事での緊張をプライベートな時間に持ち込まないことを意識することで、ストレスと上手く付き合うことができます。
プライベートの時間は、好きな趣味などに没頭することでストレスを発散させ、心身ともにストレスを貯めない生活を心がけてください。
子宮の出口が狭い
まだ成長途中にある10代の女性は、子宮の出口にある「頸管部」が未発達のため狭く硬く、生理の経血をスムーズに排出できないことがあります。
生理の時は子宮が収縮して経血を押し出そうとするのですが、頸管を上手く通ることができないと、子宮が強く収縮して経血を押し出そうとしていることを下腹部の痛みとして感じます。
10代の若い女性や出産経験のない女性に多くみられる傾向にあり、重い生理痛に悩まされる方も少なくありません。
出産を経験すれば、子宮口が柔らかくなったり短くなったりして、生理のときの経血が頸管を通過しやすくなることで、子宮が収縮するときに感じられる腹痛が改善されることがありますが、必ずしもすべての女性に共通していえることではありません。
生理痛が辛い場合は、クリニックに相談してください。
まとめ
- 生理が始まると体温が下がり、体が冷えることで血行が悪くなって腹痛や腰痛、頭痛などが起こる。
- ストレスで手足の血管が収縮すると、体が冷えているように感じやすくなる。
- 子宮の出口が狭いと経血が排出しにくいため、子宮が強く収縮して下腹部に痛みを起こす。
生理痛の主な症状
体の不調を感じているものの、生理痛なのか否かが判断できないという方もいるでしょう。ここでは、生理痛の主な症状をいくつかご紹介します。
腹痛・腰痛
生理痛と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、「腹痛」や「腰痛」ではないでしょうか。
上述した通り、生理前には子宮収縮作用を持つ「プロスタグランジン」という物質が分泌されます。
プロスタグランジンは、子宮を収縮させて経血を体外に排出するという大切な役割を持ちますが、同時に痛みや腫れ、発熱を誘発するという特徴も持ちます。
また、子宮周辺の血管が収縮して血流が悪くなることで痛みやだるさが引き起こされ、生理前や生理中には腹痛や腰痛が起こるのです。
頭痛
「頭痛」も生理前や生理中に現れやすい体の変化の一つです。
生理中に起こる頭痛は「月経関連片頭痛」と呼ばれていて、通常の片頭痛よりも痛みが強く、長引く傾向にあります。
女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は脳血管を拡張させる働きを持っていますが、月経前や月経中はエストロゲンの分泌量が減少し、脳への血流量が調整しづらくなることで片頭痛が起こると考えられています。
吐き気
生理中には、下腹部だけでなく胃にも変化を感じる方もいるでしょう。
「吐き気」や「胃のムカつき」といった症状もまた、生理痛の一つです。
生理中に起こる胃の不調は、腹痛や腰痛と同じく「プロスタグランジン」の分泌が原因で起こります。
プロスタグランジンは、子宮だけでなく胃や腸管を収縮する作用も持つため、過剰なホルモンの分泌が吐き気や胃のムカつきを引き起こすのです。
貧血
生理中には、めまいや立ちくらみといった「貧血」の症状も起こります。
医学用語の貧血とは、血中のヘモグロビン値が低下していることを指しますが、『生理中で朝礼中に貧血で倒れた』といった場合の貧血は、医学用語の貧血とは異なった状態を指しています。
一般的に使われているいわゆる貧血は、「脳への血流が一時的に減少した状態」です。
起立性障害や自律神経失調症の一つであり、生理によってホルモンバランスが乱れることで自律神経にも乱れが生じ、脳への血流が一時的に減少するのです。
経血量が多い場合は、医学用語の貧血と同様の「鉄欠乏性貧血」が起こっている可能性があるため、鉄分不足にも注意が必要です。
イライラ・気分の落ち込み
生理前や生理中には「イライラ」や「気分の落ち込み」も起こりますが、単なる気持ちの問題ではなく、女性ホルモンである「エストロゲン」が関係しています。
生理前になると、エストロゲンが減少します。エストロゲンには心身をリラックスさせる作用があるため、減少することで些細なことでイライラしてしまったり、気分が落ち込みやすくなったりするのです。
心が安定しないからと自身を責めずに、生理痛の一つだと受け止めましょう。
自宅でできる!生理痛を和らげる方法
生理痛は、セルフケアである程度緩和できる可能性があります。ここでは、生理痛を和らげる方法を6つご紹介します。
自宅でできる簡単な方法ですので、生理痛を少しでも和らげたいという方はぜひ試してみてください。
①体を温める
生理中にはプロスタグランジンの作用で体が冷えやすくなり、腹痛や腰痛を引き起こすとご紹介しました。
腹痛や腰痛を和らげるためには、体を温めることが効果的です。
特に冷えやすい下腹部や腰回り、背中は、腹巻やブランケット、カイロなどのアイテムを使用して重点的に温めてください。
血行が悪くなる締め付けの強いベルトやスキニータイプのパンツは避けて、緩めのボトムスやワンピースを選ぶなど、服装にも注意が必要です。
普段の入浴はシャワーで済ませているという方は、湯船に浸かってしっかりと温まりましょう。
全身を温めることができる上に、リラックス効果も得られます。
ただし、暑がりの方は、無理に温めることで逆に辛くなることもあります。
上半身を無理に温めることで気分が悪くなる方は、腰から下だけの半身浴や足湯を試してみましょう。
無理のない範囲で、自身の体質に合った方法を探してください。
②食べ物・飲み物を選ぶ
生理中は、血行を促進する効果が期待できる食材を口にしてください。
具体的には、鉄分を多く含むレバーや赤身肉、ホウレン草といった食材がおすすめです。
また、EPAには子宮の過剰な収縮を抑制する効果が期待できるため、サバやマグロといった青魚を積極的に口にしても良いでしょう。
イライラや気分の落ち込みがひどいという方には、大豆食品や海藻がおすすめです。
糖質(特に精製糖)を多く含む食べ物や小麦、乳製品を控えると、生理痛の緩和やイライラの改善が期待できます。
飲み物を口にする際には、カフェインを含むものは避けましょう。
カフェインには血管を収縮させる作用があるため、コーヒーや紅茶、緑茶といった飲み物を口にすると、生理痛が悪化する恐れがあります。
また、普段冷たいものばかり飲んでいるという方は、ハーブティーやホットココアといった温かいものを飲んでください。
体を温める効果が期待できる生姜を積極的に口にするのもおすすめです。
③適度な運動を取り入れる
生理中は極力動きたくないものですが、血行を促進させるために適度に体を動かすことも大切です。
長時間同じ姿勢でいると、骨盤周りの血流が滞って生理痛が悪化する恐れもあるので、無理のない範囲で体を動かしましょう。
生理中には、心地良い疲労を感じる程度の運動やストレッチがおすすめです。
ウォーキングやヨガを取り入れて、心も体もリフレッシュしましょう。
有酸素運動やストレッチを行うと、血行が促進されるだけでなく体温を上げる効果も期待できます。
あまりに体がだるい、貧血の症状が出ているといった時には無理に体を動かす必要はありませんが、体調や気分が良い時には体を動かしてみてください。
④生理痛に効くツボを刺激する
生理痛を和らげるには、ツボ押しも効果的です。深く息を吐きながら3~5回、指でツボを刺激してみましょう。
痛みを感じるほど押したり何度も繰り返し押したりすると、炎症を起こすことがあります。気持ち良いと感じる範囲で適度に刺激してください。
生理痛の緩和効果が期待できるツボを、3つご紹介します。
・三陰交(さんいんこう)
三陰交は、内くるぶしの出っ張っている骨から指4本分上の場所にあるツボです。全身の血行を促し、冷えやむくみの改善効果が期待できます。片足ずつ、3秒押して3秒離すことを繰り返しましょう。
・気海(きかい)
気海は、おへそから指2本分下の場所にあるツボです。生理不順を改善する効果があるといわれているツボで、下半身の冷え改善や腹痛・腰痛の緩和が期待できます。指の腹で10~20秒間優しく押してください。
・合谷(ごうこく)
合谷は、親指と人差し指の間のくぼみにあるツボです。生理痛だけでなく頭痛や肩こり改善にも効果が期待できるため、「万能のツボ」とも呼ばれています。気持ち良いと感じる範囲で指でつまみ、3秒押して3秒離すことを繰り返しましょう。
⑤姿勢に注意する
同じ姿勢を取り続けていると、血流が滞って生理痛が悪化する恐れがあります。
椅子に座る際には、下腹部や腰に負担がかからないよう、浅く腰掛けて骨盤を立てる姿勢を意識しましょう。
背中が丸まらないように背筋を伸ばして座るのがポイントです。
長時間座ったままだと血行が悪くなるので、適度に立ち上がったりストレッチをしたりするのもおすすめです。
寝る際には、体が緊張しないようリラックスできる体勢を取ってください。
横向きになって背中を少し丸め、軽くひざを曲げると、お腹周りの負担を軽減できます。
⑥アロマテラピーでストレスを軽減
体を緊張状態にして血流を滞らせるストレスもまた、生理痛を悪化させる要因の一つです。
生理中には、アロマテラピーでリラックス効果を得ましょう。
特におすすめなのは、リラックスや鎮静効果が期待できる「ラベンダー」や「カモミール」、「ゼラニウム」や「ベルガモット」です。
それぞれの香りを比べて、自身が最も気に入るものを選んでください。
アロマオイルをディフューザーで焚いたり、マッサージをしたりしても良いですが、もっと手軽にアロマテラピーを楽しみたいという方には、バスソルトやハーブティーがおすすめです。
その日の気分に合わせて好きな香りのバスソルトやハーブティーを使用して、ストレスを軽減しましょう。
まとめ
- 体を温める食材を口にしたり適度に運動したりと、血行を促進することが大切。
- カフェインを口にしたり同じ姿勢を長時間続けたりと、血行が悪くなる行動は避ける。
- 生理痛を緩和するツボを押す、アロマテラピーでストレスを軽減すると生理痛の緩和が期待できる。
受診した方が良い?生理痛でクリニックを受診する目安
生理は女性なら誰もが経験することであり、生理痛が起こったからといって、特別な対処は必要ないという考えをお持ちではないでしょうか。
毎月経験する生理だからこそ、少しでも痛みを和らげて上手に付き合っていく必要があります。
生理痛がひどい場合は、子宮内膜症や子宮筋腫、性感染症や骨盤内炎症性疾患(PID)を発症している可能性もあります。
日常に支障をきたすほどの下腹部痛があるという方や、性交痛・排便痛にも悩まされているという方は、一度クリニックにご相談ください。
「市販薬を飲めば大丈夫」という方もいますが、病気が原因で生理痛が起こっている場合は、根本的な解決は望めません。
生理痛が改善できないだけでなく不妊症に繋がることもあるので、早急にクリニックを受診しましょう。
生理痛の主な治療方法
受診を検討しているものの、具体的な治療方法がわからないと不安を感じるものです。
クリニックでは、生理痛に対してどのような治療を行っているのでしょうか。具体的な治療方法を3つご紹介します。
漢方薬
中国発祥の「漢方薬」が有名ですが、クリニックが処方しているのは、日本において独自に発展した「漢方医学」で使われる薬です。
漢方薬は自然由来の「生薬」を使用して作られているため、副作用が少ないというメリットがあります。
月経困難症には、主に「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などが使用されます。
桂枝茯苓丸にはイライラやのぼせ、腹痛を抑える効果が、当帰芍薬散には冷えや貧血、めまいなどを改善する効果が期待できます。
漢方薬はドラックストアでも入手できますが、医師の診断のもとで処方してもらえるクリニックがおすすめです。
低用量ピル
ピルは、正式には「経口避妊薬(OC)」といいます。名前の通り避妊効果が期待できるものですが、実は生理痛を和らげることも可能です。
低用量ピルには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンが配合されていて、子宮内膜の増殖を抑制する働きが期待できます。
痛みの元となるプロスタグランジンの過剰な分泌を抑え、さらに子宮収縮作用も抑制することから、生理痛が緩和されるのです。
他にも、月経前症候群(PMS)や生理不順などの改善も期待できます。
鎮痛剤
「機能性月経困難症」の治療には、鎮痛剤が用いられることがあります。
プロスタグランジンの合成を抑える働きを持つ「非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)」の使用が一般的で、具体的には「ロキソニン錠」や「バファリン錠」などが挙げられます。
鎮痛剤を処方された場合は、痛みがひどくなる前に服用してください。
痛みが強くなってから内服しても、思ったように効果を発揮してくれないことがあるため、痛みが出る前に服用することをおすすめします。
「1日2回」というように指示されている場合は、痛みがなくとも定期的に服用しましょう。
生理痛に関するよくある質問
生理痛に関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。生理痛に対して不安を感じているという方は、ぜひチェックしてください。
生理痛は病気?
基本的に生理痛は病気ではありませんが、「月経困難症」を引き起こしている場合は病気だといえます。
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が生理痛を引き起こすこともあるので、「生理痛は病気じゃないから大丈夫」などと安易に考えず、辛い生理痛に困っているという方は一度クリニックへご相談ください。
出血はないのに生理痛があるのは病気?
子宮を収縮して生理を起こすために、生理開始の少し前から「プロスタグランジン」の分泌が始まります。
生理予定日直前であれば、出血がみられなくとも生理痛が起こることがあるでしょう。
生理前に限らず、月経後14日前後に起こる排卵の影響で、「排卵痛」と呼ばれる生理痛に似た下腹部の痛みを感じることがあります。
通常の排卵痛は2~3日程度で治まりますが、長く強い痛みが続く場合は、子宮内膜症や卵巣嚢腫(のうしゅ)といった他の病気を発症している可能性があります。
生理痛がひどいと不妊になる?
生理痛がひどいからといって、不妊に繋がることはありません。
しかし、生理痛を起こす原因疾患がある場合は、子宮内膜症や卵巣嚢腫、性感染症といった他の病気を発症している可能性があります。
病気を治療せずに放置してしまうと、生理痛を改善できない上に不妊症に繋がることがあります。
生理痛がひどい場合は、一度クリニックへご相談ください。
辛い生理痛は我慢せずに二宮レディースクリニックへご相談ください
日常生活に支障をきたすほどの生理痛は、「毎月のことだから仕方がない」と諦めずに、症状改善に努めましょう。
生理痛は自力でもある程度緩和できますが、我慢できないほどの痛みを感じる場合はクリニックでの受診をおすすめします。
生理痛に関するお悩みは医療法人心鹿会へご相談ください。
スタッフ全員が女性の下記クリニックなら、生理のお悩みも気兼ねなくご相談いただけます。