陰部のヒリヒリとした痛みの原因は？更年期にみられる症状や対処法をご紹介

年齢を重ねて更年期に入ると、今までにない体の変化を感じることがあります。

人にはなかなか相談できないものの、悩みとして多いのが「陰部（デリケートゾーン）のヒリヒリとした痛み」です。

今回は、更年期の女性に多い陰部の痛みについて解説します。

考えられる原因や症状、セルフチェック方法や対処法をご紹介しますので、同じ悩みを抱えているという方はぜひご一読ください。

更年期に起こる陰部（デリケートゾーン）の変化

女性の体は、「思春期・性成熟期・更年期・老年期」の4つの段階を経て年を重ねます。

更年期は閉経前後である45～55歳を指し、この頃になると、女性ホルモン（エストロゲン）の分泌量が減少するという特徴があります。

個人差はありますが、今までとは異なるホルモンバランスになることで体に様々な変化が現れるようになり、いわゆる「更年期症状」が起こるのです。

女性ホルモンは陰部にうるおいをもたらす働きを持つため、分泌量が減少すると乾燥しやすくなってしまいます。

実は、陰部に起こる痛みは、「GSM（閉経関連尿路性器症候群）」が原因である可能性が高いといえます。

陰部にヒリヒリとした痛みを感じる、乾燥や違和感が気になるという方は、GSMを疑いましょう。

陰部の痛みの原因は「GSM（閉経関連尿路性器症候群）」

更年期の女性に起こる陰部の痛みの原因として多いのが、「GSM（閉経関連尿路性器症候群）」です。症状や発症する原因について詳しく解説します。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）の症状

腟壁が乾燥してただれてしまう疾患を「GSM（閉経関連尿路性器症候群）」といいます。

陰部の痛みやかゆみ、おりものの異常（臭い・色）や性交痛が主な症状であり、人によっては頻尿や膀胱炎が起こることもあるでしょう。

月経があるうちは腟内がうるおっているため、病原菌が侵入したり、増殖したりしないように自浄作用が働きますが、閉経後には腟内が乾燥して自浄作用が弱まってしまいます。

少しの刺激でも痛みを感じたり、出血が起こったりする上に、炎症や細菌感染も起こりやすくなります。

腟に痛みや違和感を覚えたら、我慢せずに医療機関へご相談ください。

一般的には、GSMよりも「萎縮性腟炎」という名称が有名ですが、腟は感覚神経が鈍麻であるため、炎症が起こっても腟はヒリヒリしません。また腟と外陰は別の部分なので、外陰がヒリヒリすることは腟炎では説明できません。

つまり、従来の萎縮性腟炎では説明が不十分でした。

外陰・腟など女性器に感じるものをまとめて「GSM」という概念ができています。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）が起こる原因

GSM（閉経関連尿路性器症候群）が起こる主な原因は「加齢」にあります。

女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少することで腟内が乾燥しやすくなり、陰部がただれてしまうのです。

エストロゲンの分泌量は、生活習慣の乱れやストレスによっても減少しますが、更年期を過ぎると急激に減少するという特徴があります。

そのため、更年期以降の女性の多くが、陰部にヒリヒリとした痛みを感じるGSMに悩まされているのです。

加齢は避けられませんが、GSMは適切な方法で対処すれば治すことができる疾患です。

年齢だからと諦めずに、適切な治療を受けて症状の改善を目指しましょう。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）のセルフチェック方法

陰部に痛みや違和感があるものの、「GSM（閉経関連尿路性器症候群）」であるかわからないという方は、まずは下記の項目にあてはまるかチェックしてみてください。

あてはまる項目が多い場合は、GSMを発症している可能性があります。

医療機関を受診する際には、気になる症状をメモしておくと良いでしょう。

おりものの色や出血の量、痛みを感じたタイミングや頻度などの情報を医師に伝えると、診察がスムーズに行えます。

我慢しても辛い症状が続いてしまうだけなので、上記の症状が現れている場合は、早急に医療機関を受診してください。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）への対処法

陰部はデリケートな部分であるため、痛みを放置したり、誤った方法でケアを行ったりすると、症状が悪化する可能性があります。

一番の対処法は医療機関に相談することですが、今すぐに受診するのは難しいという方もいるでしょう。自宅でできる対処法をいくつかご紹介します。

正しい方法で陰部を洗浄する

腟内が乾燥していると細菌感染が起こりやすいため、清潔な状態に保つ必要があります。

入浴の際には、腟や外陰部を中心に丁寧に洗浄しましょう。

陰部を清潔に保つことは大切ですが、石けんやボディソープを使ってゴシゴシと擦ってはいけません。

刺激によって乾燥が進んだり、症状が悪化したりする可能性があるので、擦らずにお湯でゆっくりと洗いましょう。

石けんやボディソープを使わずとも、陰部の汚れは落ちます。

腟環境を良い状態に保つ常在菌や必要なうるおいまで洗い流さないように、優しく丁寧に洗浄してください。

陰部を保湿する

陰部の乾燥が気になる場合は、ワセリンやクリームを使って保湿を行いましょう。

ワセリンは、天然物質である石油からつくられた鉱物油です。

医薬品にも使用されることがある成分で、塗布すると肌表面に油膜を張って乾燥を防いでくれます。

水分の蒸発を防ぐだけでなく、外部刺激からも肌を保護してくれるので、乾燥によるかゆみが気になるというときには、ワセリンを使用すると良いでしょう。

普段使用しているスキンケアアイテムを使用したい場合は、セラミドやヒアルロン酸といった保湿成分が含まれる美容クリームを選択してください。

化粧品の成分が刺激となる可能性があるため、粘膜部分は避けて、外陰部にのみ塗布します。

肌トラブルが起こらないか心配だという方は、市販されているデリケートゾーン専用の保湿クリームを使用してください。

性交時に潤滑ゼリーを使用する

腟内が乾燥すると、うるおいが不足して性交時に痛みを感じることがあります。

挿入の際に痛みを感じる、引っかかるような感覚があるという方は、潤滑ゼリーを使用すると良いでしょう。

市販されている潤滑ゼリーの中にも、セラミドやヒアルロン酸、コラーゲンといった保湿成分が配合された製品が存在します。

性交痛を和らげるだけでなく腟乾燥も緩和できるので、自身に合ったアイテムを探してください。

潤滑ゼリーの他にも、ジェル付きのコンドームを使用するという方法もあります。

パートナーとよく相談した上で、無理のない方法を試しましょう。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）の治療法

自身で行ったケアによって症状が落ち着くこともありますが、症状がなかなか改善されない、すぐにでも症状を改善したいという場合には、医療機関を頼ることをおすすめします。

クリニックで受けられるGSM（閉経関連尿路性器症候群）の治療法をいくつかご紹介します。

ホルモン補充療法（HRT）

陰部の痛みの原因がGSM（閉経関連尿路性器症候群）にある場合は、「ホルモン補充療法（HRT）」が有効です。

エストロゲンを全身投与することで、症状の改善を目指します。

投与方法は一般的に貼付剤（貼り薬）またはジェルが一般的ですが、飲み薬が処方されることもあります。

医師とよく相談した上で、最適な治療方法を選択しましょう。

局所療法（腟坐薬）

エストロゲンが含まれている「腟坐薬」を用いた治療も有効です。

1日1回、坐薬を自身で腟に挿入して、GSM（閉経関連尿路性器症候群）の症状改善を目指すという方法で、症状が軽い場合は数日から2週間程度で治まります。

症状が重い場合は、治まるまでに1ヶ月程度の時間を要するでしょう。

手軽な方法ではありますが、人によっては坐薬の挿入時や挿入後の帯下の増加で痛みや違和感が出る可能性があります。

レーザー治療

近年、治療の選択肢の一つとして注目されているのが、医療用レーザーです。

レーザー治療といえば、顔のたるみ改善やリフトアップが有名ですが、腟壁に応用する形で開発された炭酸ガスレーザーを使用することで、GSM（閉経関連尿路性器症候群）の症状改善が期待できます。

現在は炭酸ガスレーザーによる「モナリザタッチ」やエルビウムやグレーザーによる「インティマレーザー」など、様々なレーザーが登場していて、陰部の痛みだけでなく、かゆみや乾燥、黒ずみや尿漏れへの対策としても有効です。

また、レーザー以外で熱を与える方法として高周波（RF波）やHIFU（高密度焦点式超音波）などの方法も有効です。

軽症であれば1回の施術でもある程度効果を実感できるので、陰部の痛みをはじめとした様々な症状に悩まされているという方は、レーザー治療を検討してください。

すべての治療の注意点として、GSMの治療はいったん症状が改善してもそのまま放置してよいということではありません。失ったホルモンが自分から分泌されることはありませんので、改善した状態を維持するためにはメンテナンスが不可欠であることを忘れないようにしましょう。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）に関するQ&A

陰部に関する悩みは周囲に相談しにくいため、一人で不安を抱えているという方は少なくありません。

最後に、GSM（閉経関連尿路性器症候群）に関するよくある質問をQ&A形式でご紹介します。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）は放置しても良い？

放置していても自然に治る疾患もありますが、GSM（閉経関連尿路性器症候群）の場合、自然治癒はほぼ期待できません。

GSMの原因は、加齢による女性ホルモン（エストロゲン）の分泌量の減少にあるため、改善が難しいのです。

市販薬を用いて痛みを緩和することは可能ですが、完治は期待できないでしょう。

GSMの疑いがあるという方は、婦人科や泌尿器科を受診してください。

更年期以前に発症することもある？

女性ホルモン（エストロゲン）の分泌量が減少することで起こるのが、GSM（閉経関連尿路性器症候群）です。

そのため、更年期に限定はできず、20～30代の若い女性でも発症する可能性があります。

若い世代の女性が発症するケースとしては、早期閉経が起こったり、卵巣摘出手術を受けたりすることが原因として考えられるでしょう。

また、長期に渡って低用量ピルを内服した場合にも、GSMと似た病態を発症する可能性があります。ただし、GSMはあくまでも閉経に関連したものであり、ピルによる変化はGSMとは呼びません。

陰部の痛みに関するお悩みは医療法人心鹿会へご相談ください

更年期に入ると、体に様々な変化が現れるため、深刻な問題でなくとも不安を感じます。

陰部にヒリヒリとした痛みを感じたら、一人で悩まずに医療機関へ相談しましょう。

GSM（閉経関連尿路性器症候群）をはじめとした更年期の辛い症状にお悩みの方は、医療法人心鹿会へご相談ください。

当院の医師や看護師は全員女性であるため、デリケートな悩みについても気兼ねなくお話しいただけるはずです。

GSMかわからないけれど陰部が痛い、更年期ではないけれど陰部に違和感があるという方も、まずはお気軽にご相談ください。