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コラム

2023.07.24

京都院

トラベルクリニックとは?医療のフォローで海外渡航をより安全に!

トラベルクリニックの診療内容や利用方法について解説

転居や留学、長期の旅行など、海外にまとまった期間滞在する方もいるでしょう。

日本を離れる前に相談しておきたいのが、トラベルクリニックです。

トラベルクリニックとは何なのか、簡単に説明するなら、渡航する方向けの医療機関です。


今回は、トラベルクリニックの利用方法をご紹介します。海外でとくに注意が必要な病気についても詳しく解説します。

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トラベルクリニックとは?渡航に関する健康問題をフォロー

トラベルクリニックとは、様々な理由から渡航を検討する方とそのご家族に向けて、健康診断や予防接種を実施しているクリニックです。

渡航先で提出の必要があれば、各種英文書類の作成も行います。


トラベルクリニックの主な業務は、下記の通りです。

・渡航前の健康診断
・予防接種
・予防内服薬の処方
・慢性疾患や障害をお持ちの方への渡航サポート
・高齢の方へ向けた渡航サポート
・海外で就業や留学するための英文診断書や証明書の作成
・海外でレジャーやダイビングをする方の健康被害予防(減圧症など)
・高地に滞在する方の健康被害予防(高山病など)


この他にも、渡航先の医療事情に関するアドバイスも行います。


トラベルクリニック以外のかかりつけ医でも、上記に似た診察を受けられるかもしれません。


しかし、トラベルクリニックは渡航する方向けに特化しているため、世界各国の医療事情や気をつけたい病気といった幅広い知識を持っています

トラベルクリニックでは様々な診療科目を受けられる

一般的なクリニックでは、専門とする診療科目が限られています。

一方で、トラベルクリニックには様々な診療科目があり、一度の診療で専門性の高い分野の受診が可能です。


トラベルクリニックで取り扱っている診療科目は、旅行医学と呼ばれる分野です。

内科学/外科学/小児科学/救急医学/熱帯医学/産業保健学/予防医学/移民医学/登山医学/潜水医学 など


渡航前は、準備のために忙しくなるでしょう。


日本を離れるまでの短い時間を有効活用するためにも、トラベルクリニックの受診を検討してください。

トラベルクリニックの詳細はこちら

トラベルクリニックを利用する方の特徴

トラベルクリニックの利用者

海外赴任や留学が決まるまで、トラベルクリニックの存在を知らなかったという方も多くいます。

国内で暮らしていると、トラベルクリニックは馴染みが薄いかもしれません。


トラベルクリニックは、一体誰がどのような目的で利用しているのでしょうか。
ここでは、具体的な例をご紹介します。

渡航前に予防接種したい方

渡航先によっては、日本国内とは異なる感染症のリスクがあります。

そういった感染症対策の要になるのが、予防接種です。


トラベルクリニックでは、渡航先や滞在目的、期間や現地での生活環境を考慮した上で、国際渡航医学会の認定資格を持つ医師が、渡航者に必要な予防接種を提案します


ワクチン関係の書類として、母子手帳予防接種歴の英文翻訳にも対応しています。

渡航前・帰国後に健康診断を受けたい方

海外赴任をきっかけに、トラベルクリニックを訪れる方が多くなっています。

その理由としては、6ヶ月以上海外勤務する従業員に対しては、渡航前と帰国後に健康診断を実施することが法律で義務付けられているためです


トラベルクリニックでは、海外赴任者はもちろん、帯同するご家族を対象にした健康診断も実施しています。


一般の定期健康診断だけでなく、入社時に求められる雇用時健康診断も受け付けています。


ただし、胸部レントゲンに関しては、最寄りの施設で撮影してもらう必要があります。

海外留学に向けて準備中の方

海外留学やボランティアに参加したり、海外赴任に帯同するご家族が現地の学校に入学したりする場合は、留学用英文健康診断書の提出を求められるケースが多いです。

書類に必要な予防接種および検査の内容は、留学先の国や州、留学エージェントや学校によって異なります。


そういった細やかな要望にも、トラベルクリニックは広く対応しています。

ビザ取得書類を作成したい方

ビザを申請する場合は、健康診断を受ける必要があります。トラベルクリニックでは、健康診断を行うとともに必要な英文書類を作成します。

ビザの申請書類は、形式や求められる内容が変更されているケースが多々あるので、最新のバージョンを持ち込むようにしてください。


その他、海外へのスポーツ留学、イベントへの参加時に必要な検診と英文書類の作成も可能です。


ただし、クリニックによっては対応できない国や書類もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。

まとめ
  • ・渡航先や滞在目的、期間や現地での生活環境に合わせて予防接種を受けられる。
  • ・海外赴任者はもちろん、帯同する家族を対象にした健康診断も受けられる。
  • ・ビザ申請に必要な英文書類(診断書・証明書)を作成してもらえる。

ワクチン関係は要注意!国内にはない病が存在している可能性がある

自分は予防接種を受けているので、問題ないと考えている方も少なくありません。

しかし、渡航先によっては、日本ではなくなったと思われている病気が蔓延している可能性があります。


感染を防ぐには、予防接種が重要です。ここでは、トラベルクリニックで受けられる予防接種についてお話します。

地域別推奨ワクチン

渡航する地域によって、推奨されるワクチンは異なります。

代表的なものを国別にご紹介します。

◎:1~2週間程度の短期間でも、基本的には推奨
〇:長期滞在は推奨。短期間でも活動内容や感染多発地域に滞在する場合は接種を検討
◇:接種回数が不明または2回以上の接種がなく、過去に罹患歴がない場合は接種を検討
△:リスクは低いものの、現地での活動内容によっては接種を検討

麻疹/風疹
A型肝炎
B型肝炎
破傷風
狂犬病
腸チフス
東南アジア
南アジア
東アジア
中近東
北アフリカ
中央アフリカ
南アフリカ
中南米
北米


西ヨーロッパ・東ヨーロッパ・ニュージーランド・オーストラリア・オセアニアは、北米の推奨ワクチンとほぼ同様です。


上記は一例であり、渡航するタイミングや期間、活動内容でも推奨ワクチンは異なります。


トラベルクリニックで自分には何のワクチンが推奨されているのかを確認し、計画的に接種しましょう。

【成人向け】接種回数と接種間隔の目安

例として「A型肝炎」、「B型肝炎」、「狂犬病」の接種回数と接種間隔の目安をご紹介します。

基本的に5~8週目までのスケジュールは、海外渡航前に接種を完了させます。


その後、6ヶ月以降のスケジュールは、一時帰国または渡航先での接種を推奨します。


最後の1回だけでも打たずに過ごしてしまうと、最初から接種し直すことになるケースもあるので、忘れずに続けることが大切です。


▼2回目以降の接種間隔

国産/輸入
2回目
3回目
4回目
A型肝炎
国産
2~4週間
6~24ヶ月
A型肝炎
輸入
6~12ヶ月
B型肝炎
国産・輸入
4週間
6~12ヶ月
B型肝炎(至急)
輸入
7日
4週間
12ヶ月
狂犬病
輸入
7日
3~4週間


※「医療法人心鹿会海と空クリニック京都駅前」では、2023年度国産ワクチンのみを扱います。


ワクチンが国産か輸入かによって、接種期間が異なるケースもあります。


上記スケジュールを見て、渡航前に予防接種を完了するのは難しいと焦る方もいるでしょう。


一部のワクチンには、「至急」という種類があります。


基礎接種となる3回分を最短1ヶ月で接種する方法で、1年後に4回目を接種します。


急ぎで対応できるものの、通常より1回多く接種することになるでしょう。


ワクチンの接種回数や接種間隔は、少々わかりづらいかもしれません。


しかし、トラベルクリニックの医師が必要な回数を打てるようにスケジュールを組んでくれるので、それに従いましょう。

トラベルクリニックの詳細はこちら

海外渡航でかかる可能性がある病

渡航先で注意が必要な病

渡航先の国や地域によっては、特定の病に対するリスクが上昇するケースもあります。

ここでは、海外渡航で気をつけたい病をご紹介します。


とくにリスクが高い地域に渡航を予定している場合は、トラベルクリニックで診察を受けることが大切です。

海外渡航で特に注意したい病

海外旅行では、国内ではあまり耳にしない病に感染するリスクが高まります。

例えば、世界保健機関(WHO)の統計では年間1,600万人が腸チフスに感染し、うち60万人が死亡しています


また、日本ではほとんど見られない狂犬病にも注意が必要です。


アメリカを含むほとんどの国や地域で狂犬病感染のリスクがあり、年間5万5千人が死亡しています。


その他にも、海外渡航では下記の病に注意が必要です。

感染性腸炎(下痢、嘔吐、腹痛)/肺炎/風疹/麻疹(はしか)/おたふくかぜ(流行性耳下腺炎・ムンプス)/水ぼうそう(水痘)/インフルエンザ/日本脳炎/髄膜炎/破傷風/A型肝炎/B型肝炎 など


海外渡航した日本人には、感染性腸炎の症状が多く見られます。


感染性腸炎は自然に治っていくケースが多いですが、基礎疾患のある人によっては予防薬を処方することもありますので、トラベルクリニックでご相談ください。

蚊によってうつされる病

渡航先によっては、蚊によってうつされる病に注意が必要です。

世界保健機関(WHO)の統計では、蚊を媒介するマラリアに感染する恐れがある人は、30億人に上ります。


また、年間2億人以上が実際に感染し、2015年には43万8千人が死亡しています。


その他、蚊によってうつされる病は、下記の通りです。

ジカウイルス感染症(ジカ熱)/日本脳炎/黄熱/ウエストナイル熱/チクングニア熱/デング熱 など


蚊によってうつされる病のリスクを抑えるために、まず渡航先の感染症流行状況を確認してください。

地域によっては高山病のリスクも

海抜2,000メートル以上の地域に行く場合は、高山病のリスクが高まります。

高山病は、一般的な病気ではありません。標高が高い地域に行くことで低酸素状態になり、体が順応できずに起こる症候群を指します。


「低酸素症」や「高度障害」と呼ばれることもあります。


高山病の主な症状は、下記の通りです。

めまい/動悸/吐き気/頭痛/食欲不振/顔・手・足のむくみ/睡眠障害 など


高山病は長期に渡って高地に滞在する方だけでなく、短期間の旅行をする方でも注意が必要です。


近年はトレッキングが人気を集めており、高地を旅行先に選ぶ方が増えています。


安全に旅行を楽しむためにも、事前にトラベルクリニックでの診察をおすすめします。

まとめ
  • ・海外では、国内ではあまり耳にしない病に感染するリスクがある。
  • ・渡航先によっては、蚊によってうつされる「マラリア」に注意が必要。
  • ・標高が高い地域に行く場合は、低酸素状態になる「高山病」に注意が必要。

トラベルクリニックでは予防薬も処方可能

トラベルクリニックでは、健康診断や持病の薬の処方も受けられます。

その他にも、渡航先や渡航目的に合わせた予防薬の処方にも対応しています。予防薬があれば、海外でもより安心して過ごせるでしょう。


ここでは、代表的な予防薬をご紹介します。

マラリア予防薬

マラリアは、蚊を媒介して感染する病です。

主なマラリア予防薬には、3種類あります。渡航予定日前から服用を開始し、帰国後も一定期間服用するタイプもあるので、医師の指示に従ってください。

・メファキン(メフロキン):マラリア危険地帯に到着する1~2週間前から服用を開始。マラリア危険地帯を出て4週間服用し続ける。
・マラロン:マラリア危険地帯に到着する1日前から服用開始。マラリア危険地帯を出て7日間服用し続ける。
・ビブラマイシン:マラリア危険地帯に到着する1日前から服用開始。マラリア危険地帯を出て4週間服用し続ける。

高山病予防薬

気圧や酸素濃度が低い高地に行くと、体が環境の変化に追いつかず、不快な症状が出ます。

具体的には、吐き気や嘔吐、だるさやめまいなどの症状が起こるリスクが高まるのです


このような高地に体が順応できない病は高山病と呼ばれ、重篤化すると呼吸困難に陥ったり脳にむくみが生じて意識を失ったりと、命に関わります。


渡航先によっては、高山病予防薬の処方を行います。

・ダイアモックス:高地に行く前日から服用開始。高地到着後の4~5日間服用し続ける。

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トラベルクリニックを受診する流れ

トラベルクリニックの受診の流れ

トラベルクリニックを受診する場合は、事前準備が必要です。

受診に必要なものがわからない場合には、トラベルクリニックに問い合わせておくと良いでしょう。


ここでは、初めてトラベルクリニックを受診するまでの流れをご紹介します。

①トラベルクリニックで診察の予約をする

トラベルクリニックの初診で大切なのは、実際に渡航するまでの期間です。

複数回の接種が必要なワクチンもあるため、少なくとも渡航の1ヶ月半前には相談が必要です。


また、クリニックによって異なるものの、通常の診療の合間に渡航者向けに対応をしているケースも多くなっています。


そのため、1日あたりの枠が限られており、すぐに受診できるとは限りません。

渡航前ギリギリではなく、余裕を持って予約してください。

WEB予約を受け付けているクリニックであれば、仕事や授業の合間にも簡単に予約できます。

②来院前に必要なものを準備

海外渡航にあたって健康診断を受けるのならば、必要な「健康診断の書式」を準備しておきましょう。

その他にも、提出書類に決まった書式があれば、一式揃えておきます。定められた書式以外は、受け付け不可になるケースがあるためです。


また、予防接種が必要な方は、事前にトラベルクリニックのホームページから問診票をダウンロードし、必要事項を記載しておくように指示を受けるでしょう。


予防接種は、これまでに受けたことがあるワクチンの種類や回数、時期などの情報が必要となります。


予防接種の履歴は母子手帳に記されているので、持参するのがおすすめです。

③実際に来院・受診する

トラベルクリニックの初診時には、健康診断や予防接種のスケジューリングを行います。

内容によっては当日に全て終了するケースもある一方で、体調面を考慮し、数日に分けられることもあります。


また、予防接種は適切な間隔を空けないと、2回目以降が打てない種類もあるので要注意です。


渡航前に予防接種が終わらなかった場合は、一時帰国して受けられるスケジュールを立ててもらいましょう。


このように、トラベルクリニックの受診は1日で終わるとは限りません。


「健康診断だけだから」、「予防接種だけだから」などと安易に判断せず、余裕を持って診察を受けてください。

トラベルクリニックの費用相場

トラベルクリニックは、基本的に自費診療です。

初診料や再診料にプラスして、検査やワクチン代、必要な書類の作成費用などが発生します。


自費診療のため、一概にいくらかかるのか判断しにくい部分があります。


予防接種に関する費用は、トラベルクリニックの公式ホームページで公開されているケースが多いので、チェックしてください。


どれくらいの費用がかかるのかわからず不安なときには、トラベルクリニックに直接問い合わせをしましょう。


自分が何を目的に受診するのかを伝えれば、大まかな費用を教えてもらえます。

海外渡航前の健康問題はトラベルクリニックへご相談ください

トラベルクリニックについての記事のまとめ

海外渡航にあたって、現地で病にかかったらどうしたら良いのかと不安を抱えている方もいます。

トラベルクリニックであれば、事前に予防薬の処方が可能です。


また、渡航先に合わせて、ワクチンの接種や滞在中の過ごし方に関するアドバイスも受けられます。


トラベルクリニックは、診療の内容によって複数回通院する必要があります。


とくにワクチン接種は、定められた期間を空ける必要があり、想像していたよりも時間がかかったと感じる方も多いようです。


渡航前の準備や健康問題にお悩みの方は、早急にトラベルクリニックにご相談ください。


「海と空クリニック京都駅前」では、感染症医による診察を実施しています。


初診土曜日のみ対応。トラベルクリニックに関しては、男女問わず受診可能です。

海と空クリニック京都駅前へのご相談はこちら

この記事の監修者
池田 裕美枝

京都大学医学部卒業。総合内科研修後、産婦人科に転向。現在、海と空クリニック京都駅前院の院長として専門的診療に従事。また、神戸市立医療センター中央市民病院女性外来等を担当しつつ京都大学大学院医学研究科にて、女性の社会的孤立や月経前症候群による社会的インパクトなどを研究している。