
「右下腹部がチクチクする」「ときどき違和感がある」といった症状に悩んでいませんか。大腸や小腸の他にも、右下腹部には子宮や卵巣、卵管など、様々な臓器が存在しています。
痛みや違和感があるからといって、必ずしも病気だとは限りませんが、放置していると症状が悪化したり、深刻な病気につながったりする可能性があります。
「これくらいなら大丈夫」と自己判断せず、気になる症状があれば医療機関を受診しましょう。
今回は、女性の右下腹部に痛みがある場合に考えられる原因をご紹介します。
婦人科系の病気や主な症状、受診の目安や診療科の選び方についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
【婦人科系】女性の右下腹部に痛みが出る原因

女性の場合、右下腹部に痛みがあるときには、婦人科系の病気を発症している可能性があります。
まずは、原因として考えられる病気と主な症状をご紹介します。
①月経困難症
生理前や生理中に起こる腹痛や頭痛などの症状が、日常生活に支障をきたすほど強い場合を「月経困難症」といいます。
右下腹部の痛みに加えて、めまいや吐き気、お腹の張りや倦怠感などの症状が現れることもあります。
また、便秘や下痢、頻尿など、排泄障害の症状が現れることもあるでしょう。
一般的な生理痛だと思っていたら、実は月経困難症だったというケースは珍しくありません。
我慢できないほど生理痛がひどい場合は、放置せずに医療機関を受診してください。
②子宮内膜症
卵巣や卵管、腹膜など、子宮以外の部位に子宮内膜に似た組織ができてしまう病気が『子宮内膜症』です。
発症すると経血量が増加したり、生理痛が徐々に重くなったりするといった特徴があります。
生理でないときにも生理痛に似た下腹部痛が起こることがあり、他にも腰痛や性交痛、排便痛などの症状が現れます。
また、頭痛やめまい、吐き気などの症状が現れる他、放置すると不妊につながる可能性があるという点には注意が必要です。
20代後半から40代の女性に多く見られますが、近年は若い世代での発症も増えています。
③子宮筋腫
筋層(子宮を構成する筋肉の層)に発生するしこりを『子宮筋腫』といいます。
良性の腫瘍ではあるものの、大きさや発生した位置によっては不妊につながるケースもあります。
子宮筋腫ができると、生理痛が重くなったり、下腹部に痛みや違和感が出たりするでしょう。
また、貧血や不正出血、お腹の張りや頻尿などの症状が現れることもあります。
問題がなければ経過観察しますが、症状が重い場合や腫瘍が大きくなっている場合は、注射や外科手術などの治療を行います。
④子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
子宮頸部や子宮、卵巣などに悪性腫瘍ができると、右下腹部に痛みが出ることがあります。
子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんは初期症状に乏しく、発症しても気付きにくいという特徴があります。
しかし、重症化すると命を脅かす病気であるため、定期検診を受けて早期発見を目指すことが大切です。
がんが進行すると、生理痛が重くなったり、性交痛や不正出血、下腹部痛などの症状が現れたりします。
また、おりものの量が増加する、ニオイが変化する、血が混ざるなどのサインが現れるケースもあるので、見逃さないように注意してください。
特に子宮頸がんは20~30代の若い世代でも発症するため、年齢に関係なく定期的な検診が推奨されています。
⑤異所性妊娠(子宮外妊娠)
子宮以外の場所に受精卵が着床してしまうことを『異所性妊娠(子宮外妊娠)』といいます。
妊娠が成立しているため、月経が止まったり、受精卵が成長したりしますが、子宮外に着床した場合は妊娠を継続できません。
着床した部位によって症状は異なりますが、多くは卵管に着床します。卵管妊娠の場合、妊娠初期から片側の下腹部に鋭い痛みが起こるという特徴があります。
放置していると、受精卵の成長に伴って卵管が破裂してショック症状が現れたり、腹腔内で大量出血が起こったりすることもあります。命に関わる危険性があるため、妊娠の可能性がある方で強い下腹部痛がある場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
⑥骨盤内炎症性疾患
細菌やウイルスなどの感染によって、子宮や卵巣、直腸や膀胱、骨盤腹膜などに炎症が起こる病気が『骨盤内炎症性疾患』です。
性感染症が原因となることが多く、クラミジアや淋菌などの病原体が腟から子宮、卵管へと上行することで発症します。発症すると、下腹部に強い痛みが出る、高熱が出るなどの症状が現れます。
また、吐き気や嘔吐、下痢などの症状が現れるケースもあるでしょう。
おりもののニオイが変化したり、不正出血が起こったりすることもあるので、発症のサインを見逃さないように注意してください。
⑦卵巣のう腫茎捻転
卵巣にできた腫瘍(卵巣のう腫)が大きくなり、何らかの原因でねじれてしまう状態を『卵巣のう腫茎捻転(けいねんてん)』といいます。
原因は明らかとなっていませんが、妊娠や出産、運動によってねじれが発生すると考えられています。特に5cm以上の卵巣嚢腫がある方は注意が必要です。
卵巣のう腫茎捻転になると、左右どちらかの下腹部に強い痛みを感じるという点が特徴です。
また、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が現れることもあるでしょう。
ねじれた状態が続くと、血流が途絶えて卵巣組織が壊死してしまうため、緊急手術が必要となります。
悪化すると、腫瘍だけでなく卵巣や卵管も摘出する処置が必要となる可能性があるので、思い当たる症状があれば、我慢せずに早急に医療機関を受診してください。
【婦人科系以外】女性の右下腹部に痛みが出る原因

婦人科系の病気が原因で痛みが生じることもありますが、それ以外の原因も考えられます。
次に、右下腹部に痛みが出やすい消化器系や尿路系の病気をご紹介します。
①腸炎
細菌やウイルスに感染することで、腸に炎症が起こる病気を『腸炎』といいます。ノロウイルスやロタウイルス、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの病原体が主な原因です。
病原体の他にも、アレルギーや薬物、化学物質などが原因で炎症が起こることもあります。
腸炎を発症すると、下腹部にキリキリとした痛みを感じることが多いです。
また、吐き気や嘔吐、下痢や発熱などの症状が現れることもあるでしょう。
症状が強い場合は脱水症状に陥りやすくなるので、こまめに水分を補給しながら早急に医療機関を受診しましょう。
②虫垂炎(盲腸)
大腸の一部である虫垂に炎症が起こる病気を「虫垂炎」といい、一般的には「盲腸」と呼ばれています。(解剖学的な盲腸とは、正しくは虫垂が付着している腸の名称です)
虫垂炎の特徴的な症状として、痛みの場所が移動するという点が挙げられます。発症した直後はみぞおちの辺りに症状が現れますが、少しずつ痛みが右下腹部へ移動します。
右側の腰骨とおへその間(腰骨に近い位置)を指で押すと痛みを感じる場合は、虫垂炎を発症している可能性が高いといえるでしょう。
虫垂炎を発症すると、痛みに加えて吐き気や発熱、食欲不振などの症状が現れることもあります。
放置すると虫垂が破裂して腹膜炎を起こす危険性があるため、早期の治療が重要です。
③便秘症
便が上手く排出されず大腸内に滞留することで、痛みや膨満感などの不快症状が現れる状態を『便秘症』といいます。
S字結腸が存在する左下腹部に痛みが出る傾向にありますが、便が大腸全体に溜まっている場合、S状結腸が長く右側まで及ぶ場合、上行結腸(右側の大腸)に便が詰まっている場合には、右下腹部が痛むこともあるでしょう。
便秘症が長く続くと、下腹部痛に加え、吐き気や頭痛、肩こりなどの症状が現れるケースもあります。
また、過敏性腸症候群や大腸がんの症状で便秘になることもあるので、便秘を繰り返している場合は、一度医療機関へご相談ください。
④尿路感染症
尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道、男性の場合は前立腺も)に細菌が侵入して排尿障害を起こす病気が、『尿路感染症』です。
腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱に溜まり、一定量を超えると、尿道を通って外尿道口から排出されます。
これらの尿が通る道は全て「尿路」にあたり、どこかで細菌感染が起こると尿路感染症を発症します。
女性は尿道が短く、肛門と尿道口が近いという解剖学的な理由から、男性に比べて尿路感染症にかかりやすい傾向があります。
発症すると、下腹部痛に加え、排尿時の痛みや灼熱感、頻尿、残尿感、尿の濁り、発熱や吐き気、嘔吐や血尿などの症状が現れるでしょう。
放置すると膀胱炎から腎盂腎炎へと進行し、高熱や腰背部痛などの重い症状が現れることもあるので、思い当たる症状があれば医療機関を受診してください。
右下腹部が痛む場合の受診の目安
「痛みはあるけれど、病院に行くほどではないかも」と迷っている方も多いのではないでしょうか。しかし、自己判断で様子を見ているうちに症状が悪化してしまうこともあります。
どのような症状が現れていると、早急に受診が必要なのでしょうか。医療機関を受診する目安をご紹介します。
緊急性が高い症状:早急に受診が必要
以下の症状が現れている場合は、緊急性が高く、早急に受診が必要です。
特に動けないほど強い痛みが出ている、意識が朦朧とするといった症状が現れている場合は、速やかに救急車を要請してください。
- 突然の激しい痛みで動けない
- めまいや吐き気が止まらない
- 嘔吐を繰り返している
- 血便や下血が見られる
- 眠れない、または中途覚醒するほど強い痛みがある
- お腹を押すと強い痛みを感じる
- 体を動かすと痛みが増す
- 大量の不正出血がある
これらの症状は、卵巣嚢腫茎捻転や異所性妊娠の破裂、虫垂炎の悪化など、緊急手術が必要な状態のサインである可能性があります。
緊急性が低い症状:診療時間内に受診
以下の症状が現れている場合、緊急性は低いものの放置は禁物です。
都合の良いタイミングで、なるべく早急に医療機関を受診しましょう。
- 下痢や便秘を繰り返している
- 下腹部痛に伴って発熱や嘔吐などの症状が見られる
- 痛みが長引いている
- 何度も繰り返し痛みが起こる
- 生理痛が以前より重くなった
- おりものの量や色、ニオイに変化がある
上記の症状が現れているものの、介添えなしに一人で動けるという方は、病院の診察時間内に受診してください。
下腹部痛で受診する診療科の選び方

医療機関での受診を検討しているものの、どの診療科を選べば良いのかわからないという方は、以下を参考にしてください。
▼婦人科
- 生理に関連する痛みがある
- 妊娠の可能性がある
- おりものの変化が気になる
- 不正出血がある
- 性交痛や排便痛がある
▼消化器内科
- 吐き気や嘔吐などの症状がある
- 下痢や便秘などの症状がある
- 胃の痛みや不快感がある
- 血便が出ている
▼泌尿器科
- 排尿痛がある
- 頻尿や残尿感などの症状が見られる
- 尿の色やニオイが普段と異なる
- 血尿が出ている
かかりつけの婦人科があれば、担当の医師に相談してみると良いでしょう。
専門外であった場合は、他の医療機関や診療科を紹介してもらえるので、まずは受診することが大切です。
下腹部痛の検査方法
患者様の症状によって検査方法は異なりますが、下腹部に痛みがある場合は、血液検査や大腸カメラなどの検査が行われることが一般的です。
最後に、下腹部に痛みがある場合に行われる、主な検査方法をご紹介します。
血液検査
医療機関を受診すると、まずは問診や触診が行われます。
下腹部痛が強い場合は、血液検査を行い、炎症や感染の有無を確認して原因を特定します。
骨盤内炎症性疾患や虫垂炎、尿路感染症などを発症している場合は、CRP(炎症反応を示す数値)や白血球の数値が高値を示すため原因を特定できるでしょう。
血液検査だけでは不十分だと判断された場合は、画像検査など他の検査も併せて行われます。
大腸カメラ
大腸や小腸に下腹部痛の原因があると疑われる場合は、大腸カメラを用いて検査を行います。
大腸カメラでは、大腸全域や小腸の一部の粘膜表面を観察することで、炎症やポリープ、がんなどの有無を調べることが可能です。
検査中にポリープや早期の大腸がんを発見すれば、その場で切除できます。
近年は内視鏡システムが進歩しており、鎮痛剤や炭酸ガスを用いて、苦痛の少ない検査を実現しています。
大腸がんのような深刻な疾患は早期発見がカギとなるので、40歳を過ぎたら年に1回は定期検診を受けましょう。
腹部超音波検査
超音波を腹部に照射することで、臓器の形状や血流を確認する検査方法が腹部超音波検査です。
お腹の表面にゼリーを塗布し、プローブと呼ばれる専用の機器を皮膚にあてて検査を行います。
腎臓や膵臓、肝臓といった臓器の他、血管や甲状腺、乳腺などの状態をリアルタイムで観察できます。
検査時間は10分前後で苦痛も少ないので、検査のハードルは低いといえるでしょう。
右下腹部の痛みや違和感にお悩みの女性は医療法人心鹿会へご相談ください

女性の下腹部には重要な臓器がたくさん存在するため、痛みの原因も様々です。
「少し様子を見よう」「我慢できる程度だから大丈夫」と放置していると、症状が悪化したり、治療が難しくなったりする可能性があります。右下腹部に痛みや違和感がある場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。
受診を検討しているという方は、医療法人心鹿会へご連絡ください。
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