
「最近、デリケートゾーンが乾燥しやすくなった」「性交痛が気になるようになった」という悩みを抱えていませんか?
若い頃と比べてこのような変化を感じる方は、「萎縮性腟炎」を発症している可能性があります。
萎縮性腟炎とは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少し、外陰部や腟粘膜が萎縮することで起こる炎症です。
近年では「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」という包括的な概念で捉えられており更年期以降の女性に多く見られます。
発症すると、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。また、どのような治療法で改善できるのでしょうか。
今回は、萎縮性腟炎の特徴や改善方法をご紹介します。
主な症状や発症する原因、セルフチェック方法や医療機関で受けられる治療法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
萎縮性腟炎(老人性腟炎)とGSMの主な症状

萎縮性腟炎という名前は聞いたことがあっても、どのような病気なのか詳しく知らないという方もいるでしょう。
萎縮性腟炎は、狭義には腟内の炎症を指しますが、エストロゲンの減少により影響を受けるのは腟だけではありません。
外陰部、膀胱、尿道なども同様に萎縮し、様々な症状を引き起こします。
これらを総合的に「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」と呼び、3つの主要な症候群に分類されています。
萎縮性腟炎の症状もGSMの代表的な症状のひとつです。
では、GSM(萎縮性腟炎も含む)の3つの主な症状をご紹介します。
①腟・外陰部症状
・乾燥・かゆみ・刺激感
デリケートゾーンの乾燥やかゆみが、萎縮性腟炎の代表的な症状です。
エストロゲンの分泌量が減少して外陰部や腟のうるおいが不足すると、デリケートゾーンに乾燥やかゆみが起こりやすくなります。
トイレットペーパーで拭いたり、下着やナプキンで擦れたりすると、ヒリヒリとした痛みを感じることもあるでしょう。
特に入浴後や運動後には、強いかゆみを感じることがあります。
・灼熱感・圧迫感
腟や外陰部に熱感や圧迫感を感じることもあります。
これらの症状は、粘膜の萎縮と乾燥により、正常な状態を保てなくなることで起こります。
②性機能関連症状
・性交痛・潤滑不足
腟が乾燥すると、性交中に痛みを感じるようになります。
これは、潤滑不足により性行為の摩擦で粘膜が傷つくことが原因です。
性交中だけでなく、終わった後にもしばらくヒリヒリとした痛みが続くこともあるでしょう。
・性的満足度の低下
痛みや不快感により、性行為への関心や満足度が低下することがあります。
これは身体的な変化だけでなく、心理的な影響も大きく関わっています。
出血が起こるケースもあるので、痛みが強い場合は、無理に性行為を行わないように注意してください。
腟が乾燥すると、性交中に痛みを感じるというのも萎縮性腟炎の特徴の一つです。
性行為の摩擦によって粘膜が傷付き、強い痛みを感じることがあるでしょう。
③下部尿路症状
・頻尿・尿意切迫感
GSMを発症すると、頻尿や急に強い尿意を感じる尿意切迫感に悩まされる方も多くいらっしゃいます。
エストロゲンの減少は、膀胱や尿道の粘膜にも萎縮を引き起こします。
外的刺激に弱くなるため、少しの刺激でもトイレに行きたくなったり、我慢することが困難になったりします。
・排尿時痛・反復性尿路感染症
排尿時に刺すような痛みを感じることがあります。
また、免疫力の低下によって雑菌の繁殖を抑えられなくなり、膀胱炎などの尿路感染症を繰り返すケースもあります。
④おりものの変化
おりものの量や色、臭いに変化が現れるというのも、GSM・萎縮性腟炎の症状の一つです。
乾燥によって腟内常在菌(ラクトバチルス)の数が減少すると、病原菌が増殖して、通常とは異なるおりものが出ることがあります。
おりものの量が減った、黄色や褐色に変化した、嫌な臭いがするという場合には、細菌性腟炎を発症している可能性を疑いましょう。
症状を改善するためには、細菌性腟炎の治療も行う必要があります。
GSM・萎縮性腟炎を発症する原因

更年期以降の女性に多く見られる萎縮性腟炎ですが、実は若い方でも発症する可能性があります。
デリケートゾーンのケアに気を付けていても発症してしまうのは、なぜなのでしょうか。
詳しく解説します。
更年期以降の女性が発症する原因
GSM・萎縮性腟炎が更年期以降の女性に多く見られる理由は、「エストロゲンの減少」にあります。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、20代後半から30代前半をピークに、分泌量が徐々に減少します。
更年期には急激に減少するため、腟のうるおいや免疫力が低下して、乾燥やかゆみ、性交痛といった様々な症状が現れるのです。
エストロゲンは、腟だけでなく尿道や膀胱の健康維持にも関わっていることから、頻尿や排尿時痛といった症状が現れるケースもあります。
20~30代の女性が発症するケースもある
厳密にはGSMとは異なるものの、エストロゲンの分泌量が低下する要因があれば、20~30代の若い女性であっても発症する可能性があります。
以下の項目に当てはまる方は、発症に注意してください。
- 低用量ピルを服用している
- 月経不順や無月経
- 産後・授乳中
- 卵巣摘出術後
- がん治療中、または治療後(化学療法・放射線療法)
- 摂食障害や過度な運動による体重減少
萎縮性腟炎は命を脅かすような病気ではありませんが、感染症の発症リスクが高まり、妊娠に影響を与えることがあります。
また、授乳中の女性に起こる同様の症状は「GSL(授乳関連尿路性器症候群)」と呼ばれます。
授乳中は、プロラクチンというホルモンの分泌が増加し、エストロゲンの分泌が抑制されます。
これにより、GSMと同様の症状が現れることがあります。
GSLは一時的な現象ではありますが、授乳期間中のQOL(生活の質)に大きな影響を与えるため、適切な対処が重要です。
発症の疑いがあるという方は、放置せずに医療機関へご相談ください。
GSM・萎縮性腟炎のセルフチェック方法
自身がGSMや萎縮性腟炎を発症しているかわからないという方は、以下の項目に当てはまるかチェックしてみましょう。
- 腟や外陰部に乾燥やかゆみ、刺激感を感じる
- 灼熱感や圧迫感がある
- 性交時に痛みや出血があった
- 性交時の潤滑不足を感じる
- 性的満足度が低下した
- トイレが近くなった(頻尿)
- 急に強い尿意を感じることがある(尿意切迫感)
- 排尿時に痛みを感じる
- 膀胱炎を繰り返している
- おりものの量が減った
- 黄色や褐色など、膿のようなおりものが出る
- 悪臭のあるおりものが出る
- 閉経している(GSM)
- 現在授乳中である(GSL)
- 授乳を開始してから症状が現れた(GSL)
- その他、治療などで女性ホルモンが低下するような状況にある
上記に当てはまった方は、一度婦人科を受診することをおすすめします。
GSM(萎縮性腟炎)やGSLではなく、他の深刻な病気を発症している可能性もあるので、心当たりがある方は医師に相談してください。
GSM・萎縮性腟炎の治療法

GSM・萎縮性腟炎は、医療機関で治療を受けることで改善が期待できます。
医療機関では、どのような治療が受けられるのでしょうか。主な治療法を4種類ご紹介します。
①保湿剤・潤滑剤
GSM・萎縮性腟炎が原因でデリケートゾーンが乾燥している場合は、保湿剤や潤滑剤が有効です。
外陰部や腟の入り口に保湿ジェルを塗布するという方法で、エストロゲンが含まれないことから、ホルモン剤を使用できない方にもおすすめです。
腟内に塗布したい、腟内感染症があるという方は、使用に際して問題がないか、事前に医師に確認してください。
②ステロイド軟膏
外陰部のかゆみや痛みといった症状が強く現れている場合は、一時的にステロイド軟膏を用いた治療が行われます。しかし根本的な治療ではないため注意が必要です。
ステロイドには強い抗炎症作用があるため、塗布することでかゆみや痛みなどの症状の緩和が期待できるでしょう。
ただし、長期的に使用すると、皮膚が薄くなったり、乾燥が悪化したりする可能性があります。
ステロイド軟膏を使用する場合は、医師の指導に従ってください。
また、使い始めは良かったけれど、使い続けていると症状が悪化してきた、という場合は、ただちにGSMを専門で治療できる病院に相談してください。
③女性ホルモン補充療法
萎縮性腟炎の治療には、女性ホルモン補充療法が有効です。
全身投与の場合は貼り薬や飲み薬が選択されます(保険診療)。
更年期のエストロゲン欠乏に伴う諸症状の緩和を期待する場合には全身投与がよいでしょう。
ホットフラッシュや肩こり、不眠などの症状に悩まれている方におすすめです。
局所投与の場合には腟錠が選ばれます(保険診療)。
陰部へ直接塗り薬もあります(保険外診療)。
一般的にGSM・萎縮性腟炎の治療はまず局所投与から開始するとされています。
しかし、残念なことに乳がんや子宮体がんに罹患した方、血栓症のリスクが高い方はホルモン療法を受けられない可能性があるので、医師と相談して治療法を選択してください。
④レーザー治療(モナリザタッチ・インティマレーザー)
不快な症状をいち早く改善したい、セルフケアは改善が見込めない、ホルモンを使用できない(したくない)などの場合に有効なのが、「モナリザタッチ」や「インティマレーザー」などのレーザー治療です。
腟や外陰部にレーザーを照射することで、粘膜組織を活性化させるという方法で、1回あたりの施術時間は20~30分程度です。
1~2ヶ月の間隔で3回の治療を受けることが推奨されていますが、早い方であれば、1回の施術でも効果を実感できるでしょう。
麻酔やメスを使用しない施術であることから、治療後のダウンタイムもほとんどなく、翌日からは普段通りの生活を送れます。
健康保険が適用されないため、1回あたり5~20万円程度の費用がかかりますが、即効性に優れているという点は魅力だといえるでしょう。
GSM・萎縮性腟炎(老人性腟炎)のセルフケア方法
医療機関で治療を受けることで改善できますが、すぐに受診することは難しいという方もいるかもしれません。
症状を抑えるためには、どのような方法でケアを行えば良いのでしょうか。
症状別に自宅でできるケア方法をご紹介します。
【乾燥が気になる場合】デリケートゾーンを保湿する
乾燥によるかゆみや痛みが気になるという方は、ワセリンやデリケートゾーンにも使用可能なクリームで保湿を行いましょう。
一般的なドラッグストアや通販サイトで購入しても良いですが、どの製品を選べば良いのかわからないという方は、婦人科にご相談ください。
保湿は重要ですが、デリケートゾーンが蒸れると細菌繁殖のリスクが高まります。
通気性や吸湿性に優れた下着を着用して、清潔に保つように心がけましょう。
【性交痛が気になる場合】潤滑ゼリーを使用する
性交時に痛みを感じる方は、潤滑ゼリー(潤滑剤)を使用することで摩擦を減らせます。
市販の潤滑ゼリーには、サラサラとした質感のウォーターベースや、こっくりとした質感のオイルベースなど、様々なタイプが存在します。
また、ヒアルロン酸やコラーゲンなどの保湿成分が配合された潤滑ゼリーもあるので、自身に合う製品を探してみましょう。
性交時の痛みが強い、出血があるという場合は、パートナーに相談して無理に性行為は行わないようにしてください
また、出血が継続する場合には必ず医療機関で検査を受けましょう。
GSM・萎縮性腟炎に関するよくある質問
症状や原因、治療法について理解したものの、まだ不安や疑問が残っているという方もいるでしょう。
最後に、萎縮性腟炎に関するよくある質問をQ&A形式でご紹介します。
医療機関を受診しようか迷っているという方は、ぜひご一読ください。
1.GSM・萎縮性腟炎は自然に治る?
GSM・萎縮性腟炎は、自然に治ることはありません。
発症の原因は、エストロゲンの分泌量の減少にあります。
放置していると、症状の慢性化・悪化や、性生活の満足度の低下につながります。
また、感染症のリスクが高まり、性感染症や尿路感染症を発症する可能性が出てくるので、気になる症状がある方は、我慢せずに婦人科を受診しましょう。
2.治療期間の目安は?
個人差がありますが、数週間から3ヶ月程度で症状の緩和が期待できるでしょう。
基本的にエストロゲンが自然に分泌されるようにはならないため、症状が緩和した後にも、維持療法として治療の継続が必要です。
症状が治まるまでは集中的に治療を行い、症状の緩和後には通院回数を減らすといった具合に、治療の頻度を調整することが可能です。
3.エストロゲンを使った治療は危険?
腟錠やクリームなどを用いた局所的な投与であれば、エストロゲンの血中濃度はほとんど変わらないため、副作用が現れるリスクは低いといえるでしょう。
しかし、エストロゲンは乳がん細胞の増殖を促進する可能性があるので、事前に乳がん検診を受けることをおすすめします。
乳がん治療中の方やホルモン療法を受けられない方は、医師と相談して治療法を決めてください。
GSM・萎縮性腟炎にお悩みの方は医療法人心鹿会へご相談ください

デリケートゾーンやおりものの異常を放置していると、日常生活に支障をきたす可能性があります。
また、原因がわからないまま放置していると、大きな病気につながる可能性もあります。
萎縮性腟炎の疑いがある、萎縮性腟炎かわからないけれど体に異変を感じているという方は、一度医療機関を受診しましょう。
デリケートゾーンのトラブルに悩んでいるという方は、医療法人心鹿会へご相談ください。
当院では、婦人科や泌尿器科の治療はもちろん、GSM治療も専門で行っており様々な治療方法のご提案が可能です
さらに女性性機能の治療も行っています。
医師をはじめとしたスタッフは全員女性ですので、デリケートな問題もまずはお気軽にご相談ください。