国内とは環境が異なる海外へ渡航する際には、病気への対策も必要です。
病気を予防する方法として海外渡航者に推奨されているのが、予防接種です。
今回は、予防接種の必要性やワクチンで防げる病気の種類、トラベルクリニック(渡航外来)を受診するタイミングについて解説します。
海外渡航の前に予防接種が推奨される理由
予防接種を受けるよう勧められても、なぜ海外渡航に必要なのかわからないという方もいるでしょう。まずは海外渡航前に予防接種を受ける理由を説明します。
「予防接種証明書」の提示が必要
国によっては、入国条件として特定の疾病の「予防接種証明書」の提示を求められることがあります。
提示できない場合は入国が認められないため、渡航先の入国条件をよく確認しておきましょう。
検疫所や渡航先の在日大使館へ問い合わせることで、渡航先の情報収集が行えます。
留学予定の学校から提示を求められることもあるので、必要な予防接種は渡航前に済ませておいてください。
自身や周囲への感染を防ぐ
環境が異なる海外では、国内では消滅したと思われている感染症が発生していたり、国内では珍しい感染症が流行していたりすることがあります。
反対に、海外ではみられない感染症に国内でかかり、渡航先の人々にうつしてしまう可能性もあります。
自身への感染を防ぐ努力も必要ですが、自身が感染源とならないための努力も必要です。
渡航者一人ひとりが、感染症予防の重要性を理解しておきましょう。
予防接種はいつ受ければ良い?
1回で完了するケースもありますが、基本的に2~3回の接種を必要とするワクチンが大半です。
また、連続で摂取できるというわけではなく、数週から数ヶ月の期間を空けなければ2回目以降の摂取が行えないワクチンも存在します。
海外渡航の3ヶ月前には、トラベルクリニックを受診することが理想です。
しかし、3ヶ月前ではまだ予定が立っていないというケースもあるでしょう。
海と空クリニック京都駅前では、渡航日が迫っている状況でも、可能な限り効率良くワクチン接種を行います。
渡航まで3ヶ月を切ってしまっているという方は、海と空クリニック京都駅前にご相談ください。
ワクチンで予防できる主な病気
ワクチンを接種することで、どのような病気を防げるのでしょうか。予防接種で感染を防げる可能性が高い病気をいくつかご紹介します。
A型肝炎
加熱処理されていない食べ物や飲み物を口にすることで感染するのが、A型肝炎の特徴です。
A型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染症で、汚染された水や氷、甲殻類や生野菜から経口感染します。
発症すると倦怠感や発熱、腹痛や下痢といった症状が現れ、重症化すると入院が必要になります。
85度の熱で2分以上加熱することでA型肝炎ウイルスを死滅させられるため、料理をする際には十分に加熱してから口にしてください。
A型肝炎の予防接種は、主に途上国へ渡航される方に推奨されています。
B型肝炎
血液や体液を介してヒトからヒトへ感染するのが、B型肝炎の特徴です。
不衛生な環境下での外科手術や歯科治療、輸血や性行為など、血液や体液に触れる行為を行うと感染のリスクが高まります。
発症すると倦怠感や微熱、嘔吐や腹痛などの症状が現れ、黄疸が出ることもあります。
渡航先では、無防備な性行為やピアスの穴開け、タトゥーを入れることは避けましょう。
体調不良や事故に遭った際に医療行為を避けることは難しいため、国内でB型肝炎の予防接種を受けておくことをおすすめします。
破傷風
ケガを負った際に傷口から菌が入り込むことで発症のリスクが高まるのが、破傷風です。
破傷風菌は世界中の土壌に存在し、途上国から先進国まで、毎年多くの患者が発生している病気です。
発症すると顔面や首の硬直が起こり、全身のけいれんや呼吸困難などの症状が現れます。
抗菌薬で治療が行えますが、致死率は10~20%と決して低くないため、予防接種を受けておくことをおすすめします。
特に途上国へ渡航したり、アクティビティを楽しんだりする予定がある方は、ワクチンの接種を検討しましょう。
子供の頃に受けた「3種混合ワクチン」に破傷風ワクチンも含まれていますが、10年を経過すると追加接種が必要です。
ワクチンの効果は永続するものではないため、前回の摂取から10年以上経過しているという方は、海外渡航前に改めて破傷風ワクチンを接種してください。
日本脳炎
豚の中で繁殖したウイルスが蚊によって媒介されることで感染する病気が、日本脳炎です。
養豚場と近い場所で生活する地域に多くみられ、特にアジア地域へ渡航する方へ予防接種が推奨されています。
発症すると高熱や頭痛、嘔吐といった症状が現れ、重症化すると異常行動や意識障害が起こります。
死亡率が高く、回復したとしても重篤な後遺症が残る可能性が高いため、予防接種を受けて感染自体を防ぐことが大切です。
狂犬病
動物によってケガを負わされた際に傷口からウイルスが侵入することで感染するのが、狂犬病です。
国内では1957年を最後に発生していないものの、先進国を含むほとんどの国では毎年多くの死者が発生しています。
発症すると発熱や頭痛、倦怠感や嘔吐といった症状が現れます。
また、液体を飲むとけいれんが起こったり、興奮しやすくなったりといった特徴的な症状も現れるでしょう。
発症すれば100%死亡する病気なので、すぐに医療機関を頼ることができないような地域へ渡航される予定の方は、必ず予防接種を受けておいてください。
麻しん
ヒトを介して感染する急性の全身感染症が、麻しんです。
感染者の咳やくしゃみを介して空気感染する病気で、非常に強い感染力を持ちます。
ウイルスの付着した手で口や鼻に触れることで接触感染することもあり、予防接種を受けていない方が感染すると100%発症するといわれています。
発症すると発熱や咳、鼻水や発しんといった症状が現れ、重症化すると肺炎や脳炎を発症することもあるでしょう。
麻しんにかかったことがない、予防接種の履歴が不明だという方は、ワクチンを接種しておいてください。
風しん
麻しん同様に、ヒトからヒトへ感染する急性のウイルス性発しん性感染症が、風しんです。
感染力が強く、海外だけでなく国内でも定期的に風しんの流行が起こります。
発症すると発しんや発熱、リンパ節の腫れといった症状が現れ、妊娠20週までに感染すると、お腹の中の赤ちゃんが難聴や白内障、心臓の病気を持って生まれてくることがあるでしょう。
風しんに対する治療方法がなく、発症すれば対症療法を受けることしかできませんが、ワクチンで感染を防げます。
特にアジア地域やアフリカ地域へ渡航される予定の方は、予防接種を受けておきましょう。
髄膜炎
感染者が発する飛沫や咽頭分泌物を介して感染するのが、髄膜炎です。
ヒトからヒトへの感染はみられますが、動物や昆虫から感染することはありません。
狭い場所や人が密集する場所で感染することが多く、キスや食器の共用でも感染するという点が特徴です。
発症すると高熱や関節痛、頭痛や吐き気が起こり、重症化すると菌血症から死亡することもあります。
アメリカでは髄膜炎のワクチン接種が義務付けられていて、留学生に対して予防接種証明書の提出を求めることがあります。
留学前に、入学予定の学校に予防接種証明書が必要であるか確認しておくと良いでしょう。
【地域別】推奨されている予防接種の種類
海外渡航に際して、具体的にどのような種類のワクチンを接種しておけば良いのでしょうか。
地域ごとに必要な予防接種の種類をご紹介します。
中央アジア | ||||||||
東・東南・南アジア | ||||||||
西アジア | ||||||||
北アメリカ | ||||||||
中央・南アメリカ | ||||||||
豪州・ニュージーランド | ||||||||
北・東・中央アフリカ | ||||||||
西アフリカ | ||||||||
南アフリカ | ||||||||
北・西ヨーロッパ | ||||||||
東・南ヨーロッパ |
◎:渡航前の予防接種を推奨。
〇:リスク(局地的な発生)がある場合、渡航前の予防接種を推奨。
【出典: 厚生労働省検疫所FORTHホームページ】
上記はあくまで例であり、渡航先の感染症の流行状況によって必要となる予防接種は異なります。
必要な予防接種についてはトラベルクリニックで確認できますが、厚生労働省や外務省の公式ホームページでも感染症の流行状況を調べられます。
「海と空クリニック京都駅前」の予防接種料金
具体的な料金を知りたいという方に向けて、「海と空クリニック京都駅前」の予防接種料金をご紹介します。海外渡航を控えている方は、ぜひ参考にしてください。
予防接種の料金
「海と空クリニック京都駅前」で受けられる予防接種の種類と料金、接種が必要な回数の一例をご紹介します。
詳しくは、直接クリニックへ確認してください。
▼ワクチンの接種回数と料金
A型肝炎 | ||
B型肝炎 | ||
破傷風 | ||
日本脳炎 | ||
狂犬病 | ||
麻しん | ||
風しん | ||
髄膜炎菌 |
※「医療法人心鹿会海と空クリニック京都駅前」では、2023年度国産ワクチンのみを扱います。
予防接種以外の諸費用
予防接種料金の他にも、診察料や処方箋の発行料、英文診断書の作成料がかかります。
「海と空クリニック京都駅前」で予防接種以外に必要となる諸費用は、以下の通りです。
・診察料(初診):6,000円
・予防薬処方箋発行料:1,100円
・英文診断書作成料:6,000円
海外渡航のための予防接種に関するよくある質問
海外渡航を前提とした予防接種を受ける際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。気になる疑問をQ&A形式でご紹介します。
予防接種は1回で良い?
1回で完了する予防接種であれば問題ありませんが、複数回の摂取を必要とする場合は、1回だけでは抗体が陽性にならなかったり、効果の持続期間が短くなったりします。
予防効果が十分に得られないため、規定の回数を摂取するように心がけましょう。
出発まで時間がなくて予防接種を必要回数分受けることができない場合は、国内で1回目を受けて、2回目以降は渡航先で受けるということも可能です。
また、一時帰国できるのであれば、帰国した際に2回目、3回目の予防接種を受けても良いでしょう。
予防接種に副作用はある?
わずかではありますが、予防接種でも副作用が現れる可能性があります。
副作用が現れる可能性が高いワクチンは「破傷風」だといわれていますが、それでも15%程度ですのでそれほど心配する必要はないでしょう。
また、副作用が現れたとしても、局所的なものであって重症化するようなことはありません。
予防接種で副作用が現れたことがあるという方は、事前に医師に相談してください。
海外渡航前日でも予防接種は受けられる?
予防接種は、受ければすぐに効果を得られるというものではありません。
体の中で感染症に対する抗体が産生されるまでに、数週間という時間が必要です。
長期に渡って抗体の効果を持続させるために複数回の摂取を必要とするワクチンも存在するため、予防接種は海外渡航の1ヶ月前には受けておくことが理想です。
副作用が現れる可能性も考えて、渡航直前の予防接種は避けましょう。
まとめ
- 予防接種は、規定の回数分摂取することで十分な効果が得られる。
- 重篤化するような副作用はみられないが、万が一に備えて日数に余裕を持って摂取する。
- 抗体が産生されるまで数週間かかるため、海外渡航の1ヶ月前には接種しておく。
海外渡航の際には余裕を持って予防接種を受けましょう
海外では、現在の国内ではみられない病気が流行していることがあります。
自身や周囲の人々への感染を防ぐためにも、事前に予防接種を受けて対策を取っておきましょう。
海外渡航に際してトラベルクリニックの受診を希望している方は、「海と空クリニック京都駅前」へご相談ください。
予防接種はもちろん、健康診断や常備薬の処方、感染症医へのご相談も可能です。