STAFF BLOG
スタッフブログ

2020.04.23

心斎橋院

過活動膀胱の新たな治療 膀胱内ボツリヌス毒素注射について~施術方法のご紹介~準備編

みなさん、おはようございます。

女性医療クリニックLUNA心斎橋 院長の二宮典子です。

前回の膀胱ボツリヌス毒素のお話からずいぶんと日にちが経ってしまいましたが、みなさんお元気でしょうか?

コロナ感染拡大予防のための緊急措置のため、生活が大きく変わろうとしています。大変な時期ではありますが、健康第一、身体が資本です。みんなでこの危機を乗り越えていきましょう!

さて、難治性の過活動膀胱に対する膀胱内のボツリヌス毒素注射ですが、4月以降もクリニックでは着々と手術件数が増えてきています。

前回からの続きのお話。

過活動膀胱への膀胱内ボツリヌス毒素注射の方法ついて。

本日は、女性医療クリニックLUNA心斎橋では患者さんがどのようにボツリヌス毒素の注射が行われているのかについてご紹介します。本日は準備編。どのような物品が何のために準備されているのかをご紹介しますね。

また、手術当時の患者さんの詳しい動きについては、こちらに掲載しますので、ご参考にしてください。➡https://ninomiya-lc.jp/director/5215.html

① 物品準備~清潔野の物品

手術中に直接患者さんに接触する可能性のあるものは、滅菌をされている状態で清潔野に準備を行っていきます。道具を出す専用のワゴン台があるので、その上に滅菌された清潔な布をひいて準備を行います。

・消毒物品カテーテル

手術の前には欠かせない消毒です。消毒は粘膜の処置の時にはイソジンを使用するのが一般的ですが、イソジンにアレルギーをもっている患者さんもいらっしゃいますので、手術前の問診で確認を行っています。

イソジンにアレルギーのある人は、ザルコニンという消毒を使用します。

・カテーテル

カテーテルというのは、穴のあいた柔らかい管のことです。これは、手術を開始する前に清潔な状態で患者さんの身体の中にある尿をとるためです。

LUNA心斎橋では14Fr ネラトンカテーテルというものを使用しています。

・潤滑ゼリー

カテーテルでの導尿や、膀胱鏡挿入する際に使用します

・滅菌覆布(穴あき)

消毒をした後に、尿道を中心に穴の部分を置いて、周囲を清潔野(手術操作に適した場所)とします。膀胱鏡や注射用の針以外は体内に入りませんが、内視鏡での操作は長いものが多いので、不潔野のものに触れないために非常に大切です。

・軟性膀胱鏡

これがないと手術できません。お腹を切ることなく、尿道から細いカメラを挿入することで処置を可能にする医療機器です。モニターで膀胱の中を確認しながら、横からでてくる針を操作して手術を行っていきます。

施設によっては硬性鏡といって、曲がらないものを使用することもあります。

・ロック付きシリンジ(10ml)

ボツリヌス毒素を入れるための注射シリンジです。LUNA心斎橋では安全性を考えて、ロック付きのものを使用しています。ロック付きとは、針とシリンジがねじようになっており、くるくると回さないと簡単には針とシリンジが外れないような仕組みになっているものです。

・輸液セット

膀胱鏡のためのものです。膀胱の内部は、最初にカテーテルで尿を抜きます。その後にきれいな手術用の水(生理食塩水)を注入します。その時に使用するための管となります。

・単回使用内視鏡用注射針(BooNee®またはinjeTAK®)

膀胱鏡の長い筒の中が通れるように作られた細い長い、針です。日本では現在2つの製品を使用することができます。それぞれによいところがあります。

↑これがBooNee(ボーニー)の針です。構造がシンプルなのでミスしにくい。

↑これがinjeTAK(インジェタック)の針です。長さを調整できるので、膀胱壁の厚さに合わせて針を変更できます。

②物品準備~不潔野の物品

不潔野(外回り)にも準備を行います。不潔という文字がありますが、決して汚いわけではありません。医学的な『清潔』という言葉に対する『不潔』という言葉となります。

・内視鏡用モニター

膀胱鏡で内部を観察するためのモニター(テレビ)の部分です。光の調節と画像の調節を行ったりします。画像の記録もできます。

・内視鏡用 生理食塩水 500ml

手術の時に患者さんの膀胱の中に注入するための清潔な水です。生理食塩水を使用することが一般的です。

・プロポフォール または ドルミカム

静脈麻酔のための薬です。

LUNA心斎橋では手術中の患者さんの苦痛を最大限になくすために、点滴での麻酔を使用します。(事前のアンケートでこれらの薬にアレルギーのでたことのある人は使用できません。)

・アネキセート

麻酔から醒める時に使用する薬です。

・ボトックス注用 100単位 1バイアル

手術のときに膀胱の中に注射する薬剤です。A型ボツリヌス毒素の性質は、神経と筋肉の伝達を遮断し、筋肉が収縮するのを防ぐことです。この薬剤を膀胱に注射することで、膀胱が強く収縮してしまうのを防いでくれます。

乾燥した粉のような状態になっており、手術までは冷凍庫で保管をしています。

・注射シリンジ (20ml)

薬の入っているバイアル(瓶)から、実際に手術に使用するために、使用できる状態に調整を行います。その時に使用する注射シリンジです。実際に手術で使用するのはおよそ10mlですが、溶かしたりする作業があるので、20mlとすこし大きめのシリンジのほうが使用しやすいと思います。

・生理食塩水 20ml

バイアルから薬剤を溶かすために使用する生理食塩水です。

・注射針(だいたい18G)

調整するときに針を使用します。18~20Gの大きさがやりやすいと思います。

・ペットボトルとハイター(失活用のハイターを入れるため)

手術が終わった後、手術で使用したものを漬けるためです。ボツリヌス毒素はそのまま捨てることは禁止されており、ハイターにつけると失活(その効果を失う)ことがわかっています。

手術で使用した、針・シリンジ・手袋などなど、医療廃棄用のゴミ箱に捨てる前に一度ハイターでつけ置きます。

③ 準備まとめ

膀胱鏡を使用した手術の物品は(おそらく)以上です。

なかなか色々な道具がいりますよね。

もちろん手術室、手術ベッド、モニター、酸素などの施設装備や、清潔操作に必要な、手術用手指洗浄剤、手術前のアルコール、手術着、手袋、マスク、などなど一般的なものは別途必要です。

施術中の写真は、2020年3月に実際に当院で膀胱ボツリヌス毒素注射を受けていただいた患者さんの手術中に記録としてとった写真です。掲載を快く許可してくださいましたSさん、Iさん本当にありがとうございます。

次回は、手術操作中の画像をちょっとお見せします。お楽しみに~。

女性医療クリニックLUNA心斎橋では、日帰りでボツリヌス毒素を使用した尿失禁手術が可能です。

手術は保険で行います。(手術の費用は3割負担の患者さんでおよそ5万円です。)

全ての人に手術ができるわけではありません。手術適応については担当医が判断しますので、気になる方は一度受診をしてみてくださいね。

この記事の監修者
二宮 典子

医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し、院長就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。