当院の骨盤臓器脱に対するTFS手術について
LUNAブログをご覧のみなさま おはようございます。
院長の二宮典子です。
昨日はTFS手術についての発表報告をさせていただいたので
今日は当院でのTFSという手術について少し解説させていただきます。
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TISSUE FIXSATION SYSTEM の頭文字をとって TFSと言います。
骨盤底筋や靭帯の緩みによって『かたち』の変化が生じます。
さらに、『かたち』の変化によって『はたらき』の低下も生じます。
骨盤底筋群や骨盤内の臓器を一つの集合体と捉え
本来の筋肉や臓器の相互の動きを重要視し、
動きを妨げないように『かたち』を整えることで
『はたらき』も回復させるという考えに基づいた修復方法がTFS手術です。
現在 骨盤臓器脱に対する手術方法として(保険収載・自費どちらも)
① 腟からアプローチする方法
② 腹腔からアプローチする方法(腹腔鏡を含む)
A 人工物(メッシュ)を使用し補強するもの
B 人工物を使用せずに補強するもの
この①②×ABの4タイプに分類することができます。
どの治療が最も良いかは、
臓器脱のタイプ・重症度・患者さんの年齢や生活歴・合併症・施設で可能なもの
などで主治医が適した方法を提示します。
1週間程度の入院加療が必要になります。
TFSは自費治療ですが
①×A の手術に属します。
しかし一般的な人工物(メッシュ)に比較して幅の狭い細いテープ状のメッシュを使用し
その固定に特別な技術を用いているため
身体への負担や手術時の損傷が少なく
手術後から大きな痛みに困ることがありません。
ご高齢の方であっても
午前中 1時間程度の手術を行い
お昼ごろに 院内で軽い軽食を食べていただき
夕方に 歩いて帰宅することが可能です。
術後1週間程度で術後の再診察を行います。
それまではご自宅でゆっくりお過ごしいただければ良いです。
そのため、
様々な理由で入院を回避したい患者さんや
呼吸機能や心機能の低下のため全身麻酔をかけることが望ましくないと診断されたことのある患者さんには
とても喜んでいただける手術です。
繰り返しになりますが自費治療になります。手術費用は50万円(税抜)です。
保険治療に比較すると自己負担額は当然高額になりますが
各種の保険手術や麻酔の費用および入院管理費用で
実際にお一人あたりの治療としてかかっている医療費の総額と比較すると安い値段です。
(とはいえ、現実的に患者さんは自己負担額のほうが重要ですので、入院でもよい、入院希望といった患者さんへは 信頼できる施設へ紹介をさせていただいたりもしています)
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こと臓器脱に対する治療について
当院の『TFS手術が最高!最善の策!』と思っているわけではありません。
保険治療で問題なく治療がうけられる人は
その方が良いに決まっています。
しかし、人それぞれ置かれた状況があり
それに個々に対応することもまた医療の進歩につながって行くと思います。
ひとりひとりの患者さんにあった治療を選んでいくのは
主治医とのコミュニケーションが不可欠です。
高齢になれば 身体の不調は増える一方 体力の低下のためにできる治療は少なくなっていきます。
今回の症例のように難しい病態の高齢の患者さんであっても
ご本人の望まれるような日帰りで
手術が可能であるということを
少しでも多くの方が知ってくださると良いなぁと思います。

この記事の監修者
二宮 典子
医師。泌尿器科専門医・指導医、漢方専門医、性機能専門医。
2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINIC開院し、院長就任。
自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイク・女性器治療などにも注力する。